【中国語】形容詞述語文でなぜ“ 很 hěn ”が必要なのか?本質的な2つの理由を解説
英語で、形容詞を述語とした文を作ると、
He is tall. (彼は背が高い)
のようにbe動詞を使います。
また、同じく「He is Jack.(彼はジャックです。)」のような名詞を述語にした文でも、形容詞述語文と同様にbe動詞を使います。
つまり、英語では、形容詞の述語文でも、名詞の述語文でもbe動詞を使います。
中国語はどうでしょうか?
中国語では、形容詞を述語にした文は基本的に「主語 + “ 很 hěn ” + 形容詞」という構造になります。これを形容詞述語文といいます。
また、中国語では「彼は学生です」のような名詞を述語にした文は、「是shi」という動詞を使い、「他是学生」となります。なので、中国語で形容詞述語文を作るときに、be動詞を使う英語に引きずられて、“是”などを入れてはいけません。日本人がよく間違えるポイントです。
今日はこの形容詞述語文を作るときに必要な “ 很 hěn ” について、それがなぜ必要なのかを本質的に解説します。
目次
形容詞述語文でなぜ“ 很 hěn ”が必要なのか?
「今日は暑い」を中国語に翻訳すると「今天很热」となります。
今天=「今日」を意味します。
很=「とても」を意味します。
热=「暑い」を意味します。
ここで疑問が湧きます。
日本語に「とても」という意味はないのに、なぜ很=「とても」が入っているのでしょうか?
結論から言うと、
日本語に「とても」がなくても、形容詞述語文で「とても」を意味する“ 很 hěn ”が必要です。
なぜなのでしょうか?
以下、2つの観点で解説します。
理由1:比較・対照の意味が生じてしまうから
形容詞が述語になる場合は、“ 很 hěn ”に限らず普通は程度を表す様々な副詞と組み合わせて形容詞を述語の位置に置きます。
- 她的房间非常干净。(彼女の部屋はとてもきれいです。)
- 小陈的办法比较好。(陳さんの方法は比較的よいです。)
- 这碗拉面太咸。(このラーメンはしょっぱすぎます。)
- 这件裤子有点儿贵。(このズボンは少し高いです。)
これらのような副詞がなく、裸の形容詞を述語の位置に置いた場合(以下の「北海道冷」等)、比較・対照の意味が生じてしまい、基本的に文が言い切りになりません。
例えば、次のような例文ではの青字の文のような意味が示唆されてしまいます。
- 北海道冷, (北海道は寒い[が、東京は暖かい])
- 她好,(彼女は良い[が、彼は良くない])
上記のような非常、比较、太、有点儿などの副詞と組み合わせて用いれば、そのような比較・対照の意味はなく、文も言い切りの形になり成立します。
ただ、非常、比较、太、有点儿などの副詞にはそれぞれの意味があります。なので、それらを使った場合はもちろんその各々の意味が生じます。
では、「とても」でもなく「比較的」でもなく「少し」でもないただ単に「~だ」と言いたいときはどうすれば良いでしょうか?
そこで、純粋に形容詞の意味を伝えたいだけのときには,文を成り立たせるための飾りの“很”を形容詞の前に置きます。
この“很”は本来は「とても、非常に」という高い程度を表しますが、強く発音しない限りはそのような意味は表さず、ただ文を成り立たせるための一種のマーカーになっています。ただし、この“很”も、弱くではなくしっかり強く読むと「とても」という本来の意味を生じさせます。
- 今天很热。(今日は暑いです。)
- 他很胖。(彼は太っています。)
※弱く很を読めば「とても」の意味はないが強く読めば「とても」の意味になります。
理由2:言葉にはモダリティが必要
「今日は暑いなぁ」などと人が言葉を発するときは、一般的に「今日は暑い」という命題(事柄)と、「〜なぁ」のような嫌気が差ししてるようなモダリティ(心的態度)の組み合わせとなります。この組み合わせにより言葉が成立すると考えます。
その観点でいうと、客観的事実を述べるだけでは心的態度がなく、文が成立しません。成立するとすれば、他との比較・対照という心的態度が生じてしまいます。
では、ただ、「今日は暑い」という客観的事実だけを純粋に言うにはどうすれば良いのでしょうか?「今日は暑い」とだけ言ったとしても、誰かにその状況を共有して共感を求めるような態度があるはずです。
そういう場合は、程度副詞で「とても」を意味する“ 很 hěn ”をつけます。これをつければ、「暑い」ことを認識し、誰かと共有したいというような心的態度が生じることになり、無事、文は成立します。
しかし、「とても」というような程度を必ずしも表現したくない場合もあるでしょう。
そういうときは、“ 很 hěn ”を弱く発音すれば良いです。「とても」の意味がないまま、「今日は暑い」という文を成立させることができます。
形容詞述語文:否定や疑問では飾りの“ 很 hěn ”は不要
形容詞述語文の否定形
形容詞の否定は,前に“不”を置きます。
- 今天不热。(今日は暑くありません。)
上記の飾りの“很”を使うのは肯定文の場合です。否定形の場合は飾りの“很”を用いなくても文は成立します。
なぜなら、否定の判断は一種のモダリティと言えるからです。
また、否定形で“很”がある場合は,本来の高い程度を表します。
- 他不很帅。(彼はそれほどかっこよくありません。)
- 他很不帅。(彼は全然かっこよくありません。)
形容詞述語文の疑問文
形容詞述語文動詞述語文と同様に、“吗”疑問文や反復疑問文,疑問詞疑問文などがあります。
疑問文も「不確定」という対象を疑うモダリティが入っているので、飾りの“很”は不要です。
(1)“吗”疑問文
他帅吗? (彼はかっこいいですか。)
(2) 反復疑問文
他帅不帅? (彼はかっこいい?かっこよくない?)
(3) 疑問詞疑問文
谁最帅? (誰が一番かっこいいですか。)
**
以上、形容詞述語文でなぜ“ 很 hěn ”が必要なのか?について、本質的な理由を解説しました。
簡潔に言えば、
- 形容詞述語文でなぜ“ 很 hěn ”がないと比較・対照の意味が生じてしまう、
- 言葉を発するにはモダリティ(心的態度)がないと文が成立しない、
ということが背景にあります。
HARU
兵庫県出身。同志社大学卒業。卒業後、食品メーカーで商品開発や中国事業に携わる。多くのプロジェクトで通訳・翻訳として貢献。自身の躓いた語学経験を多くの学習者に還元したいという想いでPaoChaiで中国語学習コーチとなる。新HSK6級。通訳案内士。好きな言葉は「為せば成る為さねば成らぬ何事も」。趣味は自転車で街を探索すること。温泉めぐり。ランニング。
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