今回は私の中国体験、初の中国渡航から四半世紀(25年)が経とうとする現在に至るまでを振り返ってみたいと思います。ただの三国志好き小学生が中国支社の総経理になるまでを、旅、北京留学、上海赴任を中心に書いていきます。
目次
人形劇三国志との出会い
私と中国との出会いは小学4年生のころ、NHK人形劇三国志を見始めたことがきっかけでした。中国の歴史ものに初めて触れ、子供向けの小説や漫画などでどんどんはまっていきました。
今思うと、何でもいいので好きなジャンルが一つあれば、その後の学習でも「あれは中国語で何というのかな?」などと自主的に調べたりでき、モチベーション維持にも繋がるのでは?という気がしています。
語学学習を続けられたカギは現地の中国体験(北京、西安)
そして、大学入学後の春休み、念願の(初めての)中国旅行に出かけることに。北京、西安などの古都をまわりました。中国語はほぼゼロ状態のためノートとペンを握りしめ筆談を繰り返す旅でしたが、現地の人と接する楽しさに打ちのめされ、その後は毎年ひと月ほどの旅行へ。
台湾一周や香港から入って広東・福建・浙江を回り上海まで行く南方沿岸ルート、また神戸から鑑真号という二昼夜の船に乗って上海へ渡り一路新疆ウイグルの国境付近まで行く西域ルートなど、バックパックを背負い各地を巡りました。高速鉄道もない当時、「硬座(インズオ)」という二等車に座りっぱなしで数十時間という旅を繰り返す中、隣に座った現地の乗客と筆談をしたり、食べ物を分けてもらったりといった交流も語学の上達には役立ちました。
何と言っても旅先で話す、聴くといった実地の体験が一番。列車のチケットを買えるようになる、宿のスタッフと簡単なおしゃべりができるようになる、など小さな成功体験を積み重ねていったのが、語学の進歩には良かったように思います。
そして、学生の間にしかできないこととして、当時通っていた大学院を一年間休学し留学をすることを決意しました。
北京外国語大学へ1年留学‐HSK高級合格を目標に
2003年9月から始まった北京外国語大学への留学生活。毎日午前中で終わる授業以外でも中国語に触れる時間を長く取ろうと、授業のない午後の時間は中国人との相互学習を詰め込みました。曜日ごとの相手を決め、最低3時間は中国人とマンツーマンでの時間を過ごしました。
日本語と中国語で話す時間を平等に分けるという約束だったのですが、慣れてくると私はほとんど中国語で話し、学習パートナーには悪いことをしたと思っています(笑)。
留学期間はHSKの高級(当時)合格を目標にしまし、まずは入学後数か月でHSK中級を受け7級(同)を取得。留学の集大成として帰国前に高級に挑戦しました。
日本人留学生との交流も楽しく、誘惑に負けてしまうことも多かったのですが、受験前のひと月は断酒で臨み(笑)、無事高級の9級を取ることができました。留学期間内に明確な目標を設定したのが、充実した生活が送れた大きな理由だったと思います。
長いようで短い留学期間、これから留学する方にはぜひ目標設定とクリアのための手段を考えておくことをお勧めします。
中国ビジネスの現場で(現地営業)
大学院卒業後新卒で入った職場は、当初のイメージとは異なり中国語が活かせる環境ではなくなってきたため、30歳を超えたころに中国語を使う環境での仕事を希望し転職をしました。転職活動の際は、「出張ベースで中国と行き来ができれば」くらいで考えていたのですが、決まったのは即現地赴任の駐在員の仕事。
2か月弱の本社研修ののち、2012年2月に上海赴任となりました。任されたのは現地セールススタッフの業績を管理し、自分も担当エリアを持って顧客を回るプレーイングマネジャーの仕事です。
留学していたとは言え、業務には独特の術語もありますし、ネイティブの生活用語や言い回しにも慣れていなかったので当初は言葉の面でもかなり苦労しました。
心がけたのは、現地の人との会話のテンポを崩さないこと。聞き取れないことがあっても、相槌を打ったり聞き返したりするタイミングに気を付けることで、会話の流れを途切れさせず、相手が言いたいことをスムーズに聞き出せるよう努めました。
普段身を置くのは商売の現場ですし、商習慣も大きく異なるため、時には喧嘩に近いコミュニケーションもすることもあり、日本では使わないエネルギーを使う場面もありましたが、リアルな現場の表現の勉強になり、貴重な経験だったと思います。
また、赴任期間中には尖閣諸島に関する両国関係の衝突やそれによるビジネスへの影響など時事問題についてもネイティブと大いに語り合ったのも今となってはいい思い出です。
置かれた状況に応じて(総経理として2回目の中国駐在)
7年半ほどの駐在を経て、一度日本本社へ帰任し、2022年5月に再赴任となり今に至ります。上海はロックダウンの真っ只中だったため、いったん青島に飛び3週間の隔離からスタートするなど、コロナ禍の影響が大変大きい中での再出発となりました。
今回は総経理という現地責任者の立場で、言語コミュニケーションについては前回赴任から大きな違いはありませんが、立場を考慮した表現の仕方や語彙を増やしていかなければいけないと考えています。
また、日本人同士では無意識にやっていることだと思いますが、相手のキャラクターやTPOによって言い方を工夫したり、「決め台詞」のような聞き手の印象により残る表現を使ったりできるようになることも大切だと思っています。
四半世紀にわたる中国語との付き合いの中で感じることは、状況に応じて語学との関係も分かってきたしこれからも変わっていくであろうということ。そして、付き合えば付き合うほど深く楽しくなるということです。語学学習はこちらが向き合い続ける限り、その姿勢に必ず応えてくれると思います。終生、いい付き合いができるパートナーと出会えたというのはとても幸せなことだと感じています。
つっつん
北海道真狩村出身。2003年、大学院在学中に日中友好協会の奨学生として北京外国語大学に1年留学。リクルートなどを経て、現在は日本の酒メーカーの中国総経理。中国駐在10年目。座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。趣味はカラオケ、能楽、飲み歩き。大阪大学文学部卒。同大学院文学研究科修了。
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