【中国の食文化から楽しく学ぶ中国語】餃子(ぎょうざ編)
こんにちは。テツジンです。
1回目の記事では、炸醤麺を通して楽しく学ぶ中国語と中国文化について紹介しました。
2回目の記事では、餃子(ギョーザ jiǎo zi)を通して楽しく学ぶ中国語と中国文化について紹介します。
※冒頭の画像は、中国東北地域の餃子です。
目次
餃子について
巨大な餃子のモニュメント(老辺餃子屋に飾ってあったもの)
餃子は春秋戦国時代、黄河下流の山東省で誕生しました。
最初は旧正月(春節)で食べる儀礼食でしたが、現在は普段から好んで食べるようになりました。
旧正月に餃子を食べるのは、旧年に別れを告げて新年を迎える時刻=交子(jiāo zi)の発音が餃子(jiǎo zi)に通じるため、
家族で餃子を食べて新年を祝い、家族団欒や子孫繁栄の意味が込められています。
山東から中国各地に渡った餃子文化
山東生まれの餃子が長い歴史を経て、中国各地に伝播していきました。
特に中国東北地域で定着しています。
1回目の記事で紹介したように、中国東北地域に暮らす人々の先祖は、山東出身の方が多いです。
その理由は、19世紀後半から20世紀前半にかけて山東から中国東北地域にたくさんの中国人が移動しました。その際に、餃子文化を山東から中国東北地域に持ち込みました。
饺子从山东传到中国东北。
jiǎo zi cóng shān dōng chuán daò zhōng guó dōng běi
餃子は山東から中国東北に伝わりました。
私が体験した中国東北地域の餃子文化
私は中国東北地域の出身で、餃子が大好きです。特に老辺餃子館の餃子が好きです。
老辺餃子館(ろうへんぎょうざかん)は、本店が中国遼寧省瀋陽市にある餃子レストランです。
1829年に設立された老舗です。
老辺餃子館
この店の餃子は美味しいだけではなく、種類も非常に豊富です。
餃子の餡がなんと30数種類があります。
例えば、
猪肉(zhū ròu) 豚肉
牛肉 (niú ròu) 牛肉
羊肉(yáng ròu) 羊肉
1999年から2011年まで、日中(札幌市・瀋陽市)青少年スポーツ交流の通訳として、
日本の子供たちを引率して、4回瀋陽に行きました。
毎回瀋陽に行った際には、主催者側は必ず1回訪問団全員を老辺餃子館でもてなしてくれました。
中国から日本に渡った餃子文化
中国から日本に餃子文化が伝わったのは、殷晴・周璐蓉(2018)によれば、主に三つの時期を経たと言われています。
1回目は江戸時代、2回目は明治時代、3回目は戦後です。
以下では、その三つの経緯について簡単に紹介します。
1回目は、明の時代の儒学者の朱舜水(しゅ しゅんすい、zhū shùn shuǐ)が1660年頃、
日本に渡った時に、水戸黄門こと徳川光圀のと出会った時期です。
そのため、水戸黄門が初めて餃子を食べた日本人だと言われています。
2回目は日清戦争以降、大量の中国人官費留学生が日本へ押し寄せ、その時に餃子文化を日本に伝えました。
3回目は戦後です。
戦前、中国に渡った軍人と「満洲」移民が日本に持ち帰ったのです。
その歴史を端的にあらわれているのは、栃木県宇都宮市です。
饺子从中国传到日本的栃木県。
jiǎo zi cóng zhōng guó chuán daò rì běn de lì mù xiàn
餃子は中国から日本の栃木県に伝わりました。
餃子を用いた中国語表現
パターン1:文法1
我喜欢吃・・・
私は○○を食べるのが好きです。
例文1
我喜欢吃猪肉馅饺子。
wǒ xǐ huan chī zhū ròu xiàn jiǎo zi
私は豚挽き肉餡の餃子を食べることが好きです。
例文2
我喜欢吃羊肉馅饺子。
wǒ xǐ huan chī yáng ròu xiàn jiǎo zi
私は羊の挽き肉餡の餃子を食べることが好きです。
例文3
我喜欢吃牛肉馅饺子。
wǒ xǐ huan chī niú ròu xiàn jiǎo zi
私は牛挽き肉餡の餃子を食べることが好きです。
上記の例文が示しているように、○○のところを入れ替えれば、無限にいろいろな表現ができると思います。
パターン2:文法2
提到・・・,我会想起・・・
○○と言えば(言及したら)、私は○○を思い出す。
例文4
提到饺子,我会想起山东。
tí daò jiǎo zi,wǒ huì xiǎng qǐ shān dōng
餃子と言えば、私は山東を思い出す。
例文5
提到饺子,我会想起沈阳。
tí daò jiǎo zi,wǒ huì xiǎng qǐ shěn yáng
餃子と言えば、私は瀋陽を思い出す。
例文6
提到饺子,我会想起江户时代。
tí daò jiǎo zi,wǒ huì xiǎng qǐ jiāng hù shí dài
餃子と言えば、私は江戸時代を思い出す。
例文7
提到饺子,我会想起朱舜水。
tí daò jiǎo zi,wǒ huì xiǎng qǐ rì zhū shùn shuǐ。
餃子と言えば、私は日本の朱舜水を思い出す。
例文8
提到饺子,我会想起德川光圀。
tí daò jiǎo zi,wǒ huì xiǎng qǐ dé chuān guāng guó
餃子と言えば、私は徳川光圀を思い出す。
例文9
提到饺子,我会想起移民。
tí daò jiǎo zi,wǒ huì xiǎng qǐ yí mín
餃子と言えば、私は移民を思い出す。
例文10
提到饺子,我会想起宇都宫市。
tí daò jiǎo zi,wǒ huì xiǎng qǐ yǔ dōu gōng shì
餃子と言えば、私は宇都宮市を思い出す。
恐らく餃子を嫌いな人はいないと思います。
「我会想起」の後は、人によって様々な単語が想起されるでしょう。
いろいろな文章を作ることができると思います。
是非チャレンジしてみてください。
パターン3:餃子にまつわる決まり文句
餃子は国民食ですので、中国語のなかで、餃子にまつわる決まり文句も多いです。今回、2つ紹介します。
例文11
舒服不如倒着,好吃不如饺子。
shū fu bù rú dǎo zhe, hǎo chī bù rú jiǎo zi
気分よくなるには寝るにしかず、美味しいものならギョーザにしかず。
“不如”は「・・・に及ばない、・・・にこしたことはない」という意味です。
例文12
茶壶里煮饺子,肚里有货倒不出来。
chá hú li zhǔ jiǎozi,dù li yǒu huò dào bù chū lai
急須で餃子を茹でる、物はあるが出てきません。
例文12は、歇后语(xiē hòu yǔ)で、中国語のしゃれ言葉の一種です。
2つの部分からなり、最初が謎かけに似た部分、後半が謎解きに似た部分です。
通常は最初の部分だけを言い,後半部分を自然に思いつかせる決まり文句です。
「歇后语」が言えればかっこよく聞こえますし、
上級レベルに達した証でもありますので、たくさん覚えていきましょう。
まとめ
老辺餃子館の創作餃子
1回目に記事で炸醤麺について紹介し、2回目は餃子について紹介しました。
是非、炸醤麺や餃子を楽しみながら、中国語の学習を楽しみましょう。
これからも様々な食文化を紹介して行きたいと思います。
参考文献
・石原道博『人物叢書 朱舜水』吉川弘文館、1989年。
・殷晴・周璐蓉「日本における餃子の伝来と受容」東京大学大学院人文社会系研究科編『ぎんなん(特別号)』2018年、20-35頁。
・大塚秀明「日中餃子文化研究:日本食に融合した中国料理とその歴史」キッコーマン国際食文化研究センター編『研究機関誌FOOD CULTURE』27号、2017年、12-13頁。
・于亜「中国山東省おける餃子食の意味と地域の特質」『人文地理』第57巻第4号、2005年、44-61頁。
・于亜「餃子食にみる食文化の継承と変容―中国黒龍江省の山東移住者村を事例として―」『大手前大学論集』20号、2021年、1-17頁。
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テツジン
中国黒竜江省出身、1997年来日。北海道大学教育学部卒、教育学博士。北海道大学専門研究員を経て、2020年に通訳・翻訳事務所を開設。専門分野は、外国語教育、東アジア地域研究、人の移動と移民研究など。学部時代には言語に対する好奇心に駆られて、英語や韓国語など第五外国語まで履修。学部時代から通訳・翻訳者として日中韓の草の根の交流に携わっている。
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