中国の買い物では必須?留学中に編み出した「値切り」のコツと楽しさを紹介!
こんにちは!中国語漫画翻訳者のもりゆりえです。日本では普段の食料品や日用品の買い物で、客側から積極的に「値切りの交渉」をすることはあまり一般的ではないと思います。しかし私が中国に留学に行った2005年頃、小さな個人商店や市場での買い物は、基本的に「値切り」をしてから商品を購入していました。
今回は、「中国でなぜ“値切り”の文化が根付いているのか」という私なりの考えと、「値切り」の際に私が実際によく使っていたフレーズ、そして「値切り」にまつわる印象的なエピソードを皆さんにご紹介します。
目次
私の考える、中国で「値切り文化」が根付いている理由
2005年~2006年の約1年間、私は浙江省杭州市で語学留学生として生活していました。日用品や食料品などは大学構内にある小さなスーパーや、大学の近所にある個人商店、市場を中心に買い物をしていました。そんな日々の買い物で私が感じた、中国に「値切り文化」が根付いている理由は、主に以下の4つです。
①「個数単位」での販売ではなく、「量り売り」が多い
②商品の品質の個体差が大きい
③自分の意見をハッキリと主張する人が多い(国民性?)
④そもそも売る側が「客に値切られる」ことを前提に、高めに値段設定をしていることが多い
例えば野菜や肉などの、生鮮食品が売られている市場を例にとって、上記の要素をそれぞれ見てみましょう。
私が中国にいた2005年頃の市場では、どこも量り売り(①)が中心でした。日本のスーパーのように、ほとんど同じ大きさや重さの果物や野菜を個数単位で売ったり、パック詰めで肉や魚を売られる光景はあまり見られず、それぞれの客が望む分量を購入するスタイルが多かったのです。また、果物や野菜は大きさや重さ、ときには新鮮さもマチマチで、日本に比べて商品の個体差が大きい(②)印象も受けました。
例えば「500gで2元」のリンゴがあったとします(ちなみに平均的なリンゴの重さは250g~350gほどと言われています)。ここで355gのリンゴを買うとしたら1.42元(1元4角2分:1元=10角=100分 ※ただし「分」は実際に通過として使用されることは、ほぼない)という端数が出ます。このように量り売りの場合は、「個数単位」での販売では発生しない、「端数2分をどうするか」という問題が生じやすくなるのです。商品を購入した際に端数を値切るのは、オーソドックスな値切りの方法のひとつと言えるでしょう。
また「商品の品質の個体差が大きい(②)」と、「自分の意見をハッキリ主張する(③)」という要素が合わさると「値段が自分の求める品質に見合わない(=高い)から安くしてくれ」としっかりと主張する人も自ずと多くなるでしょうし、店もそのようなお客さんが来ることを見越して「高めに値段設定(④)」していることも少なくありません。
このように「量り売り」という販売方法の習慣や、大きさや重さ、品質の個体差が大きいこと、そして「自己主張をハッキリする」という中国の人の特徴が合わさって、値切り文化が中国に深く根付いているのではないかと、私自身は考えています。
<中国人の友人の里帰りに同行させてもらったとき、路上で売られていた山盛りの芋>
「値切り」で感じた、中国語が通じる嬉しさと楽しさ
私が中国に留学中、実際に値切りでよく使用していたのは、以下のフレーズです。
- 多少钱?:いくらですか?
- 便宜一点,可以吗?:安くしてくれませんか?
- 太贵了。:高すぎます。
- 那我就不买了。:じゃあ買いません。
- 给我这个。:これください。
- 谢谢。:ありがとう。
上のフレーズを見ていただくと分かるように、値切りに使うフレーズには、初級の中国語で出てくる表現が多く見られます。私は日本で中国語検定3級をとってから留学に来たにもかかわらず、中国到着後1~3か月の頃は、私の話す中国語は現地の中国の人にほとんど通じませんでした。話せば「听不懂(分からない)」と言われ、相手の話す中国語もほとんど聞き取れず、毎日必死に勉強しながらも悶々とした気持ちで過ごしていました。
そんな私に唯一「中国の人と中国語で会話できている」と実感させてくれたのが、毎週末通っていた杭州市内の夜市での買い物です。私が行っていた夜市は、杭州市中心部のビル群の一角にある、ちょっとした広場で開かれていました。個人経営の露店が10店舗ほど並び、食器やアクセサリー、洋服やCDなどの日用品や雑貨を中心に様々な物が売られていました。
最初は軽い気持ちで足を運んだ夜市でしたが、一度値切りが成功すると、すっかり嬉しくなって毎週買い物に訪れるようになりました。値切りのフレーズは簡単で短い上、使う単語の種類も大抵決まっています。また値切りの際に店員さんから返って来る内容は値段に関することが多いので、数字さえ聞き取れれば、なんとかやり取りすることができました。中国語にすっかり自信をなくしていた当時の私でも、臆することなく中国語で話しかけることができたのです。今思い返せば、値切りに成功したという嬉しさもさることながら、「中国語で中国の人と会話のキャッチボールができた」という喜びの方が大きかったように思います。
こうして私は、上記のような値切りフレーズを覚えては、毎週末夜市のお店の人と値切り交渉をすることで、日頃なかなか満たされない「中国語で会話したい」という思いを満たしていました。
私の値切り方:まず「店の言い値の半額」に値切ってみる
<よく足を運んでいた夜市のアクセサリーショップで、値切って買ったブレスレット>
毎週末足しげく通っていた夜市の中でも、特に私がよく行っていたお店は、とあるアクセサリー販売の露店です。そこには20元前後で私好みのアクセサリーや雑貨が多く売られていました。私はそこの店主の女性と毎回値切り交渉をしてから、5元前後のお手頃な商品をひとつだけ買って帰るのが恒例となっていました。以下に私がよくやっていた値切りの方法を、ご紹介しましょう。
まずは商品を一通り見ます。そして買いたい商品があったら、先にご紹介した値切りフレーズを使って値段を確認し、「便宜一点,可以吗?」と聞きます。そこで店側が「可以」と言って値引きに応じてくれそうだったら、店の言い値の半額程をこちらから提示していたのです(例えば、言い値が7元の商品を3.5元に値切る)。
すると大抵店主は「不会吧~,小姐(あり得ないよ、お姉さん)と」と返してきますので、すかさず私が「那我就不买了(じゃあ買いません)。」と言って立ち去る素振りを見せます。すると私が示した金額にほんの少し上乗せした金額(先の例だと4元~4.5元程)を提示してくれるので、その額を支払うというのが、お決まりの流れでした。こちらの本来の希望額より敢えて安めの額で交渉を始め、本来の希望額が店側の妥協した金額に近くなるような流れを作っていたのです。
ただし、どんな品物に対してもこの方法が通じるわけではありませんし、どこの店でも値引きができるわけでもありません。デパートなどでは基本的に値引きは難しいでしょうし、どの程度値引きに応じるかは、その店の店主や商品の価格帯によっても変わるでしょう(私の友人は、同じ夜市に出店していた別の店で茶器のセットを値引きしようとして「うちの茶器はそんな安物じゃない!」と怒られてしまった経験があるようです…)。最終的には店主の表情などを見ながら、お互いの落としどころを探り、納得したら購入するというのが一番いい方法でしょう。その上で何度か店に通いなじみの客になれば、さらに気軽にまけてもらえる場合もあるかと思います。
ときには言い値で買ってみるのもアリ?
ある日いつものように夜市のアクセサリー販売の露店に行ったところ、いつも笑顔で迎えてくれる店主の女性の表情が沈んでいたことがありました。言葉数も少なく、明らかに元気がありません。ちょうど私も留学に来て3か月が過ぎた頃で、ようやく中国語で簡単な会話のやりとりができ始めたところでしたが、彼女に気の利いたひと言をかけられる自信は、ありませんでした。
そこでその日私は、10元程のアクセサリーを値切らずに買うことにしました。そしてその際彼女にひと言「下周我还会再来买啊(来週また買いに来るよ)。」とだけ伝えて帰りました。貧乏留学生だった私にしては、少し奮発した買い物でしたが(10元は、当時の私の1日の食費くらいの値段です)、いつもまけてもらっているお礼の意味や、これでなんとなく元気になってくれたらいいな、という気持ちもあっての行動でした。いつも安い商品を値切ってくる、がめつい(!)留学生が全く値切ってこなかったことに拍子抜けしたのか、彼女は少し驚いていたようにも見えました。
翌週少し心配しながらその店をのぞくと、店主の女性はいつも通りの笑顔で迎えてくれました。そこで私は安心して、いつものような値引き合戦をしながら買い物を楽しむことができました。
まとめ:「値切り」を店との関係づくりの入り口に
これはあくまで私の個人的な意見ですが、値切りの目的は安く品物を手に入れることだけではなく、言葉のやり取りを通じて、買い物という行為そのものを楽しむための入り口でもあると考えています。自分にとって値段が高いと思えば値切りますし、多少割高だと思っても買い手がその金額を払いたいと思えば、それは買い手にとって適正な価格と言えるのではないでしょうか。そしてときには「多少割高でも買いたい/買ってもいい」と思えるのは、普段値切りなどのコミュニケーションを通して、店主と人間的な繋がりを感じていなければできないことでもあるように思います。
皆さんももし中国に行った際、値引きができそうな雰囲気のお店を見つけたら、ぜひ値引きのフレーズをうまく使って、お店の人とコミュニケーションをとってみてください。
きっと日本ではなかなか味わうことのできない、新しい買い物の楽しみ方ができると思います。
もりゆりえ
広島県東広島市出身。尾道市立大学美術学科卒業。高校時代に読んだ漫画「封神演義」をきっかけに中国語学習を開始。大学卒業後中国に渡り、浙江大学に10ヵ月間の語学留学(2005年〜2006年)をする。留学中に、「第二届中国国際動漫画節」に参加。現在はフリーランスの中日漫画翻訳者として活動中。趣味は中国のマンガアプリでマンガを読むこと。
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