【中国語】ビジネスレベルとは何か?実は重要な3要素を解説

ビジネス中国語

みなさま、こんにちは!PaoChai中国語学習コーチの冨江です。

語学をしていると、そのレベルについて様々な表現があります。

  • 日常会話レベル
  • ぺらぺらレベル
  • ビジネスレベル
  • 通訳レベル
  • ネイティブレベル

などなど。

どれも、明確な定義はなく、使う人が状況に応じて使っているのが現状でしょう。

今日は、中国語学習者が目指すべき地点として、「中国語ビジネスレベル」を定義し、世間的によくいわれる語学力のビジネスレベルの議論に終止符を打ちたいと思います。

中国語力についてどう評価すべきか?

中国語勉強の戦略

そもそも、第二言語である中国語をどれだけ身につけたか?をどのような観点で評価するのがよいのでしょうか?

語学検定に受かった?

発音が良い?

大学で専攻している?

このようなことは、全く本質を捉えていません。

言語が“使える”とは

ここで、言語が“使える”とはどういうことでしょうか。

ジョン・オースティンという哲学者は、言語の本質は、何かを正確に記述するというようなことではなく、「伝達」「依頼」「約束」といった行為の遂行であると提唱しました。 話し手は、発話によって、「情報を伝える」、「何かを依頼する」、「約束する」などの行為をします。言語哲学では、これらの行為は「言葉を用いる行為」という意味で、「言語行為(speech act)」と呼ばれています。

言語を使うことと、何らかの意図を持って行為することは表裏一体です。なんの文脈や意図もない言語使用などは存在しません。

即ち、言語が“使える”とは、言語行為ができること、といえます。言語行為は、上述したもの以外にも、「感謝」「警告」「同意」「謝罪」「命令」「陳述」「質疑」「招待」など無数にあります。これは母語でも第二言語(外国語)でも同じように考えるべきです。

ここで大切なことは、こうした言語行為の「評価」がその行為がうまく遂行できたかどうかによって決まるということです。

例えば、インタビューやプレゼンテーションも、意図が明確な言語行為といえます。

インタビューであれば、「聞き出したい情報を相手から聞き出す」、プレゼンテーションであれば、「伝えたい意見を相手に伝え、さらに質疑応答に対応できる」、というものです。

聞きたいことが聞けたなら、インタビューは成功であり、言語はうまく使えたといえますし、相手に自分の見解を説明して、理解してもらえなかったら、失敗です。

ここで重要なことは、発音がいいとか、文法の誤りがないとか、豊富な語彙を巧みに使うとか、100%聞き取りができているとか、一般的に理解されている評価軸は出てこないということです。もちろん、それらができていることが、インタビューやプレゼンを成功させるためにプラスに働くでしょうが、それは本質ではありません。

自分で中国語力の評価軸を持つ

第二言語(外国語)を学ぶのであれば、言語行為という観点から、自分の語学力を評価するのが最も本質的です。そして、言語を使って何をするかは、各自の自由です。他人にとやかく言われることではありません。

中国語の言語行為といえば、中国に行って現地の人々と交流したり、ビジネスをしたりすることを真っ先に想像しますが、もちろんそれだけではありません。日本にいながら、中国語で本を読んだり、中国のドラマを観賞することも、言語行為であり、それができたら語学はうまくいっていると評価できます。

理想的には、学習の初期段階から具体的な「言語を使った行為」を目標にすることですが、そのような明確な目標がある人は稀でしょう。例えば、中国の文学作品を中国語で読んでみたい、などの強い動機があれば、はじめからそこを目指すに越したことはないです。

語学力と目標は、「鶏と卵の関係」で、レベルが上がってくると、新しい目標が見えてくるという様に相互に影響し合っています。

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PaoChaiオンライン中国語コーチングでは、まずは、勉強の段階から抜け出し、実践として中国語を使って「何かができるレベル」まで最短で到達することを提案しています。そこまでいけば、中国語を使って「何かをしている」内に、新たな自分の目標が見いだせるようになるでしょう。

以上、中国語を学習する上で、中国語力の評価軸を自分で持っておくことの重要性について書きました。このような考え方を土台にした勉強法は、「【超】戦略的な中国語勉強法とは?初心者から上はどこまでも」をご覧ください。

中国語ビジネスレベルとは?

では、上記の評価についての考え方をベースにした場合、

ビジネスレベルとは何か?

その本質は、①日本人として、②中国人とビジネスコミュニケーションができるということです。③関係性構築も重要ですが、それもビジネス的なコミュニケーションとしてまずは考えることが近道です。

顧客の課題を解決する商品やサービスを作り、それを売るというのがビジネスです。ビジネスとは利益を長期的に最大化するという明確な目標がありますから、そのプロセスで必要なコミュニケーションを中国語でできればビジネスレベルと言ってよいのではないでしょうか?

①日本人としてのコミュニケーション

まず、重要なのは日本人としてビジネスに関わるということです。

日本人が中国事業に関わる場合、次のようなパターンがあります。

  1. (日本で)日本の商品・サービスを中国に展開する
  2. (中国で)日本の商品・サービスを中国に展開する
  3. (日本で)中国の商品・サービスを日本に展開する
  4. (中国で)中国の商品・サービスを日本に展開する
  5. (中国で)商品・サービスを日本企業向けに展開する

日本人として中国ビジネスに関わるということは、日本人であることが何かしらの強みになっています。日本語が話せて、日本の市場や文化がよくわかっていて、日本人のネットワークがある、ということです。

これがないまま、中国人と同じ土俵で中国で働くことはハードルが高すぎます。例えば、上海で不動産仲介業者の店舗スタッフで働くというような仕事は、完全にネイティブのような言語力が求められます。このような仕事は、そもそも日本人がやる意義がないでしょう。

日本人の立場で中国ビジネスに関われば、日本人としての強みがあるので、多少の語学力上の問題は許されます。

これをベースに、中国語のビジネスレベルを考えていきましょう。

②中国人とビジネスコミュニケーション

では、このような「日本人として」中国とビジネスに関わる中で、どのようなコミュニケーションがありうるでしょうか?私自身が10年、日本産コンテンツの中国進出(上記の1と2のパターン)に関わってきた経験を基に考えてみたいと思います。

情報を引き出す(インタビュー)

まず、重要なのは、中国の方が持っている情報を聞き出すことです。

市場について、経営方針など現地の中国人しかわからないことを引き出します。

私はゲームやアニメの業界でしたが、現地の業界人や同僚から、その市場の構造、消費者の特徴、流行っているものの特徴、こういった情報を聞き出し、日本の本部や取引先に共有したりしていました。

良し悪しはおいておいて、日本企業の駐在員は、中国で起きていることのレポーティングが主な仕事になるので、インタビューで徹底して質問攻めにして聞き出すことが鍵となります。

※もちろん、本当のことを聞き出すためには、関係性を作り、批判的な視点で問い続ける必要があります。

考え方、方針を伝える(プレゼン)

主要なビジネスコミュニケーション2つ目は、自分の考え方や方針を伝えることです。ミクロなものから本格的なものまで含めて、プレゼンです。

会社の経営方針を社員に伝えるなどの典型的なものから、日々の業務の指示なども、的確に情報を伝えるためのプレゼンと考えることもできます。

私の場合、中国で作るゲームや宣伝物を、日本側に監修してもらうために、その管理体制の説明をしたり、実際の業務でのやり取りはプレゼンといえるでしょう。また、当時2015年前後、日本のアニメが中国では大注目されていたので、アニメ専門学校などで日本のアニメ業界についての説明するイベントなどもやっていました。ここには、プレゼン後の質疑応答も含みます。

ここでいうプレゼンとは、何かを相手に確実に理解してもらう!という必要性から行うものです。

何かの議題について意見交換をする(トピック)

最後は、何かの議題について意見交換をするようなものです。

例えば、私の以前の仕事であれば、中国で人気がでそうな日本のアニメをリストアップしてそれらについて、中国でどういう風に展開できるか?日本側で権利を獲得できるか?などの議論をすることがありました。

前提となる情報を参加者で共有し、それについて質問したり、意見を出し合いフィードバックし合うものです。

これは、目的が上の2つに比べて若干曖昧になりがちなので難しいですが、ある程度の型はあります。

CCレッスンやネットチャイナなどの格安オンライン中国語会話サービスを使って、これらの遂行能力を鍛える方法は、会話トレーニングをご参照ください。

③関係性の構築

最後は、ある種番外編となりますが、いわゆる関係性の構築です。社内外問わず、日々仕事をする人たちと良好な関係を保つには、食事をともにしたりプライベートな話をすることが重要ですね。

こちらは、正直、語学力も重要ですが、本当に相手を理解したいとか、自分を理解してほしいなどという意志にも大きく関わります。また、どうやったら関係が良くなるか?の答えは上記の3つのビジネスコミュニケーションに比べたら明確ではありません。

まずは、真摯に誠実にコミュニケーションしていれば良いでしょう。また、語学力に自信がない場合は、まずは思い切ってプライベートなコミュニケーションも上記の3つの枠に当てはめて明確な目的意識を持ちコミュニケーションすることがおすすめです。例えば、プレゼンとして自分の生い立ちや考え方を伝えたり、インタビューとして相手の趣味嗜好を聞く、などです。

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以上、中国語ビジネスレベルとは、日本人が日本人であることの強みをベースに中国ビジネスの場面で、インタビュー、プレゼン、トピック型の議論を遂行できる能力があることと言えます。

中国語ビジネスレベルの3つの鍵

日本人が中国でビジネスを行う上で必要なコミュニケーションは、本質的には上記の3つです。

これらを十分に遂行できれば、「日本人として中国でビジネスする」上で求められる語学力はクリアしているといえると思います。

ただ、遂行能力は、たくさん単語を知っているとか、発音がいいとか、作文能力が高いとかいういわゆる語学力というよりも、方略的能力、母語言語力、意志のようなより本質的な能力が問われます。

方略的能力

ここで1つ中国語ビジネスレベルを考える上で、1つの重要な概念を紹介したいと思います。

第二言語習得の研究領域で、「方略的能力」という概念があります。

方略的能力とは、簡単に言えば「持っている力を最大限駆使して、どうにか目的を遂行しようとする力」です。

例えば、次のような表現を使って、聞き取れなかったり、思いつかない語彙・表現をカバーします。

1
ゆっくり話していただけますか?
您可以稍微说慢一点吗?
Nín kě yǐ shāo wēi shuō màn yī diǎn ma?
2
もう一度言っていただけますか?
能不能(or麻烦您/请您)再说一遍?
Néng bù néng (má fan nín/qǐng nín) zài shuō yī biàn?
3
チャットに文字で打ってくれますか?
可以(or麻烦您/请您)编辑成文字发给我吗?
Kě yǐ (má fán nín/qǐng nín) biān jí chéng wénzì fā gěi wǒ ma
4
その単語のピンインを打っていただけますか?
那个单词可以(or麻烦您/请您)标注(or打)一下拼音发给我吗?
Nèi gè dān cí kě yǐ (má fán nín/qǐng nín) biāo zhù (dǎ) yī xià pīn yīn fā gěi wǒ ma
5
その言葉を違う表現で言っていただけますか?
这个词还有其他的表达方式吗
Zhè gè cí hái yǒu qí tā de biǎo dá fāng shì ma?
6
もう少し具体的に教えていただけますか?
能麻烦您说得更具体一些吗
Néng má fan nín shuō de gèng jù tǐ yī xiē ma?
7
チャットの文字で送ります。(自分の発音が通じないとき)
我打(or编辑)文字发给您
Wǒ dǎ (biān jí) wén zì fā gěi nín

これらを使うことができれば、卓越した語学力がなくても一定レベルでビジネス上の目的は遂行できます。

母語言語力

中国語を話す場合、一般的には次のようなステップで中国語を発話します。

  1. 日本語で何をいうか決める
  2. 中国語に訳す
  3. 中国語を発する

慣れてきたら、「1」のステップの日本語を介さずに、いきなり中国語で考えることができるでしょう。

中国語学習者は、これらのステップのうち、2と3を中国語学習の中心であると考えがちです。

しかし、より重要なのは、実はステップ1の日本語作文なのです。

ここで作った日本語文が曖昧で何が言いたいのかがはっきりしないと、ステップ2の「翻訳」で問題が生じます。逆に、主語述語、5W1H、特に「誰が、何のために、何をするのか」を明確にして1を「決定」すれば、2はスムーズに進みます

往々にして、何かをうまく伝えられない!と悩んでいるときは、自分が理解していないことやうまく(母語でも)言語化できていないことを、中国語で表現しようとしているときです。

つまり、母語言語力が問われています。

中国語のスピーキングのトレーニングをする場合は、是非、何を言いたいのかを明確にして話をするように意識をしましょう。(参照:「【中国語学習】「訳せない」から話せない」)

意志

上述の方略的能力を駆使したコミュニケーションは、相手(中国語話者)に負荷がかかります。

あまりにたどたどしい中国語力では、目的が遂行できないばかりか、嫌われてしまうかもしれません。

それゆえ、こちらの熱意や真摯な態度が求められます。

嫌な顔をされても、しつこく試行錯誤をする必要があります。

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以上、ビジネスで必要な行為を遂行するためには、表面的な中国語力だけではなく、このような方略的能力、母語言語力、意志などより本質的な能力が問われます。

中国語ビジネスレベルとは上述のようなビジネスにおけるコミュニケーションの遂行ですから、どんな中国語も全て1回で聞き取れるだとか、言いたいことも最適な表現で1発で伝える、とうようなレベルは全くありません。

語学検定で測れるような一定の中国語力と、強いコミュニケーションの意志・目的がある場合、どうにかそれを達成できるレベルをビジネスレベルと定義します。このような意味であれば、ゼロから半年程度でも到達可能でしょう。

もちろん、この意味でビジネスレベルに到達したら、よりスムーズにコミュニケーション目的を遂行できるように使える語彙表現を増やしていくという営みは、長く、自分が満足するまで永遠に続きます。

どうすれば中国語ビジネスレベルになれるか

PaoChai中国語では、上述のように、言語行為として何ができるか?というところを最終的な評価軸にしています。それは、個人によってバラバラです。自分で判断していただきます。

そのためには、いち早くプレゼン、インタビュー、トピック型の会話トレーニングを実践していく必要があります。実践の中で自分がやりたいことを明確にし、そこできないことをできるようにしていくのが最も効率的です。(「実践能力」と定義)

その前段階として、日常的な、そして、ご自身で興味のある領域の語彙を数千語身につけておく必要があります。それも、単に読んでわかるレベルではなく、聞いてすぐわかり、話したいときに正確な発音で発音できるようなレベルでの語彙・表現力です。(「コア能力」と定義)

そして、その前段階として、最初に発音や基礎文法の土台をしっかりと固める必要があります。(「基礎能力」と定義)

このように、言語行為をを起点にすることで、最短最速の学習法が決まります。

(資質や学習環境などにもよるので一概には言えませんが)1つの指標を示すためにあえて言うと、最低600時間程度を半年〜1年で集中的に取れれば、中国語ゼロの初心者がこのようなレベルに到達することは可能です。実際にゼロから何人も支援してきた実績があります。

もちろん、上述の通り、どうしてもビジネスで遂行したいことがあるという強い意志が必要なことはお分かりいただけたと思います。

PaoChaiオンライン中国語コーチングでは、このような本質的な考えにより中国語学習サポートを行っております。

ゼロからの初心者から既に中国で仕事・生活をしている学習経験者まで、無料カウンセリングでお気軽にご相談ください。毎日開催しております。

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冨江コーチ

東京都出身。早稲田大学国際教養学部卒業。中国ビジネス10年(日本のゲーム、アニメ等コンテンツの中国展開に従事)、中国在住5年(上海、南京)の経験を活かし、実践的な中国語学習のサポートをいたします。2016年から語学の道に転身。大学院で第二言語習得、言語、哲学の研究を行いながら、中国語と日本語を教える。趣味は、中国各地の麺類を食べ歩くこと。新HSK6級。復旦大学短期留学(2007年)。The Australian National University修士号、早稲田大学国際コミュニケーション研究科修士課程修了。

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