「中文」と「汉语」の違いとは?意味・使い方・学術的な区別を徹底解説

「中国語」を意味する言葉には、「中文」と「汉语」がありますが、この2つには微妙な違いがあります。本記事では、中国語を学ぶ人に向けて、「中文」と「汉语」の違いを定義・使用シーン・学術的な観点から詳しく解説します。
目次
1. 定義の違い:「中文」=言語体系、「汉语」=民族言語
中文とは?
「中文(zhōngwén)」は、中国語全体の言語体系(話し言葉+書き言葉)を指し、より広い概念です。普通話(標準中国語)はもちろん、広東語や上海語などの方言の書き言葉も含みます。
海外の「中文学校」では、普通話に加え、地域によっては広東語なども教えられることがあります。
汉语とは?
「汉语(hànyǔ)」は、漢民族が使う言語そのものを意味し、主に話し言葉としての言語に焦点を当てた言葉です。
中国の《语言文字法》によれば、汉语には七大方言(官話、呉語、湘語など)が含まれますが、チベット語やウイグル語のような少数民族の言語は含まれません。
なお、国連の公用語「Chinese」は、普通話(標準漢語)を指すため、「汉语」との関係が深いです。
言語は、話し言葉が根底にあるので、こちらのほうが格式は高いのかも?…
2. 使用シーンの違い:「中文」は国家ブランド、「汉语」は言語研究に強い
「中文」が使われる場面
- 孔子学院や海外教育では、「中文课程(中国語コース)」のように国家的な言語ブランドとして使われます。
- 国際標準化機構(ISO)での言語コード「zh」は、「中文」として登録されており、簡体字・繁体字の両方を包括しています。
- IT分野では「中文入力法」「中文エンコーディング」など、漢字を中心にした処理に関連する用語として使われます。
「汉语」が使われる場面
- 言語学や民族文化の研究では「汉语方言」「汉语音韵学」のように、言語の本質・構造に焦点を当てた文脈で使用されます。
- 「HSK(汉语水平考试)」は、普通話の能力を測定する試験で、外国人向けの主要な中国語試験です。
3. 文字と音声の視点からの違い
中文=文字中心
「中文」は文字に焦点を当てた概念です。甲骨文や篆書など、歴史的な漢字体系すべてが中文の一部です。
国連では漢字を「Chinese characters」と表現し、日本語の「漢字」とは明確に区別されています。
現代でも「中文入力」「中文フォント」「中文自然言語処理」など、文字・書き言葉に関連する技術や表現に「中文」が使われます。
汉语=音声中心
一方、「汉语」は音声言語としての中国語を指します。たとえば「汉语拼音」は、発音のためのローマ字表記であり、文字そのものとは異なります。
また、閩南語や客家語などは漢字で書かれていても、その音韻体系から「汉语の方言」と分類され、独立言語とはされません。
まとめ:「中文」と「汉语」は何が違う?
観点 | 中文 | 汉语 |
---|---|---|
定義 | 国家通用語全体(普通話+方言+書き言葉) | 漢民族の話し言葉の体系 |
強調点 | 文字・体系性 | 音声・民族言語性 |
使用場面 | 教育・IT・翻訳など | 学術研究・発音・試験など |
例 | 中文课程、中文输入法 | 汉语拼音、汉语水平考试 |
- 教材・教育・ITなどでは「中文」が自然
- 発音・会話・言語学的な話では「汉语」が適切
- 日常会話ではどちらでもOK、ただし文脈に合わせて選ぶとより自然!
**
中国で生活していると、多くの場面で「中文」の方を聞く機会が多いですが、ただ、「汉语」も聞きます。正直どちらでも通じるので、上記のような使い分けを慎重にしたい場合を除いて、どっちでも良い!と思います。

tad
千葉県出身、東京育ち。貿易関係の会社で10数年ほど勤務後、5年の中華圏駐在経験を活かして独立。現在は、翻訳や通訳などを中心にフリーで活動中。趣味はゴルフ。好きな食べ物は麻辣香锅。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。中国語検定準1級。HSK6級。
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