【中国語】自動詞と他動詞とは?3つの分類法と6つのポイント
みなさま、こんにちは!中国語学習コーチのHARUです。
中国語の動詞は、
目的語(宾语)をとれるものととれないものに分けられ、前者を他動詞(及物动词)、後者を自動詞(不及物动词)といいます。
と簡単に考えている学習者のみなさん!
それは間違いです!
以下、自動詞と他動詞の分類が難しいこと、そして、それらを分類することが学習にどのように生かせるかを検討します。
目次
【中国語】自動詞・他動詞の定義は難しい!?3つの分類法
自動詞・他動詞の定義は何でしょうか?
一般的には英語のように後に目的語をとれない動詞を自動詞、取れる動詞を他動詞としますが、中国語の場合は次のような理由から英語のように単純に定義することが難しいです。
- 動詞の後に様々な種類の目的語がある
- 自動詞であっても目的語(準目的語)を伴うことがある
- 他動詞であっても本来の目的語が動詞の前にくることがある
中国語の自動詞と他動詞の分類は、何を基準にするかによって異なります。以下、代表的な3つの分類法を紹介します。
1.意味による分類
意味による基準とは、その動詞が他の事物(目的語)に何らかの影響を及ぼすかどうかということで、影響を及ぼすものを他動詞、影響を及ぼさないものを自動詞、と分類します。
この分類は19世紀から20世紀の中国語文法の早期に使用された基準で、冒頭の他動詞(及物动词)、後者を自動詞(不及物动词)の名前の由来となっています。
しかし、この分類法では、何をもって「影響を及ぼす」とするか明確な基準がないため、問題が多いようです。
2.形式による分類
次は形式的な判断基準です。後に目的語をとれる動詞を他動詞、とれない動詞を自動詞とします。つまり、目的語を置いたら、「何かおかしい?」とネイティブが思うようなものは自動詞である、という分類法です。
しかし、目的語を取れるか取れないかだけで分類すると、次のような問題が発生します。
- A 他在前排坐着。(彼は前の列に座っています)
- B 前排坐着几个人。(前の列に数人の人が座っています)
上の例文のように、Aは自動詞として目的語はとらないが、Bのように動作主を目的語にすることができる場合があります。
そうすると、“坐”を自動詞として分類することができなくなります。
3.意味と形式による分類
そこで、第3の分類法として、その折衷案である「意味と形式による分類」があります。
この考えでは、基本的には目的語をとるか否かで自動詞と他動詞を分けますが、そこに意味的な条件もつけて、「他動詞とは主に“受事”(受動者)目的語をとれる動詞を指す」「自動詞とは目的語をとれず、“受事”(受動者)目的語をとれない動詞を指す」としています。
しかし、今度はまた意味的分類法と同じように、“受事”の意味的な基準をどこに置くかが問題となってしまいます…
参考:木村裕章「中国語における自動詞と他動詞の分類について」
【中国語】自動詞・他動詞の6つのポイント
さて、中国語の自動詞と他動詞ですが、「目的語をとれるかとれないか」というような簡単な話ではないことがわかりました。
以下、さらに一見分類できたように思える自動詞、他動詞の中でも様々な特徴がありますので、6つのポイントを見ていきましょう。
1.後に全くどんな成分もとらない自動詞は多くない
一般的に自動詞は後に目的語をとりません。その中でも、動詞の後に全くどんな成分も取らない動詞はあまり多くありません。
数少ない例が以下です。
- 日本胜利了。(日本は勝利した)
- 学生们给我送行。(友人たちが私を見送ってくれる)
もし目的語を後ろに置く場合は、別の動詞を使う必要があります。
例えば、「胜了美国队。」(米国チームに勝った)、「送客人。」(客を見送る)
2.目的語をとることはなくても後に数量補語をとる
自動詞の多くは、目的語をとることはなくても、後に数量補語をとる例が多々あります。
- 她躺了一会儿。(彼女はしばらく横になった)
- 休息五分钟。(5分休憩する)
- 病了三个人。(3人病気になった)
最後の「病了三个人。」のように、数量詞を伴う目的語のみに限りとることができる自動詞もあります。
※この自動詞の後の数量補語を準目的語として扱う考え方もあります。
3.離合詞も自動詞
離合詞も自動詞として理解されます。
- 小李跟她结了婚。(李君は彼女と結婚した)
上の文は、「✗小李结婚她了。」のように動詞の後に目的語を取れないので、介詞フレーズ(跟她)で情報を追加しています。
離合詞自体がすでに動詞+目的語の構造を単語内部にもっていますから、さらに目的語を取れないのは理解できます。(ただし、既に動詞+目的語になっているので、自動詞と考えるのは違和感もありますね)
その他にも、毕业,咳嗽,游泳など沢山あります。
4.自動詞と他動詞が同じ
次の例のように自動詞と他動詞が同じ単語のものもあります。
- 她笑起来了。(彼女は笑い出しました)
- 你别笑她。(彼女を笑うな)
- 美国队败了。(米国チームは負けました)
- 日本队败了美国队。(日本チームは米国チームを破りました)
- 山田来了。(山田が来ました)
- 来一杯咖啡。(コーヒーを一杯持ってきて)
5.他動詞はいつでも目的語が必要というわけではない
次の例のように他動詞“看”の後に目的語がなくても文脈でわかれば問題ありません。
- 你看见(她)了吗(あなたは彼女を見かけましたか?)
- 看见了。(見かけました)
6.必ず目的語が必要な他動詞もある
逆に次のように必ず目的語が必要な他動詞もあります。
- 她姓高。(彼女の姓は高です)
- 我叫山田。(私は山田といいます)
- 她成为了网球选手。(彼女はテニスプレイヤーになりました)
考えてみればわかりますが、「〜という姓だ」「〜という名前です」という意味であれば「〜」の部分がないと意味的におかしいですね。
【中国語】自動詞と他動詞を知って何になるのか?
さて、ここまで自動詞と他動詞の3つの分類法や6つのポイントを見てきました。
そもそも、自動詞と他動詞を分けることによって中国語学習の何の役に立つのでしょうか?
以下、抑えておくべきポイントを考えてみました。
日本語の発想で目的語となる語を動詞の後におけるかどうか
先の例でもあったように、
「◯◯と結婚した」と言いたい場合、日本人だと「✗小李结婚她了。」のように動詞の後に結婚相手を目的語として置いてしまうという誤用をしがちです。正しくは「◯小李跟她结了婚。」。こういった誤用をしないように、新しく覚える単語が自動詞か他動詞を概念的に把握しておくのは役に立つでしょう。
そもそも、「水开了」(水が沸騰した)のような自動詞の表現は、目的語の入る余地がないので迷うことはないはずです。
動詞と目的語の意味的関係
また、動詞と目的語の関係も要注意です。
先ほども出した例ですが、自動詞と他動詞で意味が異なる下記のような例は、単語を覚えるときに意味を理解しておくべきです。
- C 美国队败了。(米国チームは負けました)
- D 日本队败了美国队。(日本チームは米国チームを破りました)
Cの場合は、主語が「負けた側」ですが、Dでは主語が「勝った側」で目的語が「負けた側」となります。
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以上、中国語の自動詞と他動詞について考察し、その知識がどのように学習に役立つかを考えてみました。
みなさまの参考になることを願いますm(_ _)m
HARU
兵庫県出身。同志社大学卒業。卒業後、食品メーカーで商品開発や中国事業に携わる。多くのプロジェクトで通訳・翻訳として貢献。自身の躓いた語学経験を多くの学習者に還元したいという想いでPaoChaiで中国語学習コーチとなる。新HSK6級。通訳案内士。好きな言葉は「為せば成る為さねば成らぬ何事も」。趣味は自転車で街を探索すること。温泉めぐり。ランニング。
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