【中国語学習を再考】重要なのは「語学力」そのものではなくて「発信すべき内容」があるかどうか

モチベーション
「現代の魔法使い」と呼ばれる落合陽一 筑波大准教授のご著書『日本再興戦略』。今後、日本が再興するにはどのような戦略が必要なのか。

落合先生が、テクノロジー、政治、教育、会社・仕事・コミュニティなどの切り口から、この国のグランドデザインを描いています。

本書の中で落合氏は「英語学習」について独自の見解を述べていますが、この内容は英語に限らず外国語全般にも当てはまります。

中国語学習をしている方も是非参考にしてみてください。

みなさまご存知の通り、日本人は小学校の高学年から(※)英語を学び始めており、す多くの方が数年以上の学習歴があります。しかし、実際に英語を使ってコミュニケーションするのが苦手です。

※2008年から(それまでは中学校から)

昨今、AIによる自動翻訳の精度が高まっているという傾向のもと、そもそも「英語を学ぶこと」について落合氏は以下のように意見を述べています。 

英語だけがしゃべれて何もできない人が増えるだけです。「グローバル人材に必要なのは英語」と一時期よく言われましたが、グーグル翻訳がこれだけ進化した時代に、同じことを言えるのでしょうか。

先日も教育関連のカンファレンスで中学生向けに講演をしたのですが、そのとき、みんなが「英語を勉強する」と言うので僕は違和感を抱きました。そこで、生徒さんに「何のために英語を勉強するの?英語を学んでどうしても海外の人に伝えたいことがあるの?」と聞いてみたのですが、とくに答えは返ってきませんでした。

発信する内容もないのに、英語を学んでも意味はありません。(…)英語だけできて中身のない人を雇うくらいなら、プロの同時通訳に任せたほうが正確ですし、仕事は断然早く進みます。

(…)

僕は、高校受験のときは英語を勉強しましたが、TOEFLの勉強をしたり、英会話のための勉強をしたことは一度もありません。それでも、ツールとして、英語はわかるし、書けるし、話せます。それは、僕自身が生産者として、英語の論文をたくさん読んで、書いて、英語でしゃべっているからです。重要なのは、英語そのものではなくて、発信すべき内容があるかどうかなのです。(P59−61)

これは、英語だけでなく中国語やあらゆる外国語の学習者にも言えることだと思います。

重要なのは、「中国語」そのものではなくて、発信すべき「内容」があるかどうかです。
落合氏がここで問いかけているのは、要するに中国語(外国語)を「使う」予定があるのか、ということです。もちろん、何かを発信だけでなく中国語の文章を読んだり、人とコミュニケーションしたり、映画やドラマを字幕なしに観賞する、などの「使用」です。

そして、「使用」において、一般的に言われる言語の形式的な「正しさ」は重要ではありません。細かい文法や表現の間違いや、単語の誤用などは表面的な問題に過ぎません。HSKや中国語検定を取ることと「使用」は関係がありません。

なので、今、中国語を学習している人はまず、中国語を使って何がしたいかを冷静になって考えるべきでしょう。もし、ただ漠然とした理由で学んでいるのであれば、もしかしたら学習をやめて別の興味のあることをやったほうがいいかもしれません。

あるいは少しでも発信したい内容や読んでみたい聞いてみたい中国語があれば、今すぐに試してみることをおすすめします。

そこで語学において何が足りないか見えてくるはずです。

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冨江コーチ

東京都出身。早稲田大学国際教養学部卒業。中国ビジネス10年(日本のゲーム、アニメ等コンテンツの中国展開に従事)、中国在住5年(上海、南京)の経験を活かし、実践的な中国語学習のサポートをいたします。2016年から語学の道に転身。大学院で第二言語習得、言語、哲学の研究を行いながら、中国語と日本語を教える。趣味は、中国各地の麺類を食べ歩くこと。新HSK6級。復旦大学短期留学(2007年)。The Australian National University修士号、早稲田大学国際コミュニケーション研究科修士課程修了。

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