【中国語】語順は謎?助動詞、介詞フレーズ、副詞、動詞の位置

語法・表現・フレーズ

みなさん、突然ですが、次の2つの文を見てみてください。

  • A:不能 / 在这儿 / 游泳
  • B:在这儿 / 不能 / 游泳

この2つの文がどちらも文法的に問題ないと言われたら、何かやるせない気持ちになるのではないでしょうか。

つまり、介詞フレーズと助動詞、動詞の“語順”の問題です。多くの日本人の学習者なら、「介詞フレーズと助動詞はどっちが先なんだ!!明確なルールを教えて!」と一義的な答えを求めがちですが、それはなかなか難しいのが現状です。

以下、この問題について検討していきましょう。

【中国語】一般的な語順説明ではどうなっているか?

例えば、『合格奪取! 新HSK6級トレーニングブック』では、文成分の並びをMAP(上図)にしています。

助動詞の位置は動詞の直前?

これを見ると、

まず助動詞は、「述語」の中に入れられており、「動詞の一部である助動詞は、動詞の前に置く」と書かれています。これを見ると、動詞と助動詞の間には何も割り込んで入れられないような意味に取れます。

介詞フレーズは状語だが、状語の中での語順は?

では、介詞フレーズはどこでしょう?

中国語の文では、基本的に「主語」と「述語」の間に「連用修飾語(状語)」が入ります。

ただ、上記のMAPで「連用修飾語(状語)」の中を見ると以下のようになっています。介詞フレーズもありますね。

  • 副詞
  • 介詞フレーズ
  • 時間
  • 場所
  • 形容詞 + “地”

これらの「状語」内での順番は示されていません。

一般的な教科書ではこれくらいの説明に留まるでしょう。

【中国語】助動詞、介詞フレーズ、副詞、動詞の語順

それでは、より専門的な論文を参照してみましょう。以下、文楚雄「中国語の助動詞の位置」、を参照して学習の参考になるポイントをまとめます。

【中国語の語順①】助動詞→介詞フレーズ→動詞

まず、最初は助動詞、介詞フレーズ、動詞の語順ですが、

これは基本、助動詞介詞フレーズ→動詞になります。

  • 希望与这位教授好关系。(こちらの教授とよい関係が作れるよう希望する)
  • 给我个例子吗?(さらに私に例を挙げてくれますか?)
  • 他还在别的什么地方到这个吗(彼は他にどこの場所でこれを手にすることができるか?)

【中国語の語順②】助動詞→状語(描写性)

動詞や形容詞の前にその動作や状態を修飾する描写性状語が入る場合は、助動詞状語(描写性)となります。ここで言う状語とは、主に副詞形容詞 + “地”です。

  • 平等地对待我们(平等に我々に対応することができない)
  • 如果他不具体说出…(もし彼が具体的に言えないなら…)
  • 他不在梦里看见他(彼は夢の中で彼を見ることはできない)

【中国語の語順③】状語(非描写性)→助動詞

動詞や形容詞の前にその動作や状態を非描写的に修飾する非描写性状語が入る場合は、状語(非描写性)助動詞となります。

  • 一千块钱买到(千元でようやく買える)
  • 怎么解决这个问题?(どうやってこの問題を解決できるのか?)
  • 也许找到(もしかしたら見つかるかもしれない)

【中国語の語順④】助動詞の前後どちらでも置ける状語

先の論文によると、「否定、時間、場所、程度などを表す状語は助動詞の前に置く場合もあり、後ろに置く場合もある」として、置く場所が違えば修飾する範囲や対象も変化すると説明しています。一方で、置く場所が違っても文の意味はほとんど変わらないものもある、といいます。

※ここでいう状語とは介詞フレーズも含みます。

不能在这儿 or  在这儿不能 はどっちもOK?意味の違いは?

ということで、最後に冒頭の問いに戻ってみましょう。

こちらは、助動詞と状語(場所を表す)の語順の問題です。

  • A:不能 / 在这儿 / 游泳
  • B:在这儿 / 不能 / 游泳

先の論文でいえば、「【中国語の語順④】助動詞の前後どちらでも置ける状語」に当たるので、どちらでもいいと言えます。論文では、「一部の場所を表す状語は助動詞の前後どちらでも置ける」と説明していますが、「一部の場所を表す状語」がどのような定義なのか、また、前後に変わることで意味は変わるのか?そこについては言及がありませんでした。

そこで、とりあえず上記のAとBどちらも成り立つとして、そのニュアンスがどう違うか?中国語母語話者に聞いてみました。

中国語母語話者によると、どちらも不自然な文ではなく、文としては問題ないとした上で、Aの方は“不能”の「禁止」のところが強調され、Bの方は“在这儿”と「ここで」という場所が強調されるようなニュアンスがあるとのことでした。

若干すっきりしないところもありますが、問題は解決されたと言って良いでしょう。

私達学習者が知っておくべきは、以下4つです。

  1. 基本語順は、助動詞→介詞フレーズ→動詞
  2. 助動詞→状語(描写性)
  3. 状語(非描写性)→助動詞
  4. 否定、時間、場所、程度などを表す状語は助動詞の前後に置けることがある

このような基本ルールを頭の片隅に置いておき、学習者としては主にPaoChaiの推奨する音読ジョグや瞬間中作文など戦略的な中国語学習で実力を高めていきましょう。

参考:文楚雄「中国語の助動詞の位置」

関連記事:【中国語】動詞と助動詞、助動詞と副詞の違いは?合計9観点で考察

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HARU

兵庫県出身。同志社大学卒業。卒業後、食品メーカーで商品開発や中国事業に携わる。多くのプロジェクトで通訳・翻訳として貢献。自身の躓いた語学経験を多くの学習者に還元したいという想いでPaoChaiで中国語学習コーチとなる。新HSK6級。通訳案内士。好きな言葉は「為せば成る為さねば成らぬ何事も」。趣味は自転車で街を探索すること。温泉めぐり。ランニング。

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