【中国語】名詞が状語(連用修飾語)になる!?例外的な用法とは

みなさん、以下の中国語を見て、何か違和感はありますか?
- 一家公司高薪招聘销售经理。
- Yì jiā gōngsī gāoxīn zhāopìn xiāoshòu jīnglǐ.
- ある会社が高い給料でセールスマネージャーを募集している。
- 引用元:『HSK長文テキスト5級』文章26
違和感がなければ特に気にしなくて大丈夫です!」
※ヒントは赤字です。
しかし、
文の構造が気になる人は、
「高薪(高給)」という名詞が「招聘(募集している)」という動詞を修飾している、つまり、何故名詞が副詞のように状語(連用修飾語)として使われているのか?と思ったはずです。
名詞が状語(連用修飾語)になるなんて、一般的な教科書には全く書いていません!
そこで中国語の文献を探してみたところ、尹明花「现代汉语普通名词作状语的句法语义接口研究」(以下、「本論文」という)の論文を見つけました。本論文では名詞の状語(連用修飾語)的な使用について分析していますので、以下紹介いたします。
【中国語】名詞が状語(連用修飾語)になる例外的な使用
本論文は、現代中国語における普通名詞(時間・場所以外の一般名詞)が状語(副詞的な修飾語)として使われる現象について、文法と意味の接点(句法语义接口)から分析したものです。以下に要点をまとめます。
📌【研究の背景】
中国語では「时间名词(時間名詞)」や「处所名词(場所名詞)」が状語として使われるのは一般的です。それに対し、「普通名词」が状語として使えるかについては学界で議論が分かれています。
📌【主な主張】
本論文の主な主張です。
- 一部の普通名詞も状語として使える。
- これらの用法は、中国語の非范畴化(非範疇化)現象の一例であり、語彙の動的意味生成(生成词库理论)に基づいて説明可能。
📌【分類と意味的役割】
本論文では、中国語において普通名詞が状語として使われる場合、以下のような意味役割があります。冒頭の「一家公司高薪招聘销售经理。」は、下表の「①方法・方式」に分類されるでしょう。
意味役割 | 例 | 内容説明 |
---|---|---|
①方法・方式 | 现金交易 | 動作のやり方を表す(例:「現金で取引する」) |
②依拠・根拠 | 常规解决 | 行動の前提・判断基準を表す(例:「規則に基づいて解決」) |
③材料 | 纸糊的灯笼 | 動作に用いる素材を表す(例:「紙で作った灯籠」) |
④工具 | 电话联系 | 動作に使われる道具を表す(例:「電話で連絡する」) |
⑤原因 | 煤气中毒 | 動作の原因(例:「ガス中毒」) |
⑥情態(感情・意志) | 真情告白 | 主観的態度を表す(例:「真情をもって告白する」) |
⑦範囲 | 全程跟踪 | 動作の範囲を表す(例:「全過程にわたって追跡する」) |
【中国語】なぜ名詞が状語として使えるか?
本論文によると、名詞が状語として使える理由、条件は以下です。
- 名詞が状語になれるのは、動詞の意味枠組みと名詞の機能役割が一致しているから。
- 例:「电话联系」では「电话」が「連絡する手段」として自然に機能している。
📌【制約要因】
- 語義細化原則(语义加细原则):より明確な意味を伝えるために、状語として使う。
- 語用上の強調(语用凸显原则):強調・焦点化のために出現。
- 音節リズム(语音节律):2音節+2音節(例:「电话联系」)などの音律的制約が働く。
📌【結論】
- 普通名詞が状語として使われる現象はごく一部に限られるが、一定の文法的・意味的ルールに基づく。
- 生成詞庫理論(Generative Lexicon Theory)と認知言語学の枠組みを使うことで、文法と意味の相互作用を説明できる。
- この現象は、中国語の文法的柔軟性と語彙の動的な用法を理解する上で、重要な視点を提供している。
🔑キーワード
本論文のキーワードは以下です。気になる方は調べてみましょう。
- 普通名词状语化(Noun Adverbialization)
- 双重认知理据(Cognitive Motivation)
- 语义加细原则(Semantic Specification)
- 语音节律(Phonological Rhythm)
- 句法语义接口(Syntax-Semantics Interface)
**
以上です。
論文なので中々難しいですが、ポイントとしては、名詞が意味的に述語と次のような関係にあるときには、状語(連用修飾語)として使えるということです。このような意味関係が明確なのはそこまで多くないので例外的な使用方法という風に見做されているのでしょう。
- ①方法・方式
- ②依拠・根拠
- ③材料
- ④工具
- ⑤原因
- ⑥情態(感情・意志)
- ⑦範囲
学習者の方は難しく考えずに、名詞を状語(連用修飾語)に使うようなことも稀にあると理解しておけばよいでしょう。
参考:尹明花「现代汉语普通名词作状语的句法语义接口研究」

tad
千葉県出身、東京育ち。貿易関係の会社で10数年ほど勤務後、5年の中華圏駐在経験を活かして独立。現在は、翻訳や通訳などを中心にフリーで活動中。趣味はゴルフ。好きな食べ物は麻辣香锅。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。中国語検定準1級。HSK6級。
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