【中国語】住/在东京?在东京/住?【介詞】なのか【補語】なのか?
みなさん、突然ですが「彼女は東京に住んでいます」は中国語で次のどちらになるでしょう?
- 她住在东京。
- 她在东京住。
(動詞を青で、“在”フレーズを赤にしています)
この文で述語は動詞の“住”(住む)ですが、“在东京”(東京に)のフレーズの位置が異なっています。
どちらが正しいのでしょうか?
正しいというより、意味の違いはどのようなものなのでしょうか?
この違いを考える上で、“在东京”を介詞フレーズと見るか、補語フレーズと見るかということである程度見通しがよくなります。
※例外や説明の一貫性の問題はありますが、理解の補助線として参考にしてみてください。
介詞フレーズ“在〜”は基本、動詞の前
一般的に、介詞フレーズは、動詞の前に置くという認識を持っている学習者が多いのではないでしょうか?
下記の通り、基本ルールはそのようになります。
介詞は「前置詞」とも言います。英語の前置詞と似ていますが,中国語の場合,介詞フレーズ全体は動詞の連用修飾語になりますから,語順は動詞の前に置かれます。
介詞 + 目的語 動詞
我 {在 图书馆}看 书。
(私は図書館で本を読みます。)
上記の例文で言えば、図書館という場所で本を読むという行為をする、というような意味にとれます。
なので、「(✗)我看书在图书馆」と言えば間違いになります。
動詞の前に“在”の介詞フレーズを置くことで、動詞の行為を行う場所を表すというのはわかりやすいですね。
結果補語としての“在〜”
“在”を動詞の後ろに置く場合、(介詞フレーズではなく)結果補語のフレーズとして捉えることがてきます。
この場合、「動詞+“在”+場所」の基本的な意味は、「動作の結果、その結果がその場所(”在”〜)にくる」となります。この結果の場所を、動作の着点や帰着点と呼ばれます。
例えば、
- 自行车放在棚子里。 →自転車は小屋の中に置いてある。
- 请把你的名字写在这儿。 →名前をここに書いてください。
- 她把教科书放在桌子上。 →彼女は教科書を机の上に置く(置いた)。
③「(◯)她把教科书放在桌子上」を「(✗)她在桌子上放教科书」としてしまうと、おかしくなります。前述の通り、動詞の前に“在”のフレーズを置くと、その場所で動詞の行為をするという意味に取られ、「机の上で、教科書を(どこかに)置く」のようになってしまいます。
この違いは、意図的に使い分けることもあります。例えば、「请在这儿写。」といえば、「この場で書いてください」の意味になりますし、「请写在这儿。」といえば「ここに書いてください」となります。
また、“了”、“过”、“着”のアスペクト助詞がある場合、“在”のフレーズは動詞の前に置かなければなりません。例えば、①「自行车放在棚子里」は、「(✗)自行车放着在棚子里」ではおかしくなり、「(◯)自行车在棚子里放着」という語順になります。
このように「動詞+“在”+場所」の語順で使われる動詞は限られています。動詞の意味に、帰着点を含む動作があることがポイントになりそうです。
例:
- 站(立つ): 他站在那里。(彼はそこに立っている)
- 躺(横になる): 他躺在床上。(彼はベットに寝ている)
- 摆(並べる): 你把这盆水仙摆在那边桌子上。(このスイセンの鉢をあちらの机の上に置きなさい)
- 挂(掛ける): 一轮明月挂在树梢。 (梢(こずえ)に明月が掛かっている)
- 出生(生まれる):他出生在一九九四年。
- 安排(手配する):演唱会安排在四月份。
- 扔(投げる): 我把垃圾扔在垃圾箱里。(私はごみをごみ箱に捨てた)
- 坐(座る): 她坐在椅子上。(彼女は椅子に座った)
- 聚(集まる): 聚在一处。 (一箇所に集まる)
**
市販教材では最も詳しい部類に入る文法書『中国語わかる文法』によると、次の文をどう分析すべきかの考え方が説明されています。
他坐在椅子上(彼はいすに座っている)
本書の掲げる中国語教育のガイドラインによると、“坐/在椅子上”のように補語“”のフレーズとして捉えるのではなく、“坐在/椅子上”と分析して“坐在”を動詞、 “椅子上”をその目的語として捉える方針のようです。
おそらくその方が一貫した分析ができるということなのでしょう。これ以上、説明はないですが、興味のある方は参考にしてみてください。
住/在东京?在东京/住?どっち?
では、冒頭の質問について考えてみましょう。
「私は東京に住んでいます」は中国語で次のどちらになるでしょう?
- 她住在东京。
- 她在东京住。
これまで、“在”のフレーズを介詞フレーズとみなすか、結果補語のフレーズとみなすか、というポイントを見てきました。
介詞フレーズとして、“在”のフレーズを動詞の前に置く場合、動詞の行為を行う場所を意味し、一方、結果補語のフレーズとして、“在”のフレーズを動詞の後に置く場合は、動作の結果、その結果がその場所(”在”〜)にくることを示します。そして、後に“在”を置く動詞は、意味に帰着点を含む動作がある動詞に限られます。
では、“住”(住む)の場合はどうでしょうか?
結論、前後どちらにおいても大差ありません。
これは、“住”という動詞が状態を表し、帰着点を含む動作が含まれないからと言えそうです。
ただ、一般的には、次のように動詞の後に置くほうが自然のようです。
- 她住在东京。
最近出版されたタイトルがど真ん中の『中国語とはどのような言語か』によると、
「她住在东京。」のほうが恒常的で、一方の「她在东京住。」は一時的な滞在のニュアンスがあると説明しています。前者の場合、住む結果として「東京」にいることが強調され、後者の場合は、「住む」という動詞に焦点があたるので一時的な動作のようになるようです。
本書では、「時間順序原則」や「連動文」というキーワードでこの辺りの意味の違いを詳しく説明しているので興味のある方は読んでみてください。
なので、
「彼女は東京に住んでいます」を中国語で言う場合、基本的には「她住在东京。」の語順で言うべきと覚えておきましょう。
ただし、意図的にニュアンスの違いを意識する場合は別です。
- 我今天在横滨住。(私は今日横浜に泊まります)※普段は東京に住んでいるが、出張で横浜に来た場合など
- 我现在住在横滨。(私はいま横浜に住んでいます)※普段、横浜に住んでいる場合
以上、動詞の前後の“在”フレーズについて説明しました。
※例外や説明の一貫性の問題はありますが、理解の補助線として参考にしてみてください。
HARU
兵庫県出身。同志社大学卒業。卒業後、食品メーカーで商品開発や中国事業に携わる。多くのプロジェクトで通訳・翻訳として貢献。自身の躓いた語学経験を多くの学習者に還元したいという想いでPaoChaiで中国語学習コーチとなる。新HSK6級。通訳案内士。好きな言葉は「為せば成る為さねば成らぬ何事も」。趣味は自転車で街を探索すること。温泉めぐり。ランニング。
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