【中国語】2種類の“了”:アスペクト助詞と語気助詞

語法・表現・フレーズ

理解が難しい中国語の“了”ですが、大きく分けて2種類あります。

一つは動詞の後ろに置かれて「動作の完了」を示す“了1”(アスペクト助詞)

もう一つは文末に置かれ「変化・新しい状況の到来」を示す“了2”(語気助詞)です。

実際の会話や文章では両方の「了」が同時に出てくることもあり、ニュアンスが複雑に絡み合うことがあります。ここでは、以下の順番で詳しく説明します。

1. “了1”:動詞の後ろに置いて【完了】を示すアスペクト(動態)助詞

※アスペクト助詞は、教科書により、“了1”や“動態助詞”と呼ばれることもあります。

用法

“了1”は動作や行為が「完了した」「終わった」ということを示します。日本語の「〜した」「〜し終えた」に相当するイメージです。基本的には動詞(または動詞+目的語)の直後に置かれます。

※「完了」の意味であり、「過去」ではないので注意です。場合によっては未来のことを意味することもあります。

例文

  • 我吃午饭。
    • ピンイン: Wǒ chī le wǔfàn.
    • 日本語訳: 私は昼ごはんを食べました。
    • 解説: 「吃了」で“すでに昼ごはんを食べ終えた”という動作の完了を表しています。
  • 他看那本书。
    • ピンイン: Tā kàn le nà běn shū.
    • 日本語訳: 彼はあの本を読みました。
    • 解説: 「看了」で“読み終えた”という動作の完了を表しています。

2. “了2”:文末に置かれ【変化・状況の変化】を示す語気助詞

用法

了2”は文末に置かれこれまでとは異なる「新しい状態の到来」や「変化」を表すときに使われます。すなわち「〜になった」「〜に変わった」といったニュアンスです。また、会話の中で情報を付け加えるときにも用いられます。必ずしも動作の完了を強調しているわけではなく、「状況が変化した」ことに重きを置きます。

例文

我吃饭

  • ピンイン: Wǒ chīfàn le.
  • 日本語訳: 私はご飯を食べますよ(もう食べるつもりです)/ご飯を食べるようになりました(状況変化)。
  • 解説: これは「これからご飯を食べる状況に変わる」あるいは「今から食べるよ」というニュアンスです。文脈によっては「さあ、食べることにした」「これから食べるんだ」という“変化”に注目していることが多いです。

我不喝酒

  • ピンイン: Wǒ bù hējiǔ le.
  • 日本語訳: 私はお酒を飲まなくなりました。
  • 解説: 「これまでは飲んでいたけれど、新たな状況として飲まなくなった」という状態の変化を表しています。

天气冷

  • ピンイン: Tiānqì lěng le.
  • 日本語訳: 寒くなりました。
  • 解説: 「天気」が「寒くなった」という状態の変化を強調しています。

3. “了1”と“了2”が同時に現れる場合

ときには、動作の完了(了1)を表す“了”と、文末で変化を表す“了2”が同時に現れることがあります。その場合は「動作が完了し、かつ新たな状況になった」ことを強調します。

他们去(了)北京 

  • ピンイン: Tāmen qù Běijīng le.
  • 日本語訳: 彼らは北京へ行きました。
  • 解説: 最初の“了”は「行った」という完了を表し、文末の“了”は「行った」という行為が終わった今の状態、と変化・新しい状況を強調しています。この場合、前の“了1”は省略可能です。

我看(了)那本书

  • ピンイン: Wǒ kàn le nà běn shū le.
  • 日本語訳: 私はその本を読み終わりました(もう読みましたよ)。
  • 解説: 最初の“了”は「見た(読み終えた)」という完了を表し、文末の“了”は「あの本を読み終えた今の状態です」と変化・新しい状況を強調しています。この場合、前の“了1”は省略可能です。

“他去北京”と“他去北京”の違いは?

“他去北京

語気助詞を使った “他去北京了”の場合、1つの新しい情報を述べるような意味になります。

ある人が「“A最近怎么样?”Aでさんは最近どうしてる?」とAさんの状況全般について質問した答えとして、“A去北京了”(Aは北京へ行った)と言うようなときに使います。

“他去北京”

“他去了北京”の場合、話の中で既に「Aさんは最近どこかに行った」ということは知っていますが、「どこに行ったか」は知らない場合、“A去了哪里?”(Aはどこに行ったの?)の回答として、“他去了北京”(彼は北京に行った)と使えます。どこかへ行ったことは既知で、どこに行ったかはわからないときの答えとして使います。

4. 否定形と疑問形の注意点

否定形

  • 「動作の完了」を否定するときは通常「没(有) + 動詞」の形を使い、“了1”は不要になるのが基本です。たとえば「(まだ)食べていない」なら 我没(有)吃饭 です。
  • しかし、「不 + 動詞 + 了」の形は、“これ以上その動作をしないことに決めた”という「状況の変化」の意味になるので、“了2”のニュアンスが強いです。たとえば「我不喝酒」は「今後はお酒を飲まないことにした」という変化を強調します。

疑問形

  • 中国語で疑問を作るときは「了吗?」をつける場合が多いですが、その“了”は完了の“了1”であることが多いです。(例:你吃吗? / あなたはご飯を食べましたか?)
  • 状況の変化を問うときは、「了2」のニュアンスで文末に“了吗?”が来ることもありますが、具体的には文脈次第となります。

5. まとめ

  • 了1(アスペクト助詞)※動態助詞ともいう
    • 動詞の直後に置かれる
    • 動作の完了や実現を示す
    • 「〜した」「〜し終えた」のニュアンス
  • 了2(語気助詞) ※文末助詞ともいう
    • 文末に置かれる
    • 状況・状態の変化を示す
    • 「〜になった」「(今から)〜することになった」のニュアンス
  • 両方が同時に現れる場合
    • 動詞+了1+(目的語)+了2
    • 「動作が完了し、かつ新しい状況になった」ことを強調

中国語学習者にとって、この2種類の“了”の使い分けは最初は少し難しく感じるかもしれません。しかし、動詞の完了なのか、文末の状況変化なのかを意識して学習していくと徐々に慣れてきます。

※今回紹介したもの以外にも“了”には沢山の意味があります。今回は中心的なものだけを取り上げています。

文脈や話し手の意図によってもニュアンスが変わるため、会話やテキストで多くの例に触れて感覚をつかむことが大切です。

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tad

千葉県出身、東京育ち。貿易関係の会社で10数年ほど勤務後、5年の中華圏駐在経験を活かして独立。現在は、翻訳や通訳などを中心にフリーで活動中。趣味はゴルフ。好きな食べ物は麻辣香锅。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。HSK6級。

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