中国語のオノマトペ【擬音語、擬声語】バトル漫画からクイズ3問!

中国語実践者

 こんにちは!中国語漫画翻訳者のもりゆりえです。現在私は、お仕事で中国語のバトル漫画を2作品、日本語に翻訳しています。

 ひとつは「異世界転生もの」で、主人公が次々と相手を倒してレベルアップしていくストーリー、もうひとつは「武侠ファンタジー」で、剣士の主人公が強くなるために修行し、成長していくストーリーです。

 両作品のバトルシーンは、中国語の擬音語(外界の物音を文字化したもの)や、擬声語(人間の声や動物の鳴き声を文字化したもの)の宝庫!(擬音語と擬声語をあわせてオノマトペといわれます)

時には数コマに渡って、擬音語や擬声語だけでストーリーが展開されることもあります。

 今回は、中国語の漫画を毎日翻訳する中で気づいたことや感じたことなどを、「擬音語、擬声語の実例クイズ形式」で皆さんにご紹介していきたいと思います。

擬音語(漢字の意味)編

問題➀ :以下の擬音語は、どのようなシーンに使われるでしょうか?

(ヒント:漢字の意味に注目してください)

 

轰隆隆(轟隆隆:hōng lōng lōng)

 

答え

 落雷などの極端に大きな音や、大群が押し寄せる際の地響きなどのシーンでよく登場する擬音語です。

 もちろんシーンごとに音の調整は必要ですが、一例として「ゴロゴロ」(落雷)、「ドドドド」(地響き)などと訳すと適切かと思います。

 もし拼音を知らなくても漢字を見れば、どのような音かすぐにイメージできるのではないでしょうか。

 同じように漢字を見て、音のイメージが湧きやすい中国語の擬音語としては以下の表現があります。

  • 崩(bēng):山や崖が崩れる音→ガラガラ
  • 嘭/砰(pēng):銃を撃つ音や、物が倒れる音→パン、ドスン
  • 滴滴(dī dī):液体が落ちる音→ポタポタ
  • 飒(sà):風が吹く音→サー
  • 沙(shā ):風が吹く音、砂が落ちる音→サラサラ
  • 呼(hū):風が吹く音、呼吸の音→ヒュー、フーフー
  • 叮铃铃(dīng líng líng):金属が擦れる音→チャリン、チリリン

 「嘭」と「砰」は辞書などで調べると、拼音も同じで擬音語のニュアンスもよく似ているようです。しかし私の訳した同一作品の中では「砰」は銃声、「嘭」は衝突音と明らかに使い分けられていました。もちろん作者や作品による違いはありますが、概ねどの作品においても「シチュエーションごとに使用する擬音語/擬声語」が一度決まると、その後の変更はほとんど見られないように思います。

擬音語(拼音)編

問題②:以下の中国語の擬音語は、日本語ではどんな擬音語になるでしょう?

(ヒント:拼音に注目してください)

 

咔嚓(kāchā)

 

答え

「硬い物同士がぶつかったときの音」です。バトルシーンではよく、刀同士がぶつかるシーンや、鞘から刀を抜くシーンで目にしました。一例としては、「キィン」(刀同士がぶつかる音)、「カチャ」(鞘から刀を抜く音)などと訳すと、しっくりくることが多いように思います。

 日本語の擬音語に近い中国語の擬音語としては、他にも以下のような表現が挙げられます。

  • 刷(shuā ):人、物体の素早い移動や動きを表す→サッ
  • 咻(xiū):人、物体の素早い移動や動きを表す→シュー
  • 嗖(sōu):人、物体の素早い移動や動きを表す→シュッ
  • 卅(sà):風が吹く音、物体を投げる音→サー
  • 滋滋滋(zī zī zī):水分が蒸発する音、電気が流れている音→ジュッ、ジジジ
  • 啪(pā):叩く音→パン、バシ
  • 切(qiē)/啧(zé):舌打ちの音→チッ

 特に上記の「刷」、「咻」、「嗖」は、バトルシーンでのキャラクターの移動や、武器の使用などで頻繁に目にします。3つとも日本語の擬音語に訳すと音としては大きな違いはありませんが、私が訳した作品の中では「嗖>刷>咻」のように、スピードによって3種類の擬音語を使い分けているように見受けられました(左に行くほど速い)。そのスピード感の違いが出るように、場面によって一番ふさわしい擬音語になるように日本語の翻訳の表現を変えています。

擬声語(笑い声)編

 漫画作品に登場する個性豊かなキャラクターは、その笑い方にも様々な違いが見られます。

問題③:以下の笑い方を、日本語の擬声語に訳すとしたらどうなるでしょう?

(ヒント:この擬声語を使うキャラクターは「セクシーなお姉さん」です)

 

咯咯(gēgē)

 

答え③

 悪戯っぽく上品に笑っているようなシーンでよく見られる擬声語です。そのため「クスクス」、「ケラケラ」などと訳すと、キャラクターのチャーミングな魅力がより引き立つように思います。

 私が最初にこの中国語の擬声語を見たときは、拼音の響きと日本語訳の擬声語のニュアンスに、ずいぶんギャップがあるなぁと感じました。皆さんはどう思われたでしょうか。

 他にも笑い声の擬声語としては、以下の表現が見られます。

  • 哈哈哈( hā hā):笑い声→ハハハ
  • 呵呵(hē hē):笑い声→ホホ、フフ
  • 呼嗤(hūchī)/噗嗤(pūchī):吹き出した笑い声→プッ、クス
  • 桀桀(jié jié):邪悪な笑い声→ウヒヒ

 ちなみに「桀桀」と笑っていたのは死神でした。これまでこの死神以外にも、邪悪な人間のキャラクターはいましたが、この死神以外で使用されているのは今のところ見たことがありません。そのため、かなり不気味で邪悪なニュアンスなのだと思われます。

まとめ

 いかかでしたか?今回取り上げたのは、これまでお仕事で触れた中国語の擬音語、擬声語のほんの一部です。特に同じ音(拼音)でも、漢字によって受ける印象が違ってくるのが、中国語のオノマトペ(擬音語や擬声語)の面白さではないでしょうか。

 皆さんも中国語の漫画作品を見る機会があったら、ぜひ擬音語や擬声語にも注目してみてください。

 

 

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もりゆりえ

広島県東広島市出身。尾道市立大学美術学科卒業。高校時代に読んだ漫画「封神演義」をきっかけに中国語学習を開始。大学卒業後中国に渡り、浙江大学に10ヵ月間の語学留学(2005年〜2006年)をする。留学中に、「第二届中国国際動漫画節」に参加。現在はフリーランスの中日漫画翻訳者として活動中。趣味は中国のマンガアプリでマンガを読むこと。

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