【中国語】「把構文」の特徴を図式で解説!6つの間違いから理解

語法・表現・フレーズ

 こんにちは!中国語漫画翻訳者のもりゆりえです。今回は、「中国語【把構文】の間違った使い方6種類から見る【把構文】の特徴」を『外国人学汉语难点释疑』を参考に、皆さんにご紹介したいと思います。

「把構文」で表現できることとは?

「把構文」は、中国語で把字句(bǎ zì jù)」と呼ばれる「特定の事柄の原因となる行為/動作および発生の変化により受ける影響や結果」を表す構文です。具体的に見ていきましょう。

例1)他咖啡碰洒了。

訳)彼はコーヒーをぶつけてこぼした。

明確な事柄──咖啡 行為──碰 結果──洒了

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P232より

 こちらを図式化すると、以下のようになります。

<『外国人学汉语难点释疑』P232より>

 同じように次の例文を見ていきましょう。

例2)他书从包里拿出来。

訳)彼は本をカバンから取り出した。

特定の事柄──书 行為──拿 結果──出来

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P232より

 こちらも図式化すると、以下のようになります。

<『外国人学汉语难点释疑』P232より>

 では、以下の図式を「把構文」を使って表すと、どのようになるでしょうか。「明確な事柄」、「行為」、「結果」がどれにあたるかを考えてみてください。主語は「他」です。

<『外国人学汉语难点释疑』P232より>

 各要素に分けて、文章を組み立て終えたでしょうか?では答え合わせです。

特定の事柄──杯子  行為──打  結果──碎了

杯子打碎了。

訳)彼はコップを叩き壊した。

「把構文」のイメージが、なんとなくつかめてきたでしょうか?

「把」を使う場合、使わない場合

 まずは以下の例文を見てください。

(1)他买到了那本书。

(2)那本书(他)买到了。

(3)他那本书买到了。

『外国人学汉语难点释疑』P233より

 日本語に訳すと(1)~(3)のいずれの文章も「彼はその本を買った」という意味になります。では「把」を用いる場合と用いない場合では何が違うのでしょうか。

 一般的に中国語では、すでに知っている事柄を文章の前方に、強調したい事柄を文章の後方に置く特徴があると言います。そのため、上記の例文(1)(2)(3)の強調したい事柄は、(1)は「那本书」、(2)と(3)は「买到了」となります。

 では同じ「买到了」を強調したい文章で、「把」を用いない(2)の文章と、「把」を用いる(3)では一体何が違うのでしょうか。

 結論を先に述べると「どんな本か」を説明した文章が(2)であり、彼がどんな人か」が説明されているのが(3)の「把」を用いた文章です。

 例文を用いて、もう少し詳しく見てみましょう。まずは(2)の「把」を用いない場合です。

A:那本书他还想借吗?

訳)その本を彼はまだ借りたいのですか?

B:不,那本书他已经买到了,不用借了。

訳)いえ、その本はすでに彼が買いました。借りる必要はありません。

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P234より

 次に(3)の「把」を用いる場合です。

A:他怎么那么高兴?

訳)何故彼はそんなに嬉しそうなの?

B:是啊,终于那本书买到了,当然高兴了。

訳)そうなんですよ。(彼はその本を)とうとう手に入れましたからね。当然嬉しいでしょう。

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P234より

 このように、日本語では同じ「彼はその本を買った」という文章であっても、中国語では強調したい部分によって、語句を並べる順番や「把」を用いるか用いないかが変わってくると言えます。

「把構文」の間違い6パターン

 ではここからは、「把構文」の間違った文章6パターンを、例文と一緒に見ていきましょう。先程ご紹介した「把構文」の図式や、「把構文」に必要な要素を思い出しながら考えてみてください。

“他把杯子坏了。”

 先程、「把構文」には3つの要素が必要であると紹介しましたね。こちらの例文、“他把杯子坏了。”を先述した3要素に分けると、以下のようになります。

特定の事柄──杯子  行為──?  結果──坏了

 3要素に分けてみると、「行為」が見当たりません。こちらを図式化してみると、以下のような形になります。

<『外国人学汉语难点释疑』P236より>

 この「把構文」として不完全な文章を、正しい形にするには、足りない「行為」の要素を加える必要があります。よって正しい形は、以下のような文章となります。

杯子坏了。:訳)彼はコップを叩き壊した。

杯子坏了。:訳)彼はコップをぶつけて壊した。

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P236より

“他把杯子打。”

 こちらも同じく、「把構文」に必要な3要素に分けて考えてみましょう。

特定の事柄──杯子  行為──打  結果──?

 3要素のうち、「結果」にあたる部分が欠けていますね。こちらを図式化すると、以下のようになります。

 こちらを完全な「把構文」の文章にするには、足りない要素である「結果」や「影響」を加える必要があります。例えば以下のような形です。

杯子打破了。:訳)彼はコップを叩き壊した。

杯子打碎了。:訳)彼はコップを叩き壊した。

杯子打坏了。:訳)彼はコップを叩き壊した。

杯子打在了地上。:訳)彼はコップを地面に叩きつけた。

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P238より

“他把一本书买到了。”

 最初に説明した「把構文」で表せる内容である、「特定の事柄の原因となる行為/動作および発生の変化により受ける影響や結果」を見てみると、“他把一本书买到了。”の文章にはその条件に該当しない部分があります。

 結論を申し上げると、文中の“一本书(1冊のある本)”が「特定の事柄」に該当しません。「特定の事柄」とは具体的には「確定されたもの」や「話し手の双方が了解済みのもの」である必要があります。

 では、こちらの“一本书”を「把構文」の条件に合う形にするには、どうすればいいのでしょうか。例えば、以下のような形にすることができます。

买到了。:訳)彼は本を買った。

那本书买到了。:訳)彼はその本を買った。

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P239より

 では、こちらと同じ考え方で“他说话说得很快。(彼は早口だ。)”を「把構文」を用いるとどのように変えられるでしょうか。例えば、以下のような形が考えられます。

那句话说得特别快。:訳)彼はその話を非常に早口で話した。

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P234より

“我把这本书看得懂。”

 こちらも「把構文」で表せる内容、「特定の事柄の原因となる行為/動作および発生の変化により受ける影響や結果」の条件にそぐわない部分があります。

 それは「動作および発生の変化により受ける影響や結果」の部分です。こちらの文章、“我把这本书看得懂。”の“看得懂”は、可能補語にあたり、実際に受けた影響や結果ではありません。

 そのため、こちらの文章を「把構文」の条件に合う形に変えると、以下のようになります。

这本书看懂了。:訳)私はその本が理解できた。

我没这本书看懂。:訳)私はその本が理解できなかった。

中国語例文は『外国人学汉语难点释疑』P240より

 ここではシンプルに、「“把構文”に結果補語は使えない」と覚えておくとよいでしょう。

 把……+动词+得/不+可能補語

“把饺子吃在食堂里。”

 例えば上の文章と同じ、「把+モノ+動詞+在+場所」の形である、“他把书放在桌子上。”という文章は、把構文として正しい形です。そのため、同じ構造である“把饺子吃在食堂里。”も、一見問題ないように見えるかもしれません。

 しかしこちらも、先程ご紹介した「把構文」で表せる内容、「特定の事柄の原因となる行為/動作および発生の変化により受ける影響や結果」と照らし合わせると、そぐわない部分があることに気づきます。

 ひとまず、こちらも「把構文」に必要な3要素に分けて考えてみましょう。

特定の事柄──饺子  行為──吃  結果──??(≠在食堂里)

 3要素に分けて考えてみると、「行為の結果」にあたる部分が“把饺子吃在食堂里。”では言及されていないことが分かります。

 同じ構造(「把+モノ+動詞+在+場所」)を持つ、“他把书放在桌子上。”の文章を図式化して見比べてみましょう。

<『外国人学汉语难点释疑』P241より>

「本を置いた結果、本が机にある」という、明確な行為と結果の関係が存在します。それを踏まえて、“把饺子吃在食堂里。”を図式化してみると、以下のようになります。

<『外国人学汉语难点释疑』P242より>

「餃子を食べた結果、食堂にいた」わけではありませんよね?「餃子を食べた結果」どうなるかと言えば例えば「腹に入る」が自然ではないでしょうか。こちら図式化すれば、以下のようになります。

<『外国人学汉语难点释疑』P242より>

 そのため「食堂で餃子を食べる」を中国語で表現したい場合は、“我在食堂里吃饺子。”となります。

“我把作业没交上去。”

「把構文」を否定する場合、「不/没/别」は「把」の前に置かれます。そのため、“我把作业没交上去。”を正しい形に修正すると、以下のようになります。

作业交上去。

『外国人学汉语难点释疑』P242より

また「時間詞」や「能願動詞」も同じように「把」の前に置かれます。

妈妈已经东西都准备好了。

应该作业交上去。

『外国人学汉语难点释疑』P243より抜粋

 以上をまとめると、以下のような形となります。こちらも「把構文」の形として、このまま覚えておけば便利です。

不/没/别+把+……

時間詞+把+……

能願動詞(能/要/应该/可以)+把+……

★★★

 いかがでしたか?中国語を学習し始めたばかりの方は、昔の私自身がそうであったように、「把構文」に苦手意識があったり、いまいち使いどころが分からないという方も、少なくないと思います。今回の記事が、そのような方たちのお役に立てれば幸いです。

参考文献:『外国人学汉语难点释疑』(P231~P244)

※引用文の赤文字、下線処理は全て筆者による

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もりゆりえ

広島県東広島市出身。尾道市立大学美術学科卒業。高校時代に読んだ漫画「封神演義」をきっかけに中国語学習を開始。大学卒業後中国に渡り、浙江大学に10ヵ月間の語学留学(2005年〜2006年)をする。留学中に、「第二届中国国際動漫画節」に参加。現在はフリーランスの中日漫画翻訳者として活動中。趣味は中国のマンガアプリでマンガを読むこと。

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