中国語【作文の書き方】そもそもの目的と具体的な3つのやり方とは?

中国語会話勉強法・学習メソッド

みなさん、こんにちは!PaoChai中国語の冨江です。

日常生活やビジネスの現場など、様々な場面で中国語会話ができるようになるためには、自分の考えを伝えるために書いたり話したりするトレーニングが必須です。そんなときに、作文は重要な勉強法となります。

「中国語の作文ってどんな目的があるのだろう?どのように作文すればいいのだろう?」とお考えの学習者のみなさんへ。

今回は、中国語学習全体の中における作文のそもそも目的を確認し、3つの中国語作文のトレーニング方法(「瞬間中作文」「和文中訳」と「中借文」)を紹介し、メリット、デメリットを解説します。

中国語作文でアドリブ対応力を

中国語の作文は、話せるようになるための勉強法として効果的にです。中国語を話す場合、次の3ステップが必要になります。

  1. 概念化:日本語で言うことを決める
  2. 中国語化:1で日本語で決めた文を(単語と文法を使って)中国語にする
  3. 発話:音声として発話す(中国語発音の勉強法ははこちら)

話す場合、「2」の中国語化の能力が重要視されがちですが、「1」の概念化も同様に大切なステップです。誰が何をしたのか等、何をいいたいか明確でない概念を中国語にすることはできません。

この「概念化」と「中国語化」を鍛えることができるのが、自分で何を書くかを決めて取り組む「自由作文」トレーニングです。

※もちろん、最終的には「1」の概念化を無意識に完了し、いきなり「2」「3」の中国語化、発話を同時的にできるように自動化するのが理想です。

一般的な言語学習の方法として、単語や短文を沢山そのまま暗記する方法があります。しかし、暗記した例文をそのままの形で実際の状況で使用する機会はほぼないでしょう。「我没有她那么忙」という例文を覚えたとしても、実際は、「她没有山田那么高」のように、名詞や形容詞など単語を入れ替えて使うことができる必要があります。

実践では何を言うか、決められた台本はありません。全てがアドリブとなるため、自由作文能力が必要となるのです。これは中国語の実践能力でも本質的な能力の1つと言えるでしょう。

(より包括的な中国語の戦略的な勉強法はこちらをご参照ください)

不自然な表現問題(中国語作文の注意点)

中国語で自由な内容を作文するときは、不自然な中国語になってしまう可能性があります。これを繰り返していれば、間違った中国語が身についてしまうので要注意です。

これを「不自然な表現問題」と呼んでおきましょう。これは主に、次のような理由によります。

①日本語の文を、単純に単語ごとに置き換えている

例えば、「泣き止む」というのを日本語の発想で変換すると、<停哭了>のような中国語になりますが、そのような表現は自然ではありません。(<不哭了>が自然)

また、他の例でいうと、中国語で<希望>を使う場合、日本語と異なり名詞を目的語に取れません。日本語の発想で、<希望你的帮助>というと間違いになります。(正しくは<希望你帮助我>という必要があります。)

これらはどれも、日本語の単語を中国語に置き換えれば中国語翻訳ができる、という誤解に基づいています。

②そもそも中国語でそのような言い方をしない

「生きがい」のような日本文化独特の表現はそれに直接に該当するものはありません(英語でもikigaiとなっている)。ウェブで「生きがい」の中国語を検索すると、<生活的价值>などいくつかの訳が出てきますが、本質が捉えられていないので正確には伝わりません。

逆に中国語の概念も日本語にないことがあります。中国語では母親の一番親しい女友達を「干妈(gānmā )」と呼びますが、同じような意味でしっくりくる日本語はありません。

作文をするときは、できるだけ日中両言語で、誤解を生まなそうな語彙を使って表現するべきです。または、一単語で置き換えようとせずに、文に展開して説明するのもよいでしょう。(先の例で言えば、「母親の一番親しい女友達」と言えばわかります)

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文法ルールを機械的に暗記し、運用できる単語数も少なく、さらに日本語的な発想で作文に取り組むと上記のような問題が生じやすくなります。自由作文は、一定レベルに到達してから始めるのがよいでしょう。もちろん、中国語で自己表現することはやる気にも繋がりますので、学習の初期段階から、添削を前提にやってみるのもいいと思います。(ただし、添削について後述する注意点を参照)

中国語文法の勉強法についてはこちらを参考にしてください)

中国語作文トレーニング1:瞬間中作文

「瞬間中作文」のトレーニングは、日本語文とそれに対応する中国語の文が書かれている教材を使い、母国語の文(日本語文)だけを見て瞬時に学習言語の文(中国語文)を作って発音するというトレーニングです。英語の通訳学校などで口頭英作文や、瞬間英作文などと呼ばれている口語の定番の学習法です。(より詳しい説明は瞬間中作文トレーニングをご覧ください。)

メリット

瞬間中作文のメリットは、学習をスムーズに進められることと、学習初期段階に特に効果的であるということです。瞬間中作文は、下記のような専用の教材が出ているため、たくさんの例文を対象としてスムーズに学習に取り組むことができます。(自由作文のように自分で何を書くか決める必要がない)また、学習を始めたばかりの場合、自由作文をするほどの文法運用力や語彙数がないため、瞬間中作文で短文を次々と覚えていくことが効率的です。

デメリット

瞬間中作文のデメリットは、例文丸暗記になってしまうリスクがあることと、何を書くかが決められているため定着しにくい、ということでしょう。

瞬間中作文は、例文を1つの単位として丸暗記してはいけません。日本語を見て、文法と単語の知識を動員して、文を組み立てることで文法の運用力と実践的な語彙力を高めます。しかし、そこを意識して取り組むのはなかなか難しいのも現実です。丸暗記にならないよう注意しながらやっていきましょう。

また、自由作文と違い、上記の教材のように何百とまとめられた例文を覚えていき、トレーニングしていきます。自分の文脈で自己表現として行うものではないので、あまり感情を込めたり、状況をありありとイメージしながら学習することができません。それゆえ、記憶への定着がそこまで強くありません。

中国語作文トレーニング2:和文中訳(自由作文)

先の説明で「アドリブ対応力」と呼びましたが、和文中訳(自由作文)はまさにそのトレーニングとなります。自分でまず言いたいことを決める、というステップがあるので、それはつまり日本語で作文をし、それを中国語に翻訳する作業になります。以下、和文中訳のメリデメを見ていきましょう。

メリット

和文中訳のメリットは、語彙の幅を効率的に広げることができることです。自分が使える中国語の語彙を基に作文をすると、その時点での語彙レベルに制限されてしまいます。日本語では使える表現を、中国語にするときは簡単な言い回しで言い直したりすることも重要ですが、難しい表現でも自分の「意」をできるだけ的確に表現することも大切です。まずは、制限のない日本語で何を言いたいか考えると、このような制限を受けません。

自分で何を言う(書く)か内容を決めるので、作文の中身は自分が日常的に使う内容になります。ある状況を想定した実際の言語行為なので、文脈のない教科書の例文を暗記するよりも記憶に定着しやすいでしょう。普段、自分が使う表現を効率的に身につけることができます。

デメリット

和文中訳のデメリットは、中国語を作文するのに、なにごともまず日本語で考えてしまうことです。「日本語で発想していては中国語は身につかない、いきなり中国語で考えて、中国語で作文するべきだ」という考えもあります。しかし、上記のメリットがあるので、デメリットを把握した上で一定レベルまではこの方法を推奨しています。

また、日本語から発想して、それを辞書などを頼りに中国語にすると、不自然な表現になってしまう可能性があります。和文中訳では、先の「不自然な表現問題」が出やすいです。

おすすめのトレーニング方法

1つのテーマについて、まず10文程度で日本語を作文し、それを過不足なく正確に中国語に翻訳します。

3つの注意点

  1. “使える”語彙や表現の幅を広げることが目的なので、辞書を引いて積極的に書きたいことを書きます。日本語をまず書くときは、主語述語が明確で無駄のない文にしましょう。辞書引く際は、例文を必ずみて、その用法を真似て使用しましょう。単純に日本語を中国語に置き換えるだけでは不自然な表現になりがちです。
  2. 日本語から中国語への翻訳は、基本的に単語と文法ルールを使って変換してください。例文丸暗記や自動翻訳などは使ってはいけません。
  3. 日本語から中国語への翻訳は、日本語の意味を過不足なく忠実に翻訳してください。そうでないと、何ができていないのか、どこを間違えたのか確認できません。

書くネタがなくて困りましたら、Good&New(グッドアンドニュー)という題材がおすすめです。

中国語作文トレーニング3:中借文

英語の作文でよく聞く英借文。この中国語版が中借文です。

中借文とは、中国語母語話者が自然だと思う正しい中国語を借りて、自分の言いたいことを言ってみる(書いてみる)という勉強法です。文をそのまま借りるのではなく、自分の文脈に合わせて一部を借ります。

やり方はシンプルで、これは使えそうだと思った表現(フレーズ、例文)をノートやパソコンなどにストックしておきます。それを、それを自分で名詞や形容詞など単語を入れ替えるなど、自分の文脈で使ってみるということです。

メリット:不自然な表現問題を回避できる

中借文の良いところは、不自然な表現を作文してしまう問題を回避できることです。基本的には、実際に使われている自然な表現をベースに、文脈に合わせて多少の変化をさせて使うので、「そんな言い方はしない」といような文を作ることはほとんどないでしょう。(どれくらい変化させるかにもよりますが)

また、和文中訳のように、辞書を調べたり、頭を捻って中国語を創造する必要がないので比較的に負荷が少ないこともメリットでしょう。

デメリット:自分の状況に合う借文があるとは限らない

自分が言いたいことを起点に借文することは難しいです。使えそうな中国語表現が起点になるため、そこをベースに自分がいいそうなことを想像して変化させて作文することになります。和文中訳のように、自由な概念(日本語)が起点になっていないので、記憶への定着は弱まります。

18ヶ国語を習得したシュリーマンもすすめる作文

トロヤの遺跡やミケネの遺跡を発見したシュリーマンは、18ヶ国語をマスターして古代研究に役立てました。彼の自伝『古代への情熱』において彼の外国語(第二言語)学習法について書かれています。

シュリーマンの外国語学習法とは以下の方法です。

  1. 非常に多く音読する
  2. 決して翻訳しない
  3. 毎日1時間学習する
  4. 常に興味ある対象について作文し、教師に添削してもらう
  5. 添削された作文を暗誦する

この中でも作文に注目したいと思います。

シュリーマンはなぜ作文をすすめるのでしょうか?

シュリーマンがいう「興味のある対象について作文する」というのは、要するに、普段の生活で自分が使いそうな表現を、自ら考えて捻出してみる、というところにポイントがあるのではないでしょうか?

自分が言いそうなこと、話してみたいことであれば、やる気が出ます。そういう表現や単語は、記憶に定着しやすいのはもちろん、実際に使う可能性が高く、さらに深く身についていくでしょう。

また、教師に添削してもらうことの重要性もよくわかります。上述の通り、学習者がまだ身につけていない語彙や表現を使おうとするとどうしても不自然な表現になりがちです。そういったところを添削してもらえば、間違いが記憶に残りますし、自然な表現を知ることができます。

さらに、暗唱するくらい徹底して音読など繰り返します。正しい表現を鵜呑みにすれば、使える表現がどんどん増えます。繰り返しになりますが、元々自分が興味のあることについての作文なので、使う機会もあり、どんどん定着していくでしょう。

ネイティブでも作文添削は難しい!2つの対策

また、作文をする場合は(特に和文中訳)、不自然な表現問題を回避すべく必ず添削を受けるべきです。そこで注意点は、ネイティブでも作文を添削するのは難しいということです。

なぜなら、作文において何を「正解」「不正解」にするかの評価軸が難しいからです。意味に踏み込めば、「説明が足りない」とか「インパクトがない」など様々な意見が出ますし、語彙の使い方や文法的な正誤も、厳密に指摘、フィードバックするのはなかなか難しいものがあります。また、状況のない文字だけの作文は、そもそも作文の書き手が何を書こうとしているかわかりにくいことも添削が難しい理由です。

対策①:和文中訳の日本語とともに添削を受ける

1つの解決策としては、日本語がわかる中国語ネイティブに、和文中訳の日本語とともに添削を受けるとよいでしょう。そもそも「何を書きたいか」という正解がないと的確な添削ができません。(強引に意図していない内容に添削されてしまうこともあります)

もちろん、これも万能ではありません。日本語と中国語は異なる言語です。原理的に、日本語をそのまま中国語に置き換えることはできません。言語はその社会、文化、風土の中で時間をかけて成り立っています。日本語と中国語では必ずしもぴったりと対応する概念や表現があるとは限りませんし、厳密なニュアンスまで同じにすることは原理的にできません。

対策②:状況と前提と明確に共有する

また、説明が十分か否かの評価をしやすくするために、作文の状況と前提を明確にすることも重要です。

例えば、下記の3点を明示するだけでも添削はしやすくなります。

  • 誰が?
  • 誰に対して?
  • どういう状況で?

私(という学習者)が、先生に対して、WeChatを通じて今日の出来事についての日記を送る、というような場面が具体的にわかれば、説明の過不足などアドバイスがしやすくなります。

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上述の注意事項を守って作文するか、作文添削に理解のある方にしっかり添削してもらい自然な表現を身につけましょう。

中国語作文は楽しい!

以上、中国語作文について、そもそも学習の全体像における位置づけ、さらには具体的な3つのトレーニング方法(「瞬間中作文」「和文中訳」と「中借文」)を紹介し、最後に添削の注意点・対策を述べました。

作文の意義については、上述の通りですが、そういった学習効果以外に、単純に作文は楽しい!というの忘れてはいけません。

語学の醍醐味は、自分で自分が言いたいことを表現することです。決められた文法ルールや単語を使って表現するというのは現実ではありえませんし、つまらないです。

是非みなさんも、どんどん自分で表現したいことを中国語で表現してみましょう!

PaoChaiオンライン中国語コーチングでは、長期的な視点で中国語力を定義し、コーチングサポートの中で作文添削も提供しています。適切なタイミングで適切な量のトレーニングをすることが上達の近道です。ご興味のある方は是非、無料カウンセリングでご相談ください。

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冨江コーチ

東京都出身。早稲田大学国際教養学部卒業。中国ビジネス10年(日本のゲーム、アニメ等コンテンツの中国展開に従事)、中国在住5年(上海、南京)の経験を活かし、実践的な中国語学習のサポートをいたします。2016年から語学の道に転身。大学院で第二言語習得、言語、哲学の研究を行いながら、中国語と日本語を教える。趣味は、中国各地の麺類を食べ歩くこと。新HSK6級。復旦大学短期留学(2007年)。The Australian National University修士号、早稲田大学国際コミュニケーション研究科修士課程修了。

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