【中国語】「多吃了」と「吃多了」の違いは?動詞による相性が大事

語法・表現・フレーズ

「他多吃了一个」と「他吃多了一个」は、似ているようで微妙に意味や焦点が異なります。

どちらも「彼は1つ多く食べた」という意味にはなりますが、中国語ネイティブの感覚では以下のような違いがあります。

「多吃了」と「吃多了」の違い

✅「他多吃了一个」

  • 直訳:彼は1つ多く食べた
  • 構造:「多」は動詞の前に置かれて、動作の回数や量が多いことを強調。「多」は形容詞ですが、単語によってはこのように状語(連用修飾)ができることがあります。
  • ニュアンス:

     →「予定や基準より1個多く食べた」ことにフォーカス

     →「食べる」という動作の回数が増えたことに注目している

📌 例文:

  • 他本来吃两个,但他吃了一个。

     → 彼は本来2つ食べる予定だったが、1つ多く食べた(=3つ食べた)。

✅「他吃多了一个」

  • 直訳:彼は1つ多く食べてしまった
  • 構造:「吃多了」は「吃(食べる)」と「多」という結果補語(多)が合わさり、結果的に食べすぎたという意味なります。
  • ニュアンス:

     →「食べ過ぎた」ことに焦点がある

     →「多すぎたこと」による後悔や驚き、意外性を含むことがある

📌 例文:

  • 他吃了一个,肚子都疼了。

     → 彼は1つ食べ過ぎて、お腹まで痛くなった。

⚠️ まとめると:

フォーカス ニュアンス
他多吃了一个 食べた量が予定より多いこと 客観的に「多く食べた」
他吃多了一个 食べ過ぎたという結果や後悔 主観的に「食べすぎたかも」

🔍 補足:「他吃多了」だけでも「食べすぎた」という意味になります。「一个」が加わると、「基準より1つ多かった」という具体的な量が加わる感じです。

「多住了」と「住多了」の違いは?

では、同じような構造の中国語「我在那里多住了几天」と「我在那里住多了几天」の違いも見てみましょう!
 

「我在那里多住了几天」と「我在那里住多了几天」は、似ているようでニュアンスや語順が少し異なり、中国語ネイティブにとってはどちらが自然かも変わってきます。

🔶 我在那里多住了几天

✅ 意味:

「私はそこで数日長く滞在した

(=予定より、または通常より多くの日数泊まった)

✅ ニュアンス:

  • 多住」は、動詞の前に「多」を置いて「住(泊まる・滞在する)」という動作が多く行われたことを強調
  • 「多住了几天」=何日か多く泊まった
  • 自然でよく使われる表現

📌 例文:

  • 本来打算住三天,后来觉得不错,多住了几天

→ 本当は3日泊まる予定だったが、気に入ったので数日延長した

🔸 我在那里住多了几天

🚫 意味は通じるけれどやや不自然

この文は文法的に完全に間違いとは言えませんが、中国語ネイティブはほとんど使いません。

🚨 なぜ不自然?

  • 「住多了」という語順が中国語の自然な文法パターンからずれている
  • 「吃多了」「喝多了」などのように、「多了」が動詞の結果補語になるパターンはありますが、「住」+「多了」はあまり聞き慣れません
  • 特に「住多了几天」という形は、語順がこなれておらず、「ちょっと変な感じ」がします

✨ まとめ

意味 自然さ 備考
我在那里多住了几天 何日か多く泊まった 最も自然で標準的
我在那里住多了几天 同上(意味は近い) 不自然、避けた方が良い

「多+動詞+了」と「動詞+多+了」は常に使えるのか?

では、「多住了」パターンの応用として、他の動詞(看・买・学 など)を使った自然な例文と、間違いやすい語順の例も含めてまとめます。
 

「多+動詞+了+数量」ののパターンは「予定より多く~した」「~を追加でやった」という意味になり、とてもよく使われる表現ですが、「動詞+多+了」は動詞がかなり限られます。

① 多看了

📚 意味:予定より多く見た/追加で見た

✅ 自然な例文:

我昨天晚上多看了两集电视剧

→ 昨日の夜、ドラマを2話多く見た

❌ 不自然な例:

我昨天晚上看多了两集。(✗ 違和感あり)

② 多买了

🛍️ 意味:予定より多く買った

✅ 自然な例文:

我去超市的时候多买了几个苹果

→ スーパーに行ったとき、リンゴを数個多く買った

❌ 不自然な例:

我去超市买多了几个苹果。(✗ 不自然)

③ 多学了

📖 意味:予定より多く勉強した

✅ 自然な例文:

今天我多学了半个小时的汉语

→ 今日は中国語を30分余分に勉強した

❌ 不自然な例:

学多了半个小时。(✗ 普通は使わない)

✅ よく使う他の動詞でも可能

動詞 意味 自然な使い方の例
吃(食べる) 多吃了一个 一個多く食べた
喝(飲む) 多喝了两杯 2杯多く飲んだ
说(話す) 多说了一句 一言多く言った(=余計なこと言った)
做(する) 多做了三道题 問題を3問多く解いた
写(書く) 多写了一段话 段落を1つ多く書いた
拍(撮る) 多拍了几张照片 写真を何枚か余分に撮った
形式 自然さ 意味
✅ 多+動詞+了+数量 「多く〜した」
❌ 動詞+多了+数量 意味不明や不自然になりやすい

「動詞+多+了」はいつ使える?

では、「動詞+多+了」はいつ使えるでしょうか?

基本的に使える動詞は限られています。

➡️ 基本的には不自然 or 通じにくい

➡️ 一部の動詞では文脈によって使えるが、意味やニュアンスが変わることがある

🔍 動詞の前「多吃了」vs 動詞の後「吃多了」:どう違う?

冒頭でも説明した例で再度確認しましょう。

◉ 動詞の前に「多」→ 「多く行った」という客観的・数量的な意味

「どれくらい多くやったか」に注目

(=「予定より増えた数量」に焦点)

例:

多吃了一个

→ 彼は1個多く食べた。

(=基準より1個多い

◉ 動詞の後に「多了」→ 「やりすぎた」という主観的・程度的な意味

「過剰」「やりすぎ」「後悔」のような感情も含む

例:

吃多了

→ 食べすぎた。

(=全体的に過剰

吃多了一个

→ 彼は1個食べすぎた

(※意味は近いが、やや曖昧)

🔄 いろいろな動詞ごとの違い・使えるか?

動詞 多+動詞(前置) 動詞+多了(後置) 解説
吃(食べる) ✅ 多吃了一个包子 ✅ 吃多了 前者は数量、後者は過剰の感覚
喝(飲む) ✅ 多喝了一杯酒 ✅ 喝多了 同上。後者は「飲みすぎた」
看(見る) ✅ 多看了两集剧 △ 看多了(※抽象的) 看多了=見すぎて疲れた、など
说(言う) ✅ 多说了一句话 ✅ 说多了 说多了=余計なことを言った
做(する) ✅ 多做了两道题 △ 做多了(不自然) 数量の話には前置が適切
学(学ぶ) ✅ 多学了半小时 △ 学多了(不自然) 学多了はあまり言わない
形式 意味
多吃了(前置) 「予定より多く食べた」 我多吃了一个。
吃多了(後置) 「食べ過ぎた」 我吃多了,肚子疼。
多说了一句 「一言多く言った(=余計な一言)」 你多说了一句。
说多了 「話しすぎた」 我今天说多了,嗓子疼。
  • 「多吃了」などの前置型は、数量の増加(何個多い、何分多い)を具体的に述べる時に使います。
  • 「吃多了」などの後置型は、「やりすぎた」「やりすぎて後悔してる」ような感覚的・結果的なニュアンスが出ます。
  • 動詞によっては後置型が不自然になる(「学多了」「做多了」など)
 

✅「動詞+多了」が自然な代表的な動詞一覧

「動詞+多了」型が自然な動詞もある

❌ ただし、すべての動詞に使えるわけではなく、自然な使い方は限られる

以下のような動詞では、「V + 多了」の構文は自然で意味も明確です:

動詞 例文 意味・自然さ
吃(食べる) 我吃多了。 食べすぎた(◎)
喝(飲む) 他喝多了。 飲みすぎた(◎)
说(話す) 我说多了。 話しすぎた(◎)
买(買う) 我买多了。 買いすぎた/多く買いすぎた(◎)
拿(持つ) 他拿多了。 多く持ちすぎた(○)
带(持ってくる) 我带多了。 多めに持ってきた(○)
做(する) 我做多了。 やりすぎた/多くやった(△〜○)※文脈次第

以下のような動詞では、「V + 多了」はあまり使われず、不自然に聞こえることが多いです:

動詞 不自然な例 理由・備考
学(学ぶ) 我学多了(✗) 通常は「多学了」や「学了很多」で表現
看(見る) 我看多了(△) 一部では使うが、「疲れた」「目が痛い」など含意が必要
写(書く) 我写多了(△) 書きすぎた、には使えるが不自然に感じる人もいる
走(歩く) 我走多了(△) 意味は通じるが「歩きすぎた」なら「走了太久」が自然
条件 「V+多了」が自然になるか?
行為の量が目に見える/物理的に増える ✅ 例:吃、喝、说、买、拿、带
抽象的・内面的行為で量が曖昧 ❌ or △ 例:学、想、信、等
文脈で「過剰・疲れ・後悔」などの感情的帰結がある △ 条件付きで可
動詞 「多V了」(前置) 「V多了」(後置) ネイティブ感覚
どちらも自然。意味は違う
「学多了」は違和感。多学了◯
どちらも使えるが、意味に差がある
文脈次第。前置の方が明確
文脈があれば通じるが不安定

🔚 結論まとめ

  • 「V+多了」は、すべての動詞に使えるわけではない(限られた動詞のみ可能)
  • 物理的・数量的な動詞(吃、喝、说など)には自然に使える
  • 抽象的・感情的・学習系の動詞には前置「多V了」のほうが自然
  • 不安なときは「多+V+了+数量」で使うのが安全で正確!

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いかがでしたか?

「多吃了」と「吃多了」のように、中国語では語順が変わるだけで意味やニュアンスが微妙に変わる表現がたくさんあります。特に「多」や「了」の位置は、実はネイティブ感覚に直結する重要ポイント!

この記事では、さまざまな動詞での使い分けや自然な言い回しも紹介しました。動詞によっては「多+動詞」の形が自然なもの、「動詞+多了」が使えるものと分かれていますので、文脈に応じて適切な表現を選べるようになれば、あなたの中国語力は一段とレベルアップするはずです。

ぜひ、実際の会話や作文で意識して使ってみてくださいね!

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tad

千葉県出身、東京育ち。貿易関係の会社で10数年ほど勤務後、5年の中華圏駐在経験を活かして独立。現在は、翻訳や通訳などを中心にフリーで活動中。趣味はゴルフ。好きな食べ物は麻辣香锅。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。中国語検定準1級。HSK6級。

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