【完全ガイド】中国語における外来語の翻訳方法とは?|音訳・意訳・混合型の違いを豊富な例で解説

グローバル化が進む現代、中国語にも英語・日本語・フランス語などの外来語(外来词 wàiláicí)が数多く取り入れられています。
しかし、中国語ではアルファベットをそのまま使うのではなく、「音」や「意味」を漢字で表現する独特の翻訳方法が発達しています。
この記事では、外来語の翻訳方法を体系的に整理し、実例を交えてわかりやすく解説します。
目次
① 音訳(音译 yīn yì)|発音を再現する方法
音訳とは、外来語の「発音」に近い音を漢字で表す翻訳方法です。
意味よりも音を優先し、聞こえが似ていることを重視します。
📘代表例:
英語原語 | 中国語表記 | 読み方 | 備考 |
---|---|---|---|
coffee | 咖啡 (kāfēi) | カーフェイ | 英語の発音を再現 |
sofa | 沙发 (shāfā) | シャーファー | “sofa”の音から |
pizza | 披萨 (pīsà) | ピーサー | 音を優先 |
chocolate | 巧克力 (qiǎokèlì) | チャオクーリー | 発音とリズム重視 |
taxi | 的士 (díshì) / 出租车 (chūzūchē) | 的士は広東語音訳 | 地域差あり |
📍ポイント:
- 音の近さを重視し、意味は重視しない。
- 一部は当て字として文化的な意味も込める(例:可口可乐=おいしくて楽しい)。
- もともとは翻訳よりも音写(transliteration)に近い発想。
② 意訳(意译 yì yì)|意味を翻訳する方法
意訳は、外来語の「意味」を中国語で表現する方法です。
語の持つ概念・機能を重視して、わかりやすい漢字語を作ります。
📘代表例:
英語原語 | 中国語表記 | 意味 | 備考 |
---|---|---|---|
software | 软件 (ruǎnjiàn) | “soft”+“ware” | 意味を翻訳 |
computer | 计算机 (jìsuànjī) | “計算する機械” | 直訳的構成 |
skyscraper | 摩天大楼 (mótiān dàlóu) | “天を摩するビル” | 詩的な表現 |
电子邮件 (diànzǐ yóujiàn) | “電子の郵便” | 機能説明型 | |
smart phone | 智能手机 (zhìnéng shǒujī) | “知能を持つ携帯電話” | 日常語化済み |
📍ポイント:
- 科学技術・行政・経済分野で多用される。
- 「外来語を聞いただけで意味がわかる」利点。
- 明治期の日本語翻訳語を採用した例(哲学、经济、科学など)も多数。
③ 音訳+意訳(音意结合)|音と意味の融合
音訳と意訳のハイブリッド型。
ブランド名や商品名などで、「発音の近さ」と「ポジティブな意味」を両立させたい場合に使われます。
📘代表例:
英語原語 | 中国語表記 | 解説 |
---|---|---|
Coca-Cola | 可口可乐 (kěkǒu kělè) | 「可口=おいしい」「可乐=楽しい」音+意味の融合 |
Microsoft | 微软 (wéiruǎn) | “micro=微” “soft=软” 意味も含む |
谷歌 (gǔgē) | 音が近く、意味は「谷の歌」=響きがよい | |
Lego | 乐高 (lègāo) | “楽しく高く積む”+発音類似 |
📍ポイント:
- 音と意味を両立した「ブランド翻訳」に最適。
- 消費者に覚えやすく、印象に残りやすい。
④ 直訳(直译 zhí yì)|構造をそのまま翻訳
語の構成や概念を、中国語の構造にそのまま当てはめて翻訳する方法。
📘代表例:
英語原語 | 中国語表記 | 備考 |
---|---|---|
Internet | 互联网 (hùliánwǎng) | “互いに連結するネット”の直訳 |
Nuclear energy | 核能 (hénéng) | “核”+“エネルギー” |
Social media | 社交媒体 (shèjiāo méitǐ) | 機能に基づく構成 |
Credit card | 信用卡 (xìnyòngkǎ) | 直訳だが自然な語感 |
📍ポイント:
- 政府やメディアの公式訳語でよく使われる。
- 文脈の説明力が高い。
⑤ 借訳(借译 jiè yì)|他言語からの造語の再利用
他言語(特に日本語)が作った翻訳語を、中国語が「借りて使う」パターン。
実は現代中国語に多く存在します。
📘代表例:
元の言語 | 中国語表記 | 備考 |
---|---|---|
philosophy(英→日)→哲学 | 哲学 (zhéxué) | 日本の造語を逆輸入 |
economy(英→日)→经济 | 经济 (jīngjì) | 日本語「経済」由来 |
socialism(英→日)→社会主义 | 社会主义 (shèhuì zhǔyì) | 西洋思想語を経由輸入 |
📍ポイント:
- 明治期に日本で作られた「翻訳語」が、中国語でも公式採用。
- 近代中国語の形成に大きな影響を与えた。
翻訳方法まとめ表
方法 | 中国語名 | 特徴 | 代表例 |
---|---|---|---|
音訳 | 音译 | 発音を重視 | 咖啡、沙发、披萨 |
意訳 | 意译 | 意味を重視 | 软件、计算机、智能手机 |
音+意融合 | 音译+意译 | 音と意味の両立 | 可口可乐、微软、谷歌 |
直訳 | 直译 | 構造を対応 | 互联网、信用卡 |
借訳 | 借译 | 他言語の造語を再利用 | 哲学、经济、科学 |
コラム:中国語に入った日本語由来の外来語
明治時代、日本が欧米語を翻訳する中で作った新語(翻訳語)が、中国語にも広く普及しました。
📘例:
- 哲学(philosophy)
- 经济(economy)
- 科学(science)
- 社会(society)
- 革命(revolution)
これらは今や「純中国語」として自然に使われており、日本語由来だと知らない中国人も多いほどです。
まとめ:音・意味・文化の三位一体が中国語外来語の魅力
中国語の外来語翻訳は、単なる「翻訳」ではなく、
音の美しさ・意味の明快さ・文化的な響きを調和させた独自の言語芸術です。
特に「可口可乐」「微软」「谷歌」などは、
翻訳が成功したことでブランド価値そのものを高めた好例と言えます。

tad
千葉県出身、東京育ち。貿易関係の会社で10数年ほど勤務後、5年の中華圏駐在経験を活かして独立。現在は、翻訳や通訳などを中心にフリーで活動中。趣味はゴルフ。好きな食べ物は麻辣香锅。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。中国語検定準1級。HSK6級。
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