【HSK】3.0(9級制)と2.0(6級制)の3つの違い!『日本と中国大陸』での各実施状況も

HSK・中国語検定

2021年7月1日に発表された「国際中文教育中文水平等級標準」によると、最上級を9級とした新HSK試験(HSK3.0 )は、2021年12月からテスト運用、2022年3月から正式変更になるとのことでした。

その後、中国大陸では実際に2022年頃からHSK3.0が受けられるようになっています。ただし、中国大陸で受験できるのは、これまでになかった7〜9級の部分のみ受験可能で、2025年の現時点でも1〜6級はHSK2.0のものが使われているようです。

また、現状日本で受験できるのは2009年から実施されているHSK2.0(6級制)です。

本記事では、HSK3.0(9級制)とこれまでのHSK2.0(6級制)との違いや、日本と中国で結局どのバージョンが受けられるのか?などを説明します。

関連記事:【HSK】を中国本土で受けるには?“中文考试服务网”の利用法を解説!受験申し込みから試験対策まで

何故HSK3.0にアップグレードされるのか?

そもそも何故現在のHSK2.0から3.0へ移行されるのでしょうか?その背景を以下ポイントでまとめました。

HSK2.0(2009年~)

  • 旧HSKはレベルが高く、中国語圏外の学習者には難しかった。
  • 孔子学院の普及に伴い、中国語学習を促進する目的で改革。
  • 2009年にHSK2.0開始。3等11級→6級に簡略化し、特に初級者(1級)は150語に制限。
  • インターネット受験を導入。
  • 2019年末には世界150ヶ国、受験者80万人に拡大。

HSK3.0(2022年~)

  • 世界的な言語標準(CEFR、ACTFL)に合わせるため再改革。
  • 2015年から孔子学院本部と国家語学委員会が共同で研究、5年後に新基準制定。
  • レベルを初・中・高の3段階9級に変更。
  • 語彙量が大幅に増加(特に7~9級の上級レベル)。
  • 「音節・漢字・語彙・文法」+「コミュニケーション能力」+「話題任務」を含めた3つの新指標軸。
  • 従来の「聞く・話す・読む・書く」+「翻訳」を合わせた5技能を評価。
  • より実用的・総合的な中国語能力試験へ進化。
     

HSK 3.0は、単なるレベル拡張ではなく「より実用的・バランスの取れた言語運用能力の証明テスト」へと進化しています。語彙量・文法力・漢字筆記・翻訳力など、総合的な力を問われる内容です。

HSK3.0のレベル構成 

HSK 2.0(旧版)と HSK 3.0(新制度)の主な違いを整理しました。

  • HSK 2.0
    • 1級〜6級の6段階。
  • HSK 3.0
    • 初級・中級・上級の3段階(ステージ)に、それぞれ3つのバンドを加えた全9レベル(バンド1〜9)構成 (参考
      • バンド1〜3:初級
      • バンド4〜6:中級
      • バンド7〜9:上級(新設) chinaeducenter.com
        • 上級(7‑9)は同一の試験で、受験後に点数に応じてバンドが判定されます。

HSK3.0語彙数・文字数・文法項目の大幅増加

HSK3.0では、各レベルで必要とされる語彙(さらに文法項目など)が飛躍的に増えています(カッコ内は現行HSKの単語量)。

6級はHSK2.0でもHSK3.0でも約5000語ですが、4級や5級を比べると、HSK2.0の4級1200語に対して、HSK3.0の4級は3245語と2.5倍くらいの違いがあります。また、HSK3.0では今までなかった7〜9級が加わり、10000語以上の語彙をカバーしています。

レベル 音節 漢字 語彙 文法
初級 1級 269 300 500(150) 48
2級 468 600 1,272(300) 129
3級 608 900 2,245(600) 210
中級 4級 724 1,200 3,245(1,200) 286
5級 822 1,500 4,316(2,500) 357
6級 908 1,800 5,456(5,000) 424
高級 7-9級 1,110 3,000 11,092 572

参考:HSK: Vocabulary lists per level downloadable on GlobalExam

上の表を見れば、HSK2.0の1〜5級とHSK3.0の1〜5級を同等レベルと考えることはできないとわかりますね。

中国語学習ジャーナルのページで、HSK2.0と3.0の各レベルの単語を全てスプレッドシートにまとめていましたので、参考にしてみてください。

HSK2.0とHSK3.0:問われる能力の違い

HSK 2.0:

  • 聴解・読解・語彙・文法中心。
  • スピーキングは別試験(HSKK)が必要。

HSK 3.0:

  • 試験範囲に一部手書き(漢字)能力と、翻訳力が加わります (参考
  • バンド1〜3では漢字の筆記能力が問われ、
  • バンド4〜9では翻訳(中⇄英)のセクションが導入 
  • 聴解・読解・文法・ライティング・翻訳・漢字の5スキル構成に 

HSK2.0とHSK3.0の主な違い3つ

  1. レベル増:6級→9級に拡充し、より高いレベルまでカバー
  2. 語彙・文法量が激増:初心者でも500語→2 245語など(1〜5級の難易度が上がっています)
  3. 試験形式が高度化:スピーキング、手書き・翻訳スキル追加

HSK3.0は日本と中国大陸でどう運用(実施)されているか?

2025年現在、実施状況は基本的に下記の通りです。あくまでネット上の情報を基にしていますので、実際の最新状況は各運営局へお問い合わせください。

日本での受験

現在、日本でのHSKはHSK2.0(6級制)となっております。また、スピーキングはHSKとは別のHSKKという試験で運営されています。日本では基本的にHSK3.0は受験できません。

中国大陸での受験

中国での受験については少し状況がややこしくなっています。

結論から言いますと、中国で受験する場合、1〜6級はHSK2.0で、7〜9級はHSK3.0となっております。(つまりHSK3.0の1〜6級は受験できません)

また、日本ではHSKとHSKKを別々に受験することができますが、中国ではHSKはHSKKと必ず一緒にセットで受験する必要があります。そのため、受験費用は中国の方が高くなります。

おそらく、まだHSK3.0の1〜6級が運営体制が確立できていないので、このような形で運営されているのでしょう。HSK3.0の1〜6級は2025年〜2027年くらいに導入されるという噂もあります。

中国語学習ジャーナルのページでHSK2.0と3.0の各レベルの単語を全てスプレッドシートにまとめていましたので、参考にしてみてください。こちらを見るとわかりますが、1つの問題はHSK2.0と3.0の1〜6級でのカバーしている語彙数や具体的な単語が異なるという点です。なので、HSK2.0で6級まで学習した後、HSK3.0の7級以上を勉強する場合の連続性が微妙にズレています。

まとめ

HSK 3.0は、単なるカバーする語彙数の拡張ではなく「より実用的・バランスの取れた言語運用能力の証明テスト」へと進化し、語彙量・文法力・漢字筆記・翻訳力など、総合的な力を問われる内容となっています。

現状、1〜6級については日本と中国どちらで受けてもHSK2.0の内容ですので、対策用の教材などは既に充実しています。6級までは、HSK2.0をまずは目指して学習をするのが合理的かと思います。より総合的な語学力を目指したい方は今の段階でもHSK3.0を視野に入れてもよいでしょう。

最後に、中国での受験申し込み方法は下記記事を参考にしてみてください。

関連記事:【HSK】を中国本土で受けるには?“中文考试服务网”の利用法を解説!受験申し込みから試験対策まで

 
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tad

千葉県出身、東京育ち。貿易関係の会社で10数年ほど勤務後、5年の中華圏駐在経験を活かして独立。現在は、翻訳や通訳などを中心にフリーで活動中。趣味はゴルフ。好きな食べ物は麻辣香锅。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。中国語検定準1級。HSK6級。

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