【中国語】場所の表現で “在”と“里”は必ず必要なのか?
みなさん、こんにちは!
中国語で作文するとき、場所を表現する際に “在”と“里”は常に必要なのか?と迷うことはありませんか?
なぜなら、
たくさん中国語を見たり聞いたりしていると、必ずしも“在”や“里”がない文を目にするからです。
目次
“里”(方位詞)はいつ必要か?
まずは“里”から見ていきます。
日本語では、「教科書は本棚にあります」「冷蔵庫に一本の牛乳があります」と言えますが、中国語で同じ内容を“有”構文や“在”構文で表す場合、“书架”(本棚)、 “冰箱”(冷蔵庫) をそのまま使うことはできません。
◯教科书在书架上。(✗教科书在书架。)
◯冰箱里有一瓶牛奶。(✗冰箱有一瓶牛奶。)
本棚や冷蔵庫はあくまでも場所ではなく物体なので、場所を表す文成分として使うには“上”や“里”など(「方位詞」という)をつけて場所を表す成分にする必要があります。
では、どんな単語でも場所を表現するためには方位詞が必要なのでしょうか?
方位詞が必要かどうか、それは下記A〜Cの3つのタイプに分かれます。
A:方位詞が不要なもの
このタイプは、地名、国名などの場所を表す固有名詞や固有性のある名詞で、方位詞をつけてはいけません。場所が唯一の場所に特定できるものです。
◯上海有许多河流
✗上海里有许多河流
他にも次のような単語があります。
→日本,中国,上海,武汉,富士山…
B:方位詞が省略できるもの
次のタイプは、場所の意味を含んでおり、生活の中である特定の場所を指すもので、方位詞があってもなくても大丈夫です。つまり、省略可能です。
◯办公室有一台电脑。
◯办公室里有一台电脑。
他にも次のような単語があります。
→学校,有句,商店,公园,游泳池,车站,宿舍,家…
C:方位詞が必要なもの
最後は、固有性や場所の意味が弱く、名詞や抽象名詞、身体部位の名詞などで、方位詞が必要になります。省略できません。
◯书架上摆着许多词典。
✗书架摆着许多词典。
他にも次のような単語があります。
→桌子上,墙上,床上,路上,房子里,路上,街上,身上,腿上,手里…
**
以上、
文中で場所を表す成分として単語を使う場合、上記のA〜Cの3つのパターンに応じて“上”や“里”などの方位詞が必要になることを理解しておきましょう。
“在”が必要かどうか
さて、
上記の方位詞の考察では主に“有”構文や“在”構文を見てきましたが、
場所の表現といえば、我在车站出口等你(私は駅ので出口であなたを待ちます)のように介詞フレーズ(※)で使うことが思い浮かびます。
※在(介詞) + 车站出口(場所の単語)→ 駅の出口で
この場合、“在”は必要です。✗我车站出口等你のように省略できません。
ではなぜ、先の方位詞のところで見た例文には“在”がついてなかったのでしょうか?
ちなみに、先の例文の冒頭に“在”をつけても文は成り立ちます。(若干場所が強調されるようですが、基本的な意味は変わりません)
- ◯上海有许多河流。→◯在上海有许多河流。
- ◯办公室有一台电脑。→◯在办公室有一台电脑。
- ◯书架上摆着许多词典。→◯在书架上摆着许多词典。
“我在车站出口等你”では、省略できない“在”が、なぜ“(在)书架上摆着许多词典”のような表現では省略できるのでしょうか?
この素朴な疑問に、ぶち当たったとき橋本 陽介『中国語とはどのような言語か』で一定の解答を出していますので、紹介させていただきます。
前提:主語の主体的動作を表す場合は“在”が必要
主語の後に場所を表現するときは、“在”は必要になります。
つまり、“我在车站出口等你”の“在”は省略できない。
次のように書かれています。
主語の主体的な動作を表す場合、基本的には「主語 + 在 + 場所 + 動詞句」の形式が使われるということのようである。(P137)
場所表現でも“在”が不要な2つの場面
さて、ここから本書で場所表現でも“在”が不要な2つの場面を考察しています。
1.存現文
存現文(存在文+現象文)のときは、“在”がなくても成り立っています。
- 存在文:书架上摆着许多词典(本棚にたくさんの辞書がある)
- 現象文:天边出现了一道彩虹(空に虹が出現した)
※ある場所、時間において、人や物が存在している様子を述べる文を「存在文」と言い、ある場所、時間に何かが出現したり消失したりする現象を表す文を「現象文」と言います。
2.「その場所の描写、もしくは説明をしている文」
さて、ここが本書のオリジナルな考察のポイントです。
本書では存現文以外にも以下の3つの例文を挙げ、“在”が不要な場合の条件を検討しています。
- 窗外风景很好。(窓の外は景色がよい。)
- 街上交通并没有恢复。(道では交通がまだ回復していなかった。)
- 公园里花木繁盛,人们清歌曼舞,不以北方公园冷清肃静。(公園では花や木が生い茂り、人々が歌い踊り、北方の公園のようにひっそりと静かではない)
結論、著者は「ある場所を舞台として、そこの状況がどうであるかを述べるような主述文が続く場合にも“在”は必要ない」とし、さらにまとめて「その場所の描写、もしくは説明をしている文」は“在”がなくても成り立っていると一般化しています。
(さらに踏み込みと、著者は「主語の主体的動作を表す場合は“在”が必要」な理由は、そもそも介詞フレーズの“在”が動詞性を残しており、「〜にいて、〜をする」という構造がまだ残っているから、と推測している)
是非、詳しく知りたい方は本書を手にとってみましょう。他にも興味深い考察がたくさんあります。
**
以上、“在”と“里”がいつ必要なのか?について、かなり見通しがよくなったのではないでしょうか?
“里”については、場所として使う単語がA〜Cのどのパターンか見極めればその必要性を吟味できますし、“在”については文中で介詞フレーズで使うときは必須で、冒頭に場所が来る存現文や「場所の描写、もしくは説明」のときは不要、と理解しておきましょう。
ただ、頭で考えていては限界があるので、学習者の方はできるだけ沢山の自然な中国語に触れて語感を養っていきましょう。
作文するときは、気をつけてみてください!
HARU
兵庫県出身。同志社大学卒業。卒業後、食品メーカーで商品開発や中国事業に携わる。多くのプロジェクトで通訳・翻訳として貢献。自身の躓いた語学経験を多くの学習者に還元したいという想いでPaoChaiで中国語学習コーチとなる。新HSK6級。通訳案内士。好きな言葉は「為せば成る為さねば成らぬ何事も」。趣味は自転車で街を探索すること。温泉めぐり。ランニング。
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