【中国語】母音と子音ではない?専門用語<声母、韻母、韻頭 (介音)、 韻腹 (主母音)、 韻尾 (尾音)>とは?

中国語発音

中国語の発音は一般的に、母音、子音、声調の3要素で考えられますが、中国音韻学ではより厳密な用語を使って発音を分析します。

【中国語】音節の基本構造「IMVE/T」

中国語は極めて明確な音節構造を持っています。音節は中国語の基本となります。

音節構造は、「IMVE/T」と定式化できます。

この式は、1音節が下記の5つの要素から成り立つことを意味しています。

  • I:音節頭子音(Initial)
  • M:介音(Medial)
  • V:主要母音(primary Vowel)
  • E:尾音(Ending)
  • T:声調(Tone)

I,M,E,Tはない場合もあります。一般的に「I」は「声母」(せいぼ。“声母”shēngmŭ)、

「MVE (/T)」は「韻母」(いんぼ。“韵母”yùnmŭ)と呼ばれます。ただし、Tは韻母とされることもありますが、T(声調)は声母も含む全体にかかるとみるほうがよいでしょう。

例えば以下は、「広」の発音はguǎng となり、構造は以下の表の通りとなります。

I:声母(音節頭子音)

いわゆる子音ですが、中国音韻学の用語では声母(音節頭子音)と言われます。

日本語と比較すると、中国語の子音には有声音と無声音の対立がありませんが、代わりに帯気音(「有気音」)と非帯気音(「無気音」)の対立があります。子音は、以下の21です。

b [p] p [ph] f [f] m [m]  
d [t] t [th]   n [n] l [l]
g [k] k [kh] h [x]    
j [tc] q [tch] x [sh]    
zh [ts] ch [tsh] sh [sh]   r [z]
z [ts] c [tsh] s [s]  

声母のない音節もありますが、実際には声門閉鎖音が現れることが多いです。

例えば、中国語「安」 /’an1/ では声母として/’/ (hの有声音素) があるとみなされ,韻母は/-an/ となり、この場合,介音はありません。

MVE (/T):韻母

介音(韻頭)

主要母音の前に付き,日本語の「拗音」的な作用を持ちますが、それよりも独立性が強く,かなりはっきり発音されます。

以下の3つの介音があります。

i u ü

介音のない音節もあります。またこれら3つの介音が、主要母音や尾音なしにそれだけで韻母を成す場合もあります。

主母音(韻腹 )

主母音としては低母音/a/と中母音/e/の対立が最も重要である。この他に高母音/ɨ/,及び/er/がある。

a o e

これらの実際の音は前後の介音や尾音等の影響によって異なります。特にeは音が変わりやすいです。

は異音が多い。/ɨ/は尾音と共起することがなく,また共起する子音も/zh/,/ch/,/sh/,/r/,/z/,/c/,/s/に限られる。ただ,介音の/i/,/u/,/ü/が単独で韻母を成す場合,それらをそれぞれ形式的に/iɨ/,/uɨ/,/üɨ/と分析することがある。/er/は常に単独で現れ,子音と共起することもない。

尾音(韻尾)

音節末で、主母音の後に付いて発音されます。介音より独立性が低くく、次の4つがあります。

i  u  n  ng

声調

それぞれの音節は常に「声調」と呼ばれる高低アクセントをつけて発音されます。

声調が違えば語彙も変わります。中国語の声調には、第一声<高平調>、第二声<上昇調>、第三声<降昇調~低平調>、第4声<下降調>、軽声とよばれる「ゼロ声調」に相当するものがあります。軽声は固有の高さを持たず、常に前の音節に付いて弱く短く発音されます。

介音,主要母音,尾音の組み合わせ

以上の介音,主要母音,尾音を組み合わせて韻母が構成されます。

実際には全ての組み合わせが使われるわけではなく、一定の規則に従った組み合わせしか存在しません。

a [a] ai [ae] au [ao] an [an] ang [aŋ]
ia [ia]   iau [iao] ian [ien] iang [iaŋ]
ua [ua] uai [uae]   uan/[uaɲ] uang [uaŋ]
      üan [yæn]  
e [ɤʌ] ei [ei] eu [ou] en [ən] eng [ʌŋ]
ie [ie]   ieu [iu] ien [in] ieng [iŋ]
ue [uo] uei [ui]   uen [un] ueng [oŋ]
üe [ye]     ün [yn] üeng [yŋ]
iɨ [i] uɨ [u] üɨ [y] er/[ɚ]

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以上、

中国語の音節構造「IMVE/T」を説明しました。

学習者の皆様は、シンプルに母音、子音、声調の3要素で考えれば良いと思いますが、音の変化などさらに深くより詳しく分析するには、1音節を下記の5つの要素で考えてみると良いでしょう。

  • I:音節頭子音(Initial)
  • M:介音(Medial)
  • V:主要母音(primary Vowel)
  • E:尾音(Ending)
  • T:声調(Tone)
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HARU

兵庫県出身。同志社大学卒業。卒業後、食品メーカーで商品開発や中国事業に携わる。多くのプロジェクトで通訳・翻訳として貢献。自身の躓いた語学経験を多くの学習者に還元したいという想いでPaoChaiで中国語学習コーチとなる。新HSK6級。通訳案内士。好きな言葉は「為せば成る為さねば成らぬ何事も」。趣味は自転車で街を探索すること。温泉めぐり。ランニング。

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