【中国語】可能補語と助動詞“能”の違いを解説!同じ「できる」どっちを使えばいい?
中国語には可能と不可能を表現する方法が2つあります。可能補語と助動詞“能”です。(助動詞ではなく、可能動詞と呼ばれることもあります)
どちらも「可能」の意味「できる」を表すため、その違いを理解するのが難しいです。
本記事では、どう異なるのか?使い分けなどを解説します。
目次
可能補語の作り方
「可能補語」とは、結果補語と方向補語から派生してできたもので,補語の表す結果が実現可能かどうかを表します。基本的に動詞と結果補語、方向補語、了(liǎo)、起(qǐ)の間に“得”を入れると、肯定形で「~できる」、“不”を入れると、否定形で「~できない」という意味になります。
いくつかの種類に分けられますが、本記事では以下4つに分けて説明します。
【可能補語①】「動詞」と「結果補語」の間に“得”か“不”を入れる
听 懂 (聞いて理解した(する))動詞+結果補語
👆ここには可能、不可能の意味はない
↓
- (肯定) 听得懂 (聞いて理解できる)
- (否定) 听不懂 (聞いて理解できない)
做 完 (やり終える(終えた))動詞+結果補語
👆ここには可能、不可能の意味はない
↓
- (肯定) 做得完 (やり終えることができる)
- (否定) 做不完 (やり終えることができない)
【可能補語②】「動詞」と「方向補語」の間に“得”か“不”を入れる
拿 起来 (持ち上げる)動詞+方向補語
👆ここには可能、不可能の意味はない
↓
- (肯定) 拿得起来 (持ち上げることができる)
- (否定) 拿不起来 (持ち上げることができない)
走 出去 (歩いて出ていく)動詞+方向補語
👆ここには可能、不可能の意味はない
↓
- (肯定) 走得出去 (歩いて出ていける)
- (否定) 走不出去 (歩いて出ていけない)
【可能補語③】動詞と「了(liǎo)」の間に“得”か“不”を入れる
「了(liǎo)」や次に見る「起(qǐ)」は、方向補語や結果補語ではありませんが、動詞とこれらの間に“得”か“不”を入れると可能補語になります。
以下2つの意味があります。
動詞+ 得/不 + 了①:量的に〜しきれる、〜しきれない
使い方の例を見てみましょう。
- 吃得了 =(食べる量として)食べられる
- 吃不了=(食べる量として)食べきれない
- 做得了=(仕事の量など)やりきれる
- 做不了=(仕事の量など)やりきれない
動詞+ 得/不 + 了②:可能性の面から可能かどうか
使い方の例を見てみましょう。
- 去得了(明日の飲み会などに)行ける
- 去不了(明日の飲み会などに)行けない
- 参加得了(飲み会などに用事がなく)参加できる
- 参加不了(飲み会などに用事があって)参加できない
※助動詞の「能」にも「都合」を表す意味がありますが、上の例1で「不能」としてしまうと強い禁止を表すため、間違いになります。ですので、都合を表す「能」を否定する場合は、可能補語の「了(liǎo)」を使って「〜不了」とします。
- 赢得了(相手は強いが)勝てる(可能性がある)
- 赢不了(相手は強いので)勝てない(可能性が高い)
【可能補語④】動詞と「起(qǐ)の間に“得”か“不”を入れる
「動詞」+「得/不」+「起」にも大きく2つの意味があります。
動詞+ 得/不 + 起①:負担能力や資格があり「できる」
1つ目の意味は、経済的、肉体的、精神的などの負担能力や資格があり「できる」「たえられる」という意味です。
- 这个书太贵了,我买不起(この本は高すぎて買えない)
経済的に負担能力がなくて買えないことを表しています。
- 鱼翅(yúchì)鲍鱼(bàoyú)什么的我可吃不起。(フカヒレやアワビなどは高価で私には食べられ ない)
動詞+ 得/不 + 起②:相手がその動作を受けるに値する、基準にかなう
2つ目は、相手がその動作を受けるに値する、基準にかなうという意味です。
次のように使います。
- 无谓的冒险举动称不起勇敢。(意味のない危険な行動は勇敢とは言えない)
- 看不起人的态度(人を見下した態度)
中国語の可能補語の否定
可能補語は肯定形と否定形の2種類がありますが、実際の中国語では否定形のほうが圧倒的によく使われます。可能補語の肯定形は通常、疑問文やそれに対する返答、反語文などの場合に用いられます。
可能補語の否定は、「動詞 + “不” + 補語」です。
例えば、
“来得了” の否定は “来不了”、
“去得了”の否定は“去不了” です。
ここで、可能補語の否定に関して、学習者がよく犯してしまう間違いを2つ紹介します。
よくある誤用①:過去を表すために「了」をつける
例えば、「私は聞いて理解できなかった」という過去の事実を中国語にする場合、どうなるでしょうか?
- (☓)听不懂了。
→上記の「听不懂了」は間違いです。
「听得懂」の「得」を「不」に変えて「听不懂」とするのは合っていますが、過去にするために語気助詞の「了」を最後においても過去にはなりません。語気助詞とは、そもそも過去の意味ではなく、「ある新たな状況になった」という変化の意味です。
中国語の可能補語を使って「〜することができなかった」と過去の否定を表現したいときは、「没」を使います。
「没」+「動詞」+「結果/方向補語」
先の「私は聞いて理解できなかった」であれば、次のようになります。
- (○)我没听懂。(私は聞いて理解できなかった)
以下の3つの文の違いを理解しましょう。
- 我听得懂(私は聞いて理解できる)※可能補語の肯定
- 我听不懂(私は聞いて理解できない)※可能補語の否定
- 我没听懂(私は聞いて理解できなかった)※結果補語の否定
よくある誤用②:結果補語の否定形を使うべきところで可能補語の否定を使ってしまう
別の角度からもう1つの間違いを紹介します。
「あなたのオススメの本、読んだけどわからなかった」を中国語にすると、
- (☓)你推荐的书我看是看了,看不懂。
上記の中国語は誤りです。
過去を表すには、可能補語の否定ではなく、結果補語の否定を使わなければなりません。
正しくは、
- (○)你推荐的书我看是看了,没看懂。
となります。
可能補語で過去の否定を表すには、
「没」+「動詞」+「結果/方向補語」
となります。
助動詞“能”との違い
上述のように,可能補語は主に否定形で用いられますので、「~できる」と肯定したいときには,可能補語よりも助動詞“能”を使って表します。
- a. 他翻译得了中文。(彼は中国語を翻訳できます)
このようなaの言い方もありますが、肯定なら以下のbの“能”を使ったほうが自然です。
- b. 他能翻译中文。(彼は中国語を翻訳できます)
では、「彼は中国語を翻訳できません」という中国語はどうなるでしょうか?
学習者は、一般的に以下のcのような作文をしがちです。
- c. 他不能翻译中文。(彼は中国語を翻訳してはいけません)
しかし、cの場合は、“能”の否定であり、「禁止されている」意味になります。
なので、能力として「翻訳できない」ことを表現するには、以下のdのようにします。
- d. 他翻译不了中文。(彼は中国語を翻訳できません)
同じ「できる」という意味でも、身につけている能力により可能、都合による可能、条件による可能、許可による可能などがあり、可能補語と“能”が意味する範囲が異なるため、このような使い分けが必要になります。
HARU
兵庫県出身。同志社大学卒業。卒業後、食品メーカーで商品開発や中国事業に携わる。多くのプロジェクトで通訳・翻訳として貢献。自身の躓いた語学経験を多くの学習者に還元したいという想いでPaoChaiで中国語学習コーチとなる。新HSK6級。通訳案内士。好きな言葉は「為せば成る為さねば成らぬ何事も」。趣味は自転車で街を探索すること。温泉めぐり。ランニング。
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