漫画翻訳者が実践!【中中辞典】で日本語に頼らず中国語コンテンツを楽しむ勉強法

勉強法・学習メソッド

 中国語漫画翻訳者のもりゆりえです。仕事で日常的に、中国語の漫画のセリフを日本語に翻訳しています。

  翻訳で私が最も注意していることは、中国語のセリフのニュアンスを損なわないこと。それはキャラクターの感情をきちんと読者に伝えるためです。

 そのためには、日本語を介さず中国語からダイレクトに意味を理解する必要があります。そしてそれができれば、中国語の漫画のみならず、小説や映画などを中国語で楽しめるようになるのです。

 では、どうすればそれが実現できるのでしょうか?

 今回は「中国語のコンテンツを原文で楽しめるようになる、単語、成語学習法」を皆さんにご紹介します。

 まず本記事は前編として「中中辞典の活用法」を、お届けします。

 「日本語を介さずに、中国語を理解する」とは?

 中中辞典の具体的な活用法に入る前に、「日本語を介さずに中国語を理解する」とはどういうことなのかをご説明します。

 まずは、下の図をご覧ください。

 結論からお話すると、①ではなく②のように、中国語を見たり聞いたりしたとき、すぐ対象をイメージするということです。

 ①と②の違いは、大熊猫(中国語)とパンダの絵(意味)の間に、日本語を介するか否かだということが、お分かりいただけると思います。

 では①と②それぞれのパターンで中国語を理解した場合、ニュアンスの捉え方にどのような違いがあるのでしょうか。私の翻訳業務での実体験を例に挙げながら、ご紹介します。

日本語を介して中国語を覚えると…?

 まずは、日本語を介して中国語を理解する方法の実例です。

 漫画翻訳の仕事を始めたばかりの頃の私は、下の写真のような中国語→日本語の形のメモをよくとっていました。

 私は高校の第2外国語の授業で、初めて中国語を学び始めました。そのときに行っていた、ノートの左側に中国語、右側に日本語を書いて単語を覚えるという方法を、長年変えることなく続けていたのです。

 そしてそこで使用していたのも、やはり昔と同じく中日辞典でした。

 <中国語を見ると、すぐさま中日辞典で日本語を調べて、ノートにメモしていました>

 しかしこの方法で仕事を続けていくうち、あることに気がつきました。せっかく調べた単語や成語も、しばらく時間が経つと内容を忘れているのです。

 私は昔から辞書をひく際に、調べた言葉に線を引くようにしています。そうすると、勉強の履歴が一目で分かるからです。仕事中辞書を引くと、線のひかれている言葉にしばしば出くわしました。

 また、確認のために辞書をひくことも頻繁にありました。しかし私はそのときも、「使用頻度が少ないから、忘れやすいんだ」、「何度も辞書をひいているうちに覚えるものなんだろう」とあまり疑問に思わず、しばらく日本語訳のメモを取り続けていました。

中中辞典で調べてみると…あれ、覚えやすい!

<手のひらサイズの中中辞典。小さくて軽量、携帯もしやすく、隙間時間の調べ物にも◎>

 あるとき何気なく、家にあった中中辞典を使って意味を調べてみました。すると、中日辞典を使っていたときよりも、ぐっとニュアンスをつかみやすくなったように感じました。さらに記憶にも定着しやすくなったのです。

 それからは自然と、中日辞典よりも中中辞典の出番が多くなりました。今は拼音を調べるとき以外は、ほとんど中中辞典を使って調べています。

<中中辞典に書かれていた説明文を、ノートにメモしています>

 なぜ日本語訳のメモを取っていたときよりも、理解力や記憶の定着が向上したように感じたのでしょうか。

 私はそれこそが、「日本語を介さず、直接中国語で中国語をを理解した」からだと考えています。最初にパンダの図で挙げた②のパターンです。

理由①語句の中の漢字を使って説明されている

 上の写真は、最近仕事中にとったメモの一部です(走り書きで読みにくいですが、許してください)。

 メモの上段に書かれている成語、「yíjiànrúgù)」の意味を見てみましょう。

 中日辞典、中中辞典に書かれた内容を、それぞれ書き出してみました。以下のふたつの文章を見比べて、どのような違いを感じるでしょうか。

 

  • 中中辞典:「第面就朋友以一样,形容情投意合。」
  • 中日辞典:「初対面なのに古くからの知り合いのように意気投合する。」

 言語が違うだけで、書いてあることはほぼ同じですね。しかし中中辞典の説明文には、成語を構成する漢字が多く使われているのが、お分かりいただけると思います。

 中国語の単語や表現は、しばしば日本語に比べて具体的、説明的だと言われています。ならば、その意味をわざわざ日本語に訳すより、直接中国語の説明で理解する方が、ずっと効率的で覚えやすいですよね。

理由②知らない漢字も、説明文から意味を推測しやすい

 上記メモの上段、「一见如故」は、漢字の並びから何となく意味を推測できるかもしれません。

 しかしその下「乔迁(qiáoqiān)」はどうでしょうか。

 同じようにそれぞれ中中辞典、中日辞典で意味を書き出してみましょう。

 

  • 中中辞典:「迁于乔木。本来是说鸟儿从深谷飞出迁移到高达的树上。后来用作敬辞,祝贺人搬到入新居,晋升职位或改善境遇等
  • 中日辞典:「(よい場所へ)転居する、栄転する。→祝辞として用いることが多い。

 ここでもし、中中辞典を使わずに中日辞典だけで意味を調べていたら、「なぜ転居したり栄転することを‟迁乔”というのか」という発想には、なりにくいと思います。

中国語の説明文を読んでも、分からないときは?

 しかし、ここでひとつ疑問に思われるかもしれません。

 もし中中辞典の説明文を見たときに、意味の分からない単語や漢字が出てきたら、どうすればよいのでしょうか。

 そのときは全体の文章を読みながら、まず意味を推測してみましょう。その上で意味が分からないときは、再度中中辞典で確認していくのです。

 例えばここで、説明文中に出てきた「乔木」について、見てみましょう。

  • 迁:①迁移 ②变动转变
  • 乔木:树干高大,且住干与分枝区别明显的大本植物。如松,柏,榆等。

 このように意味を中中辞典で調べていくとことを繰り返すと、徐々にシンプルな単語表現にいきつきます。

 その結果「迁乔」が「飞到大树上」を意味することが分かるのです。さらにそこから「転居や栄転にまつわる祝辞」のイメージへ繋がることも、スムーズに理解できるのではないでしょうか。

 ここまで来れば、日本であまり馴染みのない「迁」と「乔」の漢字も、どのようなイメージで使われているのかが分かります。

 「迁乔」のニュアンスが、よりハッキリと実感をもって伝わるように感じませんか?

まとめ

 中国語の勉強を進めていくと、日本であまり馴染みのない漢字を目にしたり、ニュアンスのつかみにくい表現に触れることも増えてきます。

 そんなとき、すぐに中中辞典で調べることを習慣にすることをオススメします。漢字の持つイメージやニュアンスがぐっとつかみやすくなり、中国語で直接中国語を理解する力を養うことができるでしょう。

 そうすれば作品の世界観やキャラクターの心情がダイレクトに伝わり、作品をより一層楽しめますよ。

 中中辞典の活用、ぜひお試しください。

 次回は後編「画像検索編」をお送りします!

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もりゆりえ

広島県東広島市出身。尾道市立大学美術学科卒業。高校時代に読んだ漫画「封神演義」をきっかけに中国語学習を開始。大学卒業後中国に渡り、浙江大学に10ヵ月間の語学留学(2005年〜2006年)をする。留学中に、「第二届中国国際動漫画節」に参加。現在はフリーランスの中日漫画翻訳者として活動中。趣味は中国のマンガアプリでマンガを読むこと。

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