【中国語類義語辞典(シソーラス)おすすめの3冊】たった3千語で何でも表現できる単語学習法

勉強法・学習メソッド

中国語学習者のみなさん、類義語(類語)辞典を使ったことはありますか?

類義語辞典(シソーラス)とは、語形は異なりますが、同じような意味を持つ言葉(類語)をまとめた辞典のことです。例えば、「家」と「住宅」、「言う」と「話す」などです。

中国語類義語辞典(シソーラス)の一般的な使い方

中国語類義語辞典

一般的に類義語辞典は、何か文章を書くときに、同じ単語の繰り返しを避けたり、適切な単語が思い浮かばないときに利用されます。小説家や随筆家など文章のプロにとって必須なアイテムでしょう。

例えば、「声を出して言う」という意味であれば、「言う」「話す」「 発語」「申す」「云う」「物申す」「喋る」「発話」などが類語です。

たった3千語で言いたいことが言えるようになる単語学習法

さて、外国語学習者にとって、類義語辞典は学習の教材として使うことができます。

中国語を学習中のみなさんは、言いたいことを何でも中国語で言えたらいいなぁ、と考えたことは一度はあるのではないでしょうか?

しかし、学習者一人ひとり異なる「言いたいこと」を、各個人がリストやデータベースのようなものにまとめて作ろうとしたら大変です。

かといって、市販の単語帳を片っ端から覚えていくというのは気が遠くなりますし、会話教材で「空港」「会社」「お店」などの場面別で、対応しやすいやり取りを覚えていくだけでは、台本のない自由な会話やアドリブに対応できないことはすぐにわかるでしょう。

一体どれくらいの単語を覚えたら、言いたいことを一通り言えるようになるか?

そんなときに、1つの道筋を提示してくれるのが類義語辞典です。

普通の中日・日中辞典を全て覚えれば、言いたいことを言えるようはなりますが、あの分厚い辞書を使って何万語も記憶すると考えるだけで恐ろしくなります。ピンインや日本語の五十音順にならんだ辞書は、ただ網羅性があるのみで、表現の内容の観点からいえば、何も体系性や論理性がありません。中国語の中型辞書の見出し語は7〜9万語です。

そこで、類語辞典の出番です。中国語の類義語辞典では、この10万近い単語が意味により分類され、なんとその概念の総数は3000程度に集約されるのです。なので、この3千語だけ覚えてしませば(運用できるようになれば)、少し簡単、単純な表現に制限されてしまいますが、一通り言いたいことは全て言えるようになるのです。

3千も多いといえば多いですが、HSK5級が2500語ですから、そう考えると数年中国語を学んでいる学習者の方なら、手の届く範囲だと思えてくるのではないでしょうか。

中国語おすすめ類義語辞典3冊

中国語類義語辞典

このような単語学習の観点で、日本で手に入る日本語母語話者向けの中国語類義語辞典を3冊紹介してみたいと思います。

(どのような作業で類語辞典を作るのか、その手間と時間を考えると編者の方々に感謝の念しかありません。実際、後に紹介する辞書は30年もかかっているとのことです。。)

相原茂(編)『中国語類義語辞典』

まずは、2015年に出版さている相原茂(編)『中国語類義語辞典』です。以下、公式の説明です。

「語彙的な言語と言われる中国語。マスターのカギは微妙な類義表現の使い分けにあり
30年の歳月と執筆スタッフ40名による本格的類義語辞典
日本人学習者の立場に立った類義語を選択
500を超える類義語セットを弁別、解説
すべての例文にピンイン、訳付で、初級者からも使える
中国語の教育・学習に必須の工具書の誕生!」

こちらの類語辞典は、学習者が使用方法の判断に迷うようなときに参照する目的で編纂されています。全部で526の類義語セットを収録しており、各セットは2〜6語より構成され、取り上げられている語(句)は1179です。

ピンイン順で並べられており、例えば、de daoのところでは「得到」「 取得 」「获得」などどれを使ってもよさそうな類語の違いについて説明がされています。ある状況においては置き換え可能であること述べられたり、「「得到」は具体的な物や抽象的なことがらが手に入り、それが自分のものになること」などと説明されています。

相原茂(編)『中国語学習シソーラス辞典』

次は、2017年に出版された相原茂(編)『中国語学習シソーラス辞典』です。以下、公式の説明です。

「業界初の中国語シソーラス辞典。日本語インデックス1400余、中国語見出し語数は約11000語。
初級~中級者まで幅広く対応。スピーキングやライティングにおける類語の正しい使い分けに。
仕事で中国語のメールや文書を書く機会が多い人にとても便利。
語彙力増強に、会話力向上に、類義語研究に最適な辞典。」

この辞典の特徴は、日本語常用語1400余をインデックスにして五十音順に配列されており、日本語の単語で辞書を引きます。そして、その日本語の意味に相当する、あるいは近い中国語が列挙されています。巻末にピンインの音節アルファベット順の索引がついています。

例えば、「おいしい」で引くと、以下の単語がピニン、例文などともに記載されています。

「好吃,好喝,喝口,可口,鲜,鲜美,香,香甜」

先に紹介した単語学習の観点でいえば、ここから1つ覚えておけば、幅広く「おいしい」に対応できるということになります。

ただ、上海焼きそばを食べて「好喝」と言ったり、「好喝」と言ってしまう可能性もあるわけで、大意は伝わりますが、かなりサバイバルのための表現レベルになってしまうでしょう。

関西大学中国語教材研究会『シン式中国語学習シソーラス』

最後に紹介するのは2018年に出版された関西大学中国語教材研究会『シン式中国語学習シソーラス』です。以下、公式の説明です。

「語彙力とは何かというと、異なる事物の名前をたくさん知ること(語彙の広さ)と同じ事物の異なる名前をたくさん知ること(語彙の深さ)をあわせもつことである。語彙の広さは表現の可能性を提供し、語彙の深さは表現の的確さを保証する。本書は、中国語の常用語彙1万7000語以上を意味によって約3000のグループに分け、中国語学習の語彙集としてあるいは作文のための用語辞書としても利用できるように工夫されている。」

こちらの辞書は、まさに本記事で説明した効率的な単語学習を念頭に作られています。常用語1万7千の中から3307語が「代表語」が選ばれています。「代表語」とは例えば、说,开口,说明,讲,谈论,吱声,启齿,唠叨などの中から顔役となる語です。この場合、「说」が「代表語」となっています。代表語のピンイン順で引くことができます。

先の例「おいしい」の例でいえば、「好吃」は、「可口」と「香」の代表語のグループに出てきます。言い換えてもそこまで問題がない範囲で分類されているようなので、たしかに代表語だけ覚えていけば、効率的に言いたいことを一通り言えるようになりそうです。学習者が惜しむ労力を大幅に削減してくれそうです。

一方、例文が一切なく、代表語以外の単語にピンインがないのがネックです。これが解消されればとてつもない単語教材になる可能性があります。

まとめ

意外と誰からも教えてもらえないのが、類語辞典の使い方です。一般的には、文章を書くときには、様々な言い回しの中から適切なものを選ぶために参照するでしょう。

しかし、本記事でご紹介したように似た意味の単語であれば、代表的なもの1つだけ覚えていくという効率的な単語学習にも使えることがわかりました。何万語も、網羅的にたくさんの単語は覚えられない……。でも言いたいことは一通り言えるようになりたい、そんなとき、類語辞典があれば手間を大きく省いてくれるでしょう。

中国語に本気で取り組んでいる学習者のは、ぜひお手元に一冊置いてみて下さい。きっと大きな効率化につながるでしょう。

 

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冨江コーチ

東京都出身。早稲田大学国際教養学部卒業。中国ビジネス10年(日本のゲーム、アニメ等コンテンツの中国展開に従事)、中国在住5年(上海、南京)の経験を活かし、実践的な中国語学習のサポートをいたします。2016年から語学の道に転身。大学院で第二言語習得、言語、哲学の研究を行いながら、中国語と日本語を教える。趣味は、中国各地の麺類を食べ歩くこと。新HSK6級。復旦大学短期留学(2007年)。The Australian National University修士号、早稲田大学国際コミュニケーション研究科修士課程修了。

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