【中国語】“你知道他在哪儿呢?”は何故NG?~語気助詞“吗”と“呢”の特徴を整理する~

語法・表現・フレーズ

 こんにちは!中国語漫画/字幕翻訳者のもりゆりえです。今回は、【「彼がどこに行ったか知ってる?」と聞きたいとき“*你知道他在哪儿?”が何故NGなのか】を、語気助詞“”と“”の特徴を整理しながら解説していきたいと思います。

中国語の疑問文4種類

 まずは中国語の疑問文を分類しながら、語気助詞“”と“”の特徴を整理しましょう。中国語の疑問文は、以下の4タイプに分類できます。語気助詞“”と“”が、どのタイプの疑問文に用いられているかを意識しながらご覧ください。

➀是非问:諾否(だくひ)疑問文

【是非问】とは、日本語で「諾否(だくひ)疑問文」あるいは「当否(とうひ)疑問文」と呼ばれるもので「是/不是」あるいは「对/不对」で返答する特徴から、この名がつけられたと考えられます。英語の「Yes/No Questions」に相当します。

例)

(1)A:今天是星期三?[日本語訳:今日は水曜日ですか?]

    B:不,今天星期四。[日本語訳:いいえ、木曜日です。]

(2)A:你是美国人?(你是美国人=你是美国人?) [日本語訳:あなたはアメリカ人ですか?]

          B:是的。[日本語訳:はい]

中国語の例文は、『外国人学汉语难点释疑』P88より

 なお「是非问」は、文末に語気助詞“吗”を伴う特徴から、別名「吗疑問文」とも呼ばれます(参考:中国語 文法 “吗”疑問文:解説)。

②特指问:疑問詞疑問文

【特指问】は日本語で「疑問詞疑問文」と呼ばれ、その名のとおり「谁/什么/怎么样/哪儿/多少/几」などの疑問詞を用いる疑問文です(ちなみに“特指”は「特に~を指す」という意味です)。英語の「Wh-Questions」に相当します。

例)

(5)A:你是哪国人?[日本語訳:あなたは何人ですか?]

    B:我是美国人。[日本語訳:アメリカ人です。]

(6)A:你说你不想去北京,那你打算去哪儿

    [日本語訳:北京に行きたくないなら、どこに行くのですか?]

    B:我去广州。[日本語訳:広州です。]

中国語の例文は、『外国人学汉语难点释疑』P89より

③反复问:反復疑問文

【反复问】は日本語で「反復疑問文」と呼ばれ、「動詞+不/没+動詞」、「形容詞+不/没+形容詞」の形を用います。

例)

(7)A:你是不是美国人?[日本語訳:あなたはアメリカ人ですか(違いますか)?]

    B:我不是。[日本語訳:違います。]

(9)A:你昨天去北京,今天说不去北京,你到底去不去北京

    [日本語訳:昨日は北京に行くと言っていたのに、今日は行かないと言う。一体北京には行くのですか、行かないのですか?]

    B:我还没决定。[日本語訳:まだ決まっていません。]

中国語の例文は、『外国人学汉语难点释疑』P89より

④选择问:選択疑問文

【选择问】は日本語で「選択疑問文」と呼ばれ、「……还是……」の形を用います。

例)

(11)A:他明天来还是不来?[日本語訳:彼は明日来るのですか?来ないのですか?]

   B:他不来了。[日本語訳:彼は来れなくなりました。]

(12)A:有的人想去北京,有的人想去广州。咱们去北京还是去广州

    [日本語訳:ある人は北京に行きたいと言い、ある人は広州に行きたいと言う。北京と広州、どちらに行くのですか?]

   B:我看,咱们去北京吧。[日本語訳:まぁ、北京でしょうね。]

中国語の例文は、『外国人学汉语难点释疑』P89より

 以上4タイプの疑問文を見ると、是非问には語気助詞“を、その他の特指问、反复问、选择问には語気助詞“が用いられていますね。またいずれの疑問文でも語気助詞が省略される場合があることも分かります。

 是非问の場合は、会話においては語尾を上げて発音することで語気助詞“吗”が省略されることがありますが、特指问、反复问、选择问の“呢”が省略される場合とそうでない場合に、明確な違いはあるのでしょうか。

 ここで「“*你知道他在哪儿呢?”は何故NGなのか」の答えを導き出すことができます。

“*你知道他在哪儿呢?”は何故NGか

 「彼がどこに行ったか知ってる?」と尋ねたいとき、“*你知道他在哪儿?”と言えないのが何故なのか、以下の文章をそれぞれ比較しながら考えていきましょう。

(1)他在哪儿?[日本語訳:彼はどこに行ったの?]

(2)你知道他在哪儿?[日本語訳:彼がどこに行ったか知ってる?]

(3)你说他在哪儿?[日本語訳:彼はどこに行ったのかな(あなたはどう思う)?]

中国語の例文は、『外国人学汉语难点释疑』P90より

(1)~(3)の文章は全て“在哪儿”が使われており、一見全て【特指问】に見えますが、(2)の文章(「彼がどこに行ったか知ってる?」)には“”が使用されています。その理由は、(1)と(3)の文章の聞きたいことが、「彼の居場所」であるのに対し、(2)で聞きたいことは【(彼の居場所を)知っているかどうか】だからです。

 これを図式化すると、以下のような形となります。

<『外国人学汉语难点释疑』P91より作図>

 以上のことから、【彼の居場所】を聞きたい(1)と(3)の文章は【特指问】であることから、使用される語気助詞は“”となり、一方の【(彼の居場所を)知っているかどうか】を聞きたい(2)は、「Yes(知っている=知道)/「No(知らない=不知道)」で答えられる文章のため、【是非问】であり、使用できる語気助詞は“”が正しいことが分かります。

”/“”がつくかどうかで意味が変わる表現

 最後に、語気助詞“”や“”がつくかどうかで、意味が変わってしまう疑問文をご紹介します。

你有什么问题 ≠ 你有什么问题

“你有什么问题”の意味が、「どんな問題があるか(=你的问题是什么?)」と尋ねているのに対し、“你有什么问题?”の“什么”には、具体的な意味はないといいます。

 そのため“你有什么问题吗?”という疑問文は、具体的に問題の内容を聞いているわけではなく、「問題があるかどうか(=你有问题?/你有没有有问题)」を尋ねている文章となります。

 まとめると、以下のような形です。

“你有什么问题” ≠ “你有什么问题”

“你有什么问题” = “你有问题?”

中国語の例文は、『外国人学汉语难点释疑』P94より

 同じような形式の疑問文としては、以下のような物があります。

例)

(3)A:你要什么?[日本語訳:何が欲しいですか?]

  B:我要买一个面包。[日本語訳:パンがひとつ欲しいです。]

(4)A:你要买点儿什么(东西)?(=你要不要买东西?)

    [日本語訳:何か欲しい物がありますか?]

  B:不,我不想买什么,我只是随便看看。

    [日本語訳:いえ、特に何も欲しくありません。見ているだけです。]

中国語の例文は、『外国人学汉语难点释疑』P94より

你去哪儿 ≠ 你去哪儿

 先程、「“哪儿”がつく疑問文は【特指问】と呼ばれ、一般的には語気助詞“呢”が用いられる」とご紹介しました。そして、語気助詞“呢”は用いる場合と、用いない場合の両方があることもお伝えしました。

 では“你去哪儿”と“你去哪儿”には、何か違いがあるのでしょうか。

 結論から言うと、両者の意味は異なります。

“你去哪儿”は、単純に「あなたはどこに行くの?」という意味ですが、“你去哪儿”と文末に“呢”を用いる場合は、【➀比較対象が複数あり、②一歩踏み込んで、どちらにしたいかを聞きたいとき】に用いられます。

 たとえば、以下のような場合です(a.は、“呢”を用いない文章、b.は“呢”を用いる文章です)。

例)

(3)a.A:你明天干什么?[日本語訳:明日何をするの?]

    B:我明天去看朋友。[日本語訳:友だちに会いに行くよ。]

    b.A:你明天看朋友吗?[日本語訳:明日友だちに会いに行くの?]

   B:不去。[日本語訳:行かないよ。]

   A:在宿舍里学习?[日本語訳:寮で勉強するの?]

   B:不学习。[日本語訳:しないよ。]

   A:那,你明天干什么?[日本語訳:じゃあ、明日何をするの?]

   B:我也不知道。[日本語訳:僕にも分からない。]

(4) a.A:你是不是美国人?[日本語訳:あなたはアメリカ人ですか?]

     B:我是美国人。「日本語訳:アメリカ人です。」

         bA:我爸爸是美国人,我妈妈是英国人。

     [日本語訳:私の父はアメリカ人で、母はイギリス人です。]

     B:那么你是不是美国人?[日本語訳:じゃあ、あなたはアメリカ人ですか?]

     A:我是美国人。[日本語訳:アメリカ人です。]

中国語の例文は、『外国人学汉语难点释疑』P93より

 先程述べた“呢”を用いる疑問文の条件、【➀比較対象が複数あり、②一歩踏み込んで、どちらにしたいかを聞きたいとき】は、しばしば“……,那么,……”の形をとりますので、“呢”をつけるかどうか迷った際は参考にしてみてはいかがでしょうか。(特指问、反复问、选择问の“呢”がつく例文も、この形をとっています)。

 ちなみに、このような場合でも「“呢”をつけなければ絶対に間違い」というワケではないようですので、あまり神経質にならず、文章のニュアンスをつかむ際のヒントのひとつとして注目してみてくださいね。

★★★

 いかがでしたか?語気助詞の“”や“”がつくかどうかによって、文章の意味やニュアンスが変化する場合があることが、お分かりいただけたかと思います。また、疑問文が「何を一番聞きたいのか」情報を整理すると、“”と“”のどちらを使えばいいかが分かると思いますので、あせらずじっくり内容を確認しましょう。

※記事中の日本語訳文、色文字、下線処理などは全て筆者による。

※記事中の*印のついた文章は誤用。

※参考文献:『外国人学汉语难点释疑』(北京语言大学出版社 /叶盼云 吴中伟 编著)  P88~P94

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もりゆりえ

広島県東広島市出身。尾道市立大学美術学科卒業。高校時代に読んだ漫画「封神演義」をきっかけに中国語学習を開始。大学卒業後中国に渡り、浙江大学に10ヵ月間の語学留学(2005年〜2006年)をする。留学中に、「第二届中国国際動漫画節」に参加。現在はフリーランスの中日漫画翻訳者として活動中。趣味は中国のマンガアプリでマンガを読むこと。

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