中国生活で役立つお酒の知識!日本4種と中国5種の酒を各3銘柄厳選で徹底紹介
こんにちは!中国駐在通算10年、日本酒を日々中国大陸に広げる仕事をしているつっつんです。
中国も日本も同じ東アジアの国。飲食文化にも似通ったところもあれば、当然異なる部分もあります。
今日は、「酒を通じた日中の架け橋」を目指して日々両国のお酒と触れ合ってきたつっつんが、日本と中国のお酒を中心に、それにまつわる文化や知識を紹介いたします。
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目次
まずは飲んでみよう!【中国のお酒 編】5種各3銘柄を厳選
中国の飲酒文化は原始時代にさかのぼります。夏の時代には朝廷の儀式で酒が飲まれていた記録が残っていますが、周知のとおり、青銅器時代には多くの酒器や酒にかんする道具が発明され、社会にひろく飲酒文化が広まっていたことがわかっています。それではまずは、中国を代表するこの酒類の紹介から始めましょう!
白酒(bái jiǔ)
中国の「国酒」
いま現在、中国を代表するお酒が白酒であることは誰もが認めるところですよね。原料は大米(dà mǐ、食用米)、小麦(xiǎo mài)、玉米(yù mǐ、トウモロコシ)などの各種穀物を発酵(fā jiào)させ、蒸留(zhēng liú)して造られます。
アルコール度数も比較的高く、通常は約50度が一般的。蒸留技術が発達していない古代、人々はアルコール度数の低い醸造酒を飲んでいましたが、元の時代に中国と海外との交流に伴い、蒸留技術が導入され始め、度数の高い酒類が造られるようになったとのこと。
白酒もその一つで、その後、今日私たちがよく知っている白酒ブランドの多くは清朝に設立されています。また、康熙(kāng xī)、乾隆(qián lóng)皇帝の清全盛期に穀物の生産が増加したため、多くの産地で白酒の銘柄が誕生しています。
劉備や李白は何を飲んでいた?
以上の歴史的事実から、つっつんが中国来てからもずっと抱いていた「三国時代の英雄たち、はたまた唐代の詩人たちはどんな酒を飲んでいたんだろう?」という疑問への答えは取り敢えず「(現代ある蒸留酒の)白酒ではなかった」ということは言えそうです。
結構多くの中国の方が「いや、中国は昔っからこの白酒を飲んでいた!1000年以上の歴史はゆうにある!」とおっしゃるので…(笑)
ブランドいろいろ
さて、中国国内の白酒市場は現在かなり大きな規模となっており、中国の酒類販売全体の約70%を占め、その額は7,500億元(2023年調べ)となっています。
現在、中国には8,292の白酒ブランド(2022年調べ)が存在しており、その中で最も有名なのは何と言っても茅台酒(máo tái jiǔ)や五梁液(wǔ liáng yè)といった大手ブランド。商品価格は数百元から数千元、場合によっては数万元と、お手頃なものから目が飛び出るくらい高いものまであり、白酒業界内で一、二を争う高級ブランドと見られています。
上の2ブランドが接待で出てきたら取り敢えず「哇,我喝不惯这么珍贵的(wa ,wǒ hē bù guàn zhè me zhēn guì de)!え?こんな珍しいお酒飲んだことないですよ!」と言っておきましょう。相手も悪い気分はせず、「没关系,你多喝!(méi guān xì ,nǐ duō hē)いいから、たくさん飲んでね!」と言われること請け合いです。※中国の方々からの飲め飲め攻撃をかわす方法はまた改めてお教えします(笑)。
どんなところで飲まれる?
話を戻して、現在白酒は、中国全土のさまざまな地域で生産されており、中でも貴州省(2,275蔵)、四川省(4,544蔵)などの南西部地域に生産地が集中しています(2022年6月末現在)。
どんなシーンで飲まれるかというと、友人や家族との食事、年中行事(春節chūn jié、中秋節zhōng qiū jiéなど)の際の贈り物、職場の忘年会などがメインといったところでしょうか。
日本人のイメージにもある、「商談は酒席で決まる」という場にも欠かせないツールですね。
白酒の未来
しかし、白酒はアルコール度数が高く、味が強すぎるため、近年は若者の消費量は減少する傾向にあります。
そこで各酒蔵も最近、若い世代の消費者を惹きつけるためにアルコール含有量の低い製品を開発したり、パッケージや宣伝方法を研究したりしています。重慶で創業した江小白(jiāng xiǎo bǎi)は、この点では比較的成功しているブランドと言えるでしょう。
また、近年の国潮 (guó cháo 中国文化・ブランドへの流行回帰)の人気を受けて、白酒は中国の国酒として新たな変革の時代を迎えています。今後も白酒の新たな展開が楽しみなつっつんです。
<つっつんの独断と偏見で記す!白酒3種>
茅台酒(máo tái jiǔ):言わずと知れた、中国でNo.1と言われる白酒の高級ブランド。接待で使われること多し。
江小白(jiāng xiǎo bǎi):重慶発祥の新興白酒ブランド。低アルコールや新感覚のパッケージデザインで若年層を開拓。
古井贡酒(gǔ jǐng gòng jiǔ):安徽省の地元ブランド。つっつんが個人的に愛飲し、中薬(漢方薬)を入れて薬酒も作ったりしている。
黄酒(huáng jiǔ)
どこで造られ、どこで飲まれる?
黄酒の主原料は糯米(nuò mǐもち米)と大麦麦芽(dà mài mài yá)。生産会社は江蘇、浙江、上海の3省に集中しており、そのうち江蘇、浙江、上海が83%も占めています。また、消費量の70%も浙江、江蘇、上海に集中しており、消費人口の10.6%を占めています。国内には指定規模以上の黄酒の酒蔵が90社あり、業界売上高は101億6,000万元(2022年)に達しています。
紹興酒と名乗ってはいけない?
日本では「紹興酒(shào xīng jiǔ)」と呼ばれることが多い黄酒ですが、「紹興酒」と名乗るには実はいくつか満たさなければならない条件があることをご存じでしょうか?
例えば、原産地は浙江省紹興市、仕込み水は建湖水に限る、などなど。なので、「紹興酒」と名乗れる酒を造れる蔵は誇りも高く、「そこいらの黄酒と一緒にしれくれるな」という思いがあるのをつっつんは感じます。
歴史と広がりと
黄酒造りの歴史は古く、春秋時代や戦国時代にはすでに飲まれていたことが記録に残っています。河姆渡遺跡(hé mǔ dù yí zhǐ)の出土物からもわかるように、長江文明ではすでに黄酒を飲むことが行われていました。主に江南地方の飲食店でよく扱われ、全国の一般的な小売店でもだいたい見ることができます。日本では古越龍山(gǔ yuè lóng shān)や花雕(huā diāo)などの有名ブランドが輸入品として入って来ていますが、中国でも誰もが知っている有名ブランドです。
また、日本酒と同じように温めて飲まれることが多いのも黄酒の特徴。江南の飲食店では日本の蕎麦屋さんさながら、昼下がりに現地の料理をつまみつつお燗の黄酒を一杯やっているおじさんを見かけることもあります。
<つっつんの独断と偏見で記す!黄酒3種>
古越龍山(gǔ yuè lóng shān):これも言わずと知れた、日本でもおなじみの黄酒の大ブランドかつ紹興酒を代表する銘柄。黄酒全体に言えることだが、中国ではロックや氷砂糖で飲むことはあまりなくだいたい常温で楽しんでいる。
会稽山(kuaì jī shān):会稽山は戦国時代の越国の首都だった紹興にある山の名称。紹興人の誇りでもある名を取った自慢の銘柄。
石庫門(shí kù mén):上海の地元ブランド。お手頃な値段で、上海のローカル料理店に多くみられる。ほかの有名上海ブランドには「和酒(hé jiǔ)」もある。
葡萄酒(pú táo jiǔ)
なんと唐詩にも
中国でもどこでも飲めるようになったワイン。歴史をたどると唐の時代の政治家王翰(wáng hàn)の『涼州記(liáng zhōu jì)』にワインが登場します。
- 葡萄美酒夜光杯(pú táo měi jiǔ yè guāng bēi):葡萄の美酒が夜光の杯にみたされる
- 欲饮琵琶马上催(yù yǐn pí pá mǎ shàng cuī):いざ飲もうとすると、馬上の琵琶がせきたてるように鳴らされた
- 醉卧沙场君莫笑(zuì wò shā chǎng jūn mò xiào):砂漠で酔いつぶれてしまったとしても、君よ、笑ってくれるな
- 古来征战几人回(gǔ lái zhēng zhàn jǐ rén huí):昔から、このあたりまで戦さに出てきて、無事に帰ったものが何人あるというのか
詩にも詠われるくらい、唐の時代にはワインの生産が盛んだったようですが、明の時代になると徐々に黄酒に取って代わられ、以後数百年にわたって一般の人がワインを目にする機会はほとんどなくなってしまったと言います。
その後、中国でワインが日の目を見るのは1892 年、山東張裕红酒 (zháng yù hóng jiǔ) ワイン会社が設立されてから。近代的なワイン製造業として生産が復活することとなりました。
紅酒?白酒?
中国ワインの生産量はその後100年夜余りで増加を続け、現在はチリを上回り世界第7位、消費量では同第5位となっています。巷のレストランでは、中国現地の料理店でも、ほとんどのお店でワインを置いており、かつては食事とともに白酒を楽しんでいた多くの消費者が、今ではさまざまなシーンでワインを楽しんでいます。
また、赤ワインはその色から「紅酒(hóng jiǔ)」とも呼ばれますが、白ワインが「白酒」と呼ばれず「白葡萄酒(bái pú táo jiǔ)」と呼ばれるのはお察しの通り、中国では同名の先輩がどーんと構えてらっしゃるからですね。15年ほど前から赤ワインがブームとなり、白ワインは出遅れていた感がありましたが、現在は沿岸都市を中心にどちらも楽しまれていますが、「白ワインは冷やして飲むもの」という常識が普及していないエリアもあるのでご注意を。
世界の中国ワイン、今後は…
中国での主な生産地は主に北部で、このうち寧夏回族自治州が最大であり、ワイナリー数も最も多い地域となっています(2024年には27)。上記の張裕、王朝(wáng cháo)、万里の長城(cháng chéng)などは、いずれも有名な国内ブランド。
現地の地の利を生かしてお手頃な価格で提供をして来ましたが、現在は欧米や豪州の有名ブランドもあの手この手を駆使して低価格の商品を中国へ送り込んできています。胃袋の数が大きな中国大陸、ワインの販売戦争もまだまだ激化していくことが予想されます。
<つっつんの独断と偏見で記す!中国産葡萄酒3種>
張裕(zháng yù):山東省煙台を拠点とする中国を代表するワイナリー。上記のように、中国におけるワイン生産のパイオニア。
王朝(wáng cháo):天津を拠点とする1980年創業のフランス企業との合弁ワイナリー商品。つっつんは過去、個人的に愛飲していた。
長城(cháng chéng):国営企業・中国中粮(zhōng guó zhōng liáng)参加のワイナリー商品。2008年の北京オリンピックでの出された名ブランド。
啤酒(pí jiǔ)
啤酒大国・中国になるまで
なんと、世界最大のビール生産国は中国(2022年の生産量は3億6,040万5,000ヘクトリットルで、第2位米国の1.85倍)。現在国内酒類売上高の2割をビールが占め、白酒に次ぐ第2位(2019年)となっています。実は中国でのビール醸造には長い歴史があり、考古学の研究によると、約7,000年前に人々がビールのような酒類を醸造し飲んでいた痕跡が発掘されているとのこと。当時、この酒類は米、蜂蜜(fēng mì)、山楂(shān zhā、サンザシ)などを原料として醸造(niàng zào)されており、古代中東やエジプトで造られていたビールに似ていると言われています。古代の歴史書『素文(sù wén)』では、ビールは「醆醴」(zhǎn lǐ)と呼ばれ重要な役割を果たしていたといいます。しかし漢王朝の滅亡後、ビールは他のアルコールに取って代わられ、ビールが再び歴史の表舞台に出てくるには、2000年ほど待たなければなりませんでした。
国民的飲み物へ
現代中国でビールの生産が再開されたのは19世紀末になってからで、ロシア人がハルビンにビール醸造所を建設し、その後、中国を代表するビールである青島啤酒(qīng dǎo pí ji)や、有名な広東省の珠江啤酒(zhū jiāng pí jiǔ)など、数多くの国内ビールブランドが誕生しています。現在、中国ではビールを売っていない飲食店、小売店はまずなく、もはや中国人の飲食文化になくてはならに一部となっています。
日本のブランドでは朝日啤酒(zhāo rì pí jiǔ),麒麟啤酒(qí lín pí jiǔ)がそれぞれ北京、広東で現地生産をしており、日本料理店を中心に現地の小売店でも見かけられるお馴染みの商品になっています。さらに三宝乐啤酒(sān bǎo lè pí jiǔ、サッポロビール)や三得利啤酒(sān dé lì pí jiǔ 、サントリービール)なども輸出をしており、多彩な中国ブランドに加え、日本ビールブランドはこれからも盛り上がりそうです。
<つっつんの独断と偏見で記す中国産ビール3種>
青島啤酒(qīng dǎo pí ji):日本でも有名な山東省青島市に拠点のあるビールブランド。毎年夏に開催される青島啤酒节(qīng dǎo pí jiǔ jié、青島ビール祭り)には世界からファンが押し寄せる。
珠江啤酒(zhū jiāng pí jiǔ):広東省広州のビールブランド。ライトな味わいで、省内で広く飲まれれている。つっつんも出張の際にはいつも飲んでいるお馴染みのブランド。
燕京啤酒(yàn jīng pí jiǔ):北京に拠点を置くビールブランド。北京留学の思い出にはなくてはならないつっつんの青春の味。羊肉との相性もばっちり。
果味酒/利口酒(guǒ wèi jiǔ/lì kǒu jiǔ)
酒類業界の若き旗手
白酒の項でも触れましたが、白酒に限らず、中国の消費者の間では、飲酒量の減少傾向が顕著になっています。そうした傾向の中にあっても、近年は梅酒などのフルーツフレーバー酒は人気で、販売量も増加傾向となっており、国内の醸造業者も、女性や若者をターゲットにしたフルーティーな酒類の開発に力を入れています。
梅酒以外にも、柚子(yòu zǐ)やサンザシなどさまざまな果実の風味を加えた酒類もよく販売されています。また、果実酒市場は細分化が進み、果実の産地や品種、熟成期間の違いなどにより、同じブランドでも多くの種類の酒質が開発、販売されています。広い中国の特性を生かし、消費者のさまざまなニーズに応える幅広い製品が生産ができるのがこの酒類の強みです。
中でも、白酒ブランドの「江小白」が展開する「梅見(méi jiàn)」は、近年急速に発展している商品シリーズで、フレーバーの異なる商品が多く販路も広いのが特徴。現在、中国の小売店や飲食店の多くで扱われる人気商品となっています。
<つっつんの独断と偏見で記す!果味酒/利口酒3種>
梅見(méi jiàn):江小白が手掛ける梅酒ブランド。コストパフォーマンスの良さが支持され一躍人気商品に。現在はシリーズで多テイストの商品を展開。
RIO:上海などで生産されているリキュール。「すっきり味」「濃い味」「果実味」など、各ターゲットに応じた商品開発をする国産リキュールのパイオニアにして最大手。
和乐怡(hé lè yí):日本でもおなじみのサントリー「よろよい」が中国にも輸入品として進出。広告も大きく打ち出し、沿岸都市の若年女性層を中心に人気商品に。
訊かれたときのための【日本のお酒 編】4種各3銘柄を厳選
日本の読者のみなさんは「なにを今さら…」とお思いになる方もいらっしゃるかも知れませんが、中国の方から素朴かつ鋭い質問をされることも多々あります。
その一助となることもあるかと思いますので、しばしお付き合いを(笑)。
清酒(qīng jiǔ)
意外と知らない、日本酒の歴史
日本酒の起源は定かではないのですが、歴史的に確認できるのははやり中国の史書。「三国志」などにも当時の日本人が酒を嗜む様子が記されているのをみると最低でも2000年程度の歴史はありそうです。やがて大和朝廷が全国を支配化に置くようになると、朝廷の役所が酒造りを管理するようになりました。
いまでも当時の都がおかれた京都市内には「酒造司」という役所の跡が残っています。その後、酒造りは奈良や京都の大寺院で受け継がれるようになり、高品質な酒として評価を受けていました。江戸時代に至ると、兵庫県の灘や京都府の伏見が二大醸造産地となり、江戸にも樽廻船などで大量に出回るようになります。明治以降は海外に進出する酒蔵も増え、現在も米国、中国などに生産・販売拠点を構える酒蔵が数社存在します。
そして、中国へ
中国では西暦2000年頃から清酒の人気が上昇し、日本からの輸出量は2019年に米国を抜き中国がトップになりました。しかし消費量が増えているとはいえ、酒類全体のシェアから言うと0.1%も満たしません(2023年)。
ローカルのレストランや小売店で清酒を販売しているところはまだ少なく、市場としてはブルーオーシャンと言えます。現在、さまざまな清酒ブランドが進出していますが、中でも人気なのは何と言っても山口県のブランド・獺祭。2014年にG7で日本の首相がアメリカの大統領に勧めた酒として中国でも取り上げられ、爆発的な成長を見せました。
流行と課題
さて、沿岸部の一線都市の日本料理店や小売店を中心に広がりを見せる清酒ですが、多様な飲み方と酒質があることはまだあまり知られていません。例えば、日本酒は冷やしても温めても楽しめるお酒ですが、高級酒質の吟醸酒は燗酒には向きません。
また、主に夏場に冷やして楽しむ冷酒(生酒や生貯蔵)の浸透はまだまだこれからといったところです。中国に限らず日本以外の国では清酒は熱燗で飲むもの、というイメージが先行しているようです。
また、減り続けてはいるものの、現在でも日本には1000軒を超す酒蔵が存在します。日本への体験型旅行が流行している昨今、こうした酒蔵見学や酒づくり体験を受け入れる蔵も多く、今後も中国での清酒人気の新たな側面も見え始めています。
<つっつんの独断と偏見で記す!中国で買える日本の酒蔵の中国産清酒3種>
松竹梅(sōng zhú méi):宝酒造が1990年代に北京に進出し、自社工場で製造している日本でもおなじみの銘柄。宝酒造はほかにも焼酎やリキュール類、味醂などを現地生産しています。
朝香(zhāo xiāng):奈良の酒蔵・中谷酒造が1990年代に天津に造った工場で生産されている現地ブランド。純米酒、吟醸酒に特化した高級酒質をお手ごろな価格で楽しめます。
月桂冠(yuè guì guàn):2011年から現地生産をしている大手銘柄。現在中国では普通酒一升瓶の1商品のみが生産されており、日本料理店や小売店などで手に入る。
ビール/啤酒(pí jiǔ)
日本のビールは明治時代に欧州からやってきたビールメーカーによって技術が入れられ、日本産の商品もぞくぞくと登場することとなりました。舶来物だった当初から数年後には一般大衆も楽しめるものに驚くべき速さで発展しています。
現在日本ではクラフトビールがブームで、千を超える銘柄が販売されています。大手ビールメーカーとしては、アサヒ、キリン、サントリー、サッポロがあり、中国でも輸入ビールのほか、前2社は中国産商品も販売しています。一般的に日本のビールは中国のブランドよりも濃い味わいであることが多く、日本料理を中心とした飲食店や量販店で全中国の消費者にも愛好されているのは中国の啤酒の項目でも紹介した通りです。
<つっつんの独断と偏見で記す中国で買える日本ブランドビール3種>
朝日超爽(zhāo rì chāo shuǎng):アサヒビールが北京で製造している「スーパードライ」。日本の味とは多少異なるものの「ビール=爽快さ」ととらえる中国の消費者には受けています。
麒麟一番搾(qí lín yī fān zhà):日本でも人気の一番搾りは広東省珠海市で生産されています。アサヒよりは味が濃い目なのは日本と同じ、ECでも人気の商品です。
冲绳奥利恩(chōng shéng ào lì ēn):日本でも知る人ぞ知る沖縄ブランド「オリオンビール」。オフラインで買えるところは限られますが、爽快感を売りに市場を広げています。
焼酎/烧酒(shāo jiǔ)
日本でのブームから海外へ
麦、芋、米など穀物などの原料を使って作られる日本の焼酎は蒸留酒の一種で、起源は諸説ありますが、タイなど東南アジアの諸国から琉球(沖縄)を通って九州へもたらされたというのが一般的です。俳句では夏の季語で、古来より暑気払いに飲用されることがありました。各地の地酒として醸造され、全国的な広がりは見られませんでしたが、1990年代初頭、ゼロカロリーで健康的な酒類という謳い文句がブームに火をつけ、以降さまざまなブランドが林立するようになっています。
現在中国でも沿岸の一線都市の日本料理店を中心に販売がされており、一部の地元愛好家から徐々に市場に根付きつつありますが、清酒との区別がつかない消費者も多く、画期となる広がりにはなお課題が残している状態です。ブランドとしては、芋焼酎の霧島、麦焼酎のいいちこ、米焼酎の白岳などが有名ブランドで、中国でも沿岸部の一線都市を中心に販売されています。
「島の心」を海外へ
また、焼酎の一種である泡盛を中国で知る人は、かなりのお酒好きかもしれません。泡盛はおもに日本の沖縄で生産される米焼酎で、タイ米を使って醸造されます。その歴史は古く、琉球王朝初期の14世紀にすでに史書に登場しています。
薩摩藩の琉球征伐後、江戸時代の日本にももたらされ、泡盛の蒸留技術は日本の焼酎造りにも大きな影響を与えました。沖縄の地酒としてながらく地元で飲まれていたものでしたが、ここ20年来は沖縄観光ブームも影響もあり、本土でもとくに沖縄料理店にはなくてはならい酒類となっています。現在沖縄には50弱の酒蔵があり、その味わいを競っています。ブランドとしては、久米仙、瑞泉などが中国で販売されています。
<つっつんの独断と偏見で記す!中国で買える日本の焼酎3種>
薩摩白波(sà mó bái bō):九州鹿児島県にある薩摩酒造の芋焼酎。コクのある味わいで中国でもファンを増やしており、中国でも日本料理店や日系小売店でもよく見かけられます。
神之河(shén zhī hé):これも薩摩酒造が造る麦焼酎。「カンノコ」と読みます。ウィスキーに似た琥珀色と香り、味わいが特徴的です。
白岳(bái yuè):くまモン(熊本熊、xióng běn xióng)が中国でも人気な熊本県米焼酎。日本酒酵母を使ったすっきりとした味わいが人気です。
RTD(Ready to Drink)
最後に、日本のRTD(Ready to Drink)飲料も紹介します。読んで字のごとく、購入してその場で飲めるという意味のリキュール類で、缶入りや小型の瓶入りが多く、フレーバーを加えた果実味や炭酸酒類が一般的です。3~5度といった低アルコールのものが多く、各社で若者の低アルコール化に合わせた商品開発が行われています。
2021年度の調べでは14年連続で売上が前年を上回り、成長著しい市場となっています。主な商品カテゴリーとしては、ハイボール、酎ハイ、レモンサワーなどさわやかな味わいと軽いアルコール感で今後も成長が見込まれるカテゴリーです。これを受けて中国リキュールの項でも紹介したRIOなど現地ブランドがRTD商品を開発して消費者を獲得しており、近年は競合他社の参入も相次いで中国でも拡大市場の趨勢を見せています。
<つっつんの独断と偏見で記す!中国で買える日本のRTD3種>
麒麟氷結(qí lín bīng jié):日本でロングセラーの缶チューハイ。日本におけるRTDの先駆け的存在です。近年中国に進出後、大都市の日系スーパーを中心に売り上げを伸ばしています。
麒麟本榨(qí lín běn zhà):原材料は果汁とアルコールのみというのが売りのリキュール。果汁の味がしっかり楽しめ、味わいの種類も豊富。これからの伸びが楽しみなRTD。
-196度:サントリーのフルーツフレーバー缶チューハイ。グレープフルーツ、桃、白ブドウなど多様な味が楽しめ、711(柒壹壹、セブンイレブン)や全家(quán jiā、ファミリーマート)など日系のコンビニで浸透してきています。
日中両国の多様な酒文化に思いをはせて
以上、日中2か国の酒類について駆け足で紹介して来ました!
ことほど左様に両国には多くの酒類があり、また、それぞれ起源や歴史、現在の市場状況などはそれぞれに違いがあり、近年お酒を楽しむシーンはますます多様になってきています。
現在中国の大都市では今回紹介したお酒に触れるのはそれほど難しいことではありません。
ぜひ身近なシーンで日中の多様な酒文化に思いをはせながら、グラスを、盃を傾けてくださいね!それではまた次回!
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つっつん
北海道真狩村出身。2003年、大学院在学中に日中友好協会の奨学生として北京外国語大学に1年留学。リクルートなどを経て、現在は日本の酒メーカーの中国総経理。中国駐在10年目。座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。趣味はカラオケ、能楽、飲み歩き。大阪大学文学部卒。同大学院文学研究科修了。
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