【中国語】买回来で“回来”するのは買った人か?買った物か?方向補語と目的語の関係

語法・表現・フレーズ

爸爸出差买一些礼物了。(or爸爸出差买回来了一些礼物。)

(父は出張に行き、いくつかお土産を買ってきました。)

みなさん、こちらの文について何か疑問を持ちませんか?

(この中国語は、瞬間中作文の教材としてお馴染みの『口を鍛える中国語作文【初級編】』75課の3つ目の文です。学習者から何か構造がよくわからないという質問があったので、ここにまとめました)

买回来で“回来”するのは買った人か?買った物か?

この文、何か違和感があるのですが、それを言語化するのが難しい…

よくよく考えると、

疑問の対象は動詞「买(買う)」とその目的語である「一些礼物(いくつかのお土産)」の間に「回(戻る)」があることでしょう。

もう少し詰めると、

买回来で“回来”するのは買った人か?買った物か?

という点なのではないでしょうか。

普通に考えると、「買ってから、お土産を持って帰ってくる」わけですから、「爸爸出差买了一些礼物, 然后回来了。」のように表現するのが無難な気がします。

以下、考えていきたいと思います。

方向補語は目的語にかかるのか?

この疑問を考えるにはどうすればいいでしょうか?

ある論文(※)がこの問題に1つの道筋を提示してくれました。

ポイントは、他動詞と目的語、方向補語の関係です。

例えば、以下の文で「出来」は何が「出来」するのでしょうか?

例文A: 他从口袋里拿一张纸条。(彼はポケットから1枚のメモを取り出した)

動作主である「他(彼)」ではなく、「一枚のメモ」です。

論文の引用によると、「他動詞につく方向補語は受け手(目的語)について言われる」というのが基本ルールのようです。この観点は考えていなかったです…

このルールがあるからこそ、普段例文Aのような方向補語を見慣れているのかもしれません。なので、方向補語は目的語についてかかっているという先入観があったのでしょう。

その先入観で「爸爸买回来了一些礼物」を見ると、「回来」するのは受け手(目的語)ではなく、動作主である「爸爸(お父さん)」に見えることに違和感を持ったと思われます。

こうなると、目的語がある場合、方向補語は主語にかかるのか?目的語にかかるのか?文脈や動詞に依存して変わるのか?と頭を悩ませます。

本論文では、結論として基本ルールである「他動詞につく方向補語は受け手(目的語)について言われる」は変えず、「動作主が受け手(目的語)に関与し「回来」という方向を与えている」というような解釈をしています。つまり、受け手(目的語)が「回来」させられているという意味では、方向補語は受け手(目的語)にかかっていると言えるということです。

学習者としては、どうするべきでしょうか?

まずは、基本ルールである「他動詞につく方向補語は受け手(目的語)について言われる」を理解しておき、例外的に動作主の関与が強く働くものがあると心得ておけばよいでしょう。

※参考:荒川 清秀「”買回来”と”寄回来”–中国語における他動詞+方向補語の構造」

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HARU

兵庫県出身。同志社大学卒業。卒業後、食品メーカーで商品開発や中国事業に携わる。多くのプロジェクトで通訳・翻訳として貢献。自身の躓いた語学経験を多くの学習者に還元したいという想いでPaoChaiで中国語学習コーチとなる。新HSK6級。通訳案内士。好きな言葉は「為せば成る為さねば成らぬ何事も」。趣味は自転車で街を探索すること。温泉めぐり。ランニング。

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