【中国語】大人になってから「ネイティブレベル」の「発音」を身につけられるか?【ネイティブレベルの定義と効果的な学習プロセス】

中国語のような美しい音を持つ外国語であれば、ネイティブレベルの「発音」を身につけたい、と思う学習者は多いでしょう。

一方で、帰国子女のように幼少期に自然に身につけたのでもなく、大人になってからネイティブと同じような発音を身につけることは極めて難しいです。第二言語習得の科学的な研究分野でも、「臨界期説」という言語能力を獲得することが可能な年齢期間が存在し、大人になってからはネイティブのような言語能力(特に発音)を習得することは難しいと理解されています。

しかし、大人になってからネイティブレベルの発音を身につけた学習者も実際に存在しています。今日は、「ネイティブレベルの発音を身につけた日本語学習者の発音習得のプロセス」についての研究成果を紹介したいと思います。

※非日本語母語話者の日本語学習者の研究です。

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大人になってからでもネイティブレベルの発音は習得できる

早稲田大学の戸田貴子教授は臨界期とネイティブレベルの発音について詳細に調査を設計し、その結果から「臨界期を過ぎて学習を開始した場合でも学習次第でネイティブレベルの発音習得は可能である」と結論しています。こちらの研究は、日本語学習中の中国人や韓国人などを対象にした調査ですが、中国語や英語を学ぶ日本人学習者にとっても示唆があります。 

外国語学習者にとって希望があると言えます。いわゆる12〜15歳と言われる言語習得の「臨界期」を過ぎてからでも、努力しだいでネイティブ並の日本語の発音を習得できる可能性が開けているのです。 

それでは以下、研究成果とネイティブレベルの定義とどういう学習プロセスがネイティブレベルの発音習得に有効なのかを見ていきましょう。

ネイティブレベルとは何か?具体的な定義

戸田教授の研究では「ネイティブレベル」を次のように定義しています。

    ※日本語学習者(NNS)
    ※日本語母語話者(NS)

    評価は「発音が上手だ」に対して

    ①全く同意しない
    ②同意しない
    ③やや同意しない
    ④やや同意する
    ⑤同意する
    ⑥強く同意する

    という 6 段階スケールで行うことにした。

    「母語話者並みの発音だ」「正しい発音だ」という基準に対する評価では、調査結果が変わることもあり得るが、NSの発音の実態は方言差・性差・年代差等を考慮すると実に多様であり、同じ話者でも異なる場面や相手によっては発音が変化することが予想される(戸田2006)。

    したがって、規範とすべき「母語話者並みの発音」や「正しい発音」の定義付けは事実上不可能であり、評価者間で異なる基準による評価が行われることになってしまう。

    そこで、NNSだけではなくNS(16 名)や日本人帰国生(11 名)を含む 100 名の音声ファイルを同じ土俵に乗せた上でランダムに並べ替えたCDを評価者に聞かせることにした。以上の理由により、本研究では「発音が上手だ」に対する同意度を評価の基準とし、NS(16 名)の平均から 2 標準偏差以内のばらつきを示しているものに対して「ネイティブレベル」とラベル付をすることにした。

つまり、日本語ネイティブの評価者に、「ネイティブレベルを目指す学習者の音声」を、「本当の日本語ネイティブの音声」と混ぜてランダムにきかせて、上記6段階のスケールで評価させます。

そして、学習者による音声の評価が、評価者による「本当の日本語ネイティブの音声」に対する評価と同等レベルであれば「ネイティブレベル」と定義しています。

ネイティブレベルの発音を身につけた学習者の発音学習プロセス 

調査の結果、このような「ネイティブレベル」の定義に該当する2名がいました。

(日本語学習開始が18歳と19歳の二名の中国語母語話者がネイティブレベルの発音を習得していたようです。今回の研究調査では、英語母語話者についてはこの結論を導けず、中国語母語話者と韓国語母語話者に限定された結論となっています。)

さらに戸田教授は、実際にネイティブレベルの発音を身につけた「発音の達人」に対してフォローアップ・インタビューを行い、彼らの学習に以下のような特徴を見出しています。

    1)音声的側面に焦点を当て、メタ言語として日本語音韻を学習していること
    2)発音に対する意識化がなされていること
    3)豊富なリソース(例:テレビ、ラジオ、ドラマ)を活用していること
    4)音声化した発音学習方法(例:シャドーイング、音読)を実践し、継続していること
    5)学習初期にインプット洪水を経験していること
    6)音声に関心があり、自ら高い到達目標を設定していることである。

つまり、これら6つを再現すればネイティブレベルの発音を身につけられる可能性があります。もちろん、これらは研究の対象者(日本語学習中の中国人と韓国人)に共通していただけで他の人(中国語学習中の日本人)にも有効と結論することはできません。

しかし、臨界期を過ぎて学習を開始しても学習者はネイティブ並の発音を習得できる可能性があり、さらにそれを実現した学習者の共通項目も明らかになっていることは外国語学習者にとって大きな希望でしょう。何をすればネイティブレベルの発音を身につけられるかの見通しがつくからです。

ネイティブレベルまでいかなくとも、これら6つの項目は発音学習に大変示唆があるものです。以下の論文で詳細が確認できますので、是非みなさまも参考にしてみてください。

■参考

戸田貴子「臨界期を過ぎて学習を開始した日本語学習者にネイティブレベルの発音習得は可能か」、第二言語における発音習得プロセスの実証的研究、2006年。
戸田貴子「「発音の達人」とはどのような学習者か-フォローアップ・インタビューからわかること」、第二言語における発音習得プロセスの実証的研究、2006年