【中国語】漢語七大方言の特徴を4つの視点で解説

アイキャッチ画像:中国社会科学院語言研究所『中国语言地图集』より
こんにちは!SENです。
中国語を学ぶ皆さんにとって、中国は言葉だけでなく文化や歴史、そして人々の多様性に満ちた魅力的な国です。その多様性を最もよく表しているのが、中国各地で話されている「方言(fāngyán)」です。中国政府の発表によると中国国内だと130の言語と30の文字が存在しているそうです。一つの国の中でこれだけ多様な言語文化があることは本当に驚きですね!
中国の民族構成と方言の多様性
中国には56の民族が存在し、その中で最大の民族である漢民族(Hàn mínzú)は人口の90%以上を占めています。漢民族が話す言語を「漢語(Hànyǔ)」または「普通話(Pǔtōnghuà)」と呼びますが、実はこの漢語の中にも多くの地域的な変種、すなわち「方言」が存在します。
漢語の方言は主に七大方言に分類されており、これは中国語の地域的な多様性を示す重要な枠組みです。
実は、漢語方言は以前「六大方言」として分類されていましたが、近年の言語学の進展や方言の再評価により「客家方言(kèjiā fāngyán)」が独立した一つのグループとして認識されるようになり、現在では「七大方言」として知られるようになりました。
この変化は、地域文化の多様性をより正確に反映しようとする動きの一環です。
普通話(標準語)と北京語の違い
なお、中国語の標準語である「普通話(Pǔtōnghuà)」は、国として正式に普及が進められており、「普通話水平测试(Pǔtōnghuà Shuǐpíng Cèshì)」という検定制度が存在します。これは中国国内で教員やアナウンサーなどの職業に必要な資格とされていることもあり、発音や語法、朗読などの能力を測定するものです。
ここで気になる点が、では中国の首都北京で話されている言葉が普通話なのか?という点です。
答えは「NO」です。
実は、北京を中心とした地域では、語尾に「儿(ér)」をつける「儿化音(érhuàyīn)」が特徴としてあり、普通話とは少し異なっています。ただ、この儿化はあくまで発音の特徴であり、方言として分類されるものではありません。方言は音声体系だけでなく、語彙や文法の大きな違いを含むものです。
これは筆者の個人的な感想ですが、この「儿化」はなかなかの曲者です。笑
北京の人は「今天(jīn tiān)」のことを「今儿(jīn ér)」、「明天(míng tiān)」のことを「明儿(míng ér)」ということもあるほど「儿化」が強く、聞き取れないっっと思ったのを覚えています。
それはさておき、今回は中国の七大方言について紹介し、それぞれの特徴についてご紹介したいと思います。
目次
七大方言とは?
先ほど述べたように漢語の方言は大きく分けて七つの主要グループ(七大方言)に分類されます。
中国政府は漢語の七大方言について下記のように定めています。
——汉语方言通常分为七大方言:北方方言、吴方言、湘方言、赣方言、客家方言、粤方言、闽方言。
各方言区内又分布着若干次方言和许多种“土语”。其中使用人数最多的北方方言分为北方官话、西北官话、西南官话、下江官话四个次方言。(『中国语言文字概况』より)—–
(翻訳)漢語方言は通常7つの主要な方言に分類されます:北方方言、呉方言、湘方言、贛方言、客家方言、粤方言、閩方言です。それぞれの方言地域内には、さらにいくつかの下位方言と多くの「土語(地域特有の言葉 ヴァナキュラー言語)」が分布しています。この中で最も話者が多いのは北方方言で、さらに北方官話、西北官話、西南官話、下江官話の4つの下位方言に分けられます。
以下に、それぞれの方言について詳しく説明していきます。
1. 北方方言(běifāng fāngyán)
中国で最も広い地域に分布し、話者数も圧倒的に多い方言です。普通話の基礎となっているため、多くの学習者にとって最も親しみやすい方言と言えます。母語話者は約9億人で、世界最大規模です。
- 地域:中国北部、東北地方、華北地方、内蒙古、そして西北部まで広く分布。
- 特徴:音声が比較的シンプルで語調の変化も少ないため、普通話(Pǔtōnghuà)のベースとなっています。
- 旅行学習ポイント:標準後はこの方言を基にしているので中国国内どこでも通じやすいです。
- 学習単語:内蒙古(Nèi Měnggǔ)=内モンゴル、北京话(Běijīnghuà)=北京語、东北(Dōngběi)=東北
2. 呉方言(wú fāngyán)
中国東部の経済中心地である上海や蘇州で話され、音の響きが柔らかく、詩的とも評されます。
文学や演劇にも影響を与えてきたといわれています。
- 地域:江蘇省南部、浙江省、上海市
- 特徴:声調が多く、音の変化が複雑。上海語(Shànghǎihuà)は呉方言の代表。
- 旅行学習ポイント:上海で耳にする言葉は普通話とは違う響き。市場やタクシーで地元の呉語に触れることができます。
- 学習単語:上海(Shànghǎi)=上海、阿拉(ālā)=私たち(呉語)、弄堂(lòngtáng)=路地(呉語)
私の勤務先にも上海出身の方が何人かいますが、同じ上海出身同士で話すときは必ずと言ってよいほどこの呉方言の代表である「上海語」で話しています。この点からも、中国の人々の「同郷」に対する特別な思いが大きく表れていることが伺えます。
3. 粤方言(yuè fāngyán)
映画や音楽を通じて国際的にも知られる方言で、広東語としての知名度が高いです。
華僑社会でも広く話されています。私達がよく知るジャッキー・チェンの作品は初期のころは広東語で話されていましたね。
- 地域:広東省、香港、マカオ
- 特徴:広東語(Guǎngdōnghuà)はテレビドラマや映画でも有名。九つの声調があり、発音は非常に難しい。
- 旅行学習ポイント:広州や香港では広東語が日常的に使われており、看板やメニューにその影響が見られます。耳で覚えると楽しいといわれています。
- 学習単語:你好(néih hóu)=こんにちは(広東語)食饭(sihk faahn)=ご飯を食べる唔该(m̀hgōi)=ありがとう/すみません
4. 閩方言(mǐn fāngyán)
台湾や福建の文化に深く根ざした方言で、古い漢語の特徴を保持しています。
南洋華僑にも多くの話者がいます。
- 地域:福建省、台湾、海南島の一部
- 特徴:閩南語(Mǐnnánhuà)は語彙や発音が普通話と大きく異なり、独自の注音符号を用いることもあります。
- 旅行学習ポイント:台湾では閩南語を耳にする機会が多い。
- 学習単語:厝(chhù)=家(閩南語)、食(tsia̍h)=食べる、歡迎(hoan-gêng)=歓迎する
5. 湘方言(xiāng fāngyán)
湖南省を中心に話される方言で、古代音の特徴を残しており、保守的な方言としても知られます。
- 地域:湖南省
- 特徴:古代中国語の特徴を多く残しています。湖南省内でも多様で、理解が難しいといわれています。
- 旅行学習ポイント:長沙や鳳凰古城などを訪れた際に、地元の人との会話で耳を傾けてみると、顕著な発音の違いを感じることができます。
- 学習単語:长沙(Chángshā)=長沙、湖南话(Húnánhuà)=湖南語、米粉(mǐfěn)=米粉料理(湖南の名物)
6. 贛方言(gàn fāngyán)
江西省に主に分布する方言で、独特の音韻体系を持ち、他方言と大きく異なります。
地理的にも言語的にも興味深い地域です。
- 地域:江西省
- 特徴:呉方言と湘方言の中間的な特徴を持つ。発音と語彙が独特で、他の方言話者にとっても理解が難しい。使用率は漢民族人口の2.4%で、七大方言では最も少ない。
- 旅行学習ポイント:景徳鎮(陶磁器で有名)や南昌などを訪れると現地で耳にすることができます。
- 学習単語:景德鎮(Jǐngdézhèn)=景徳鎮、贛江(Gànjiāng)=贛江(江西省を流れる川)、南昌话(Nánchānghuà)=南昌方言
7. 客家方言(kèjiā fāngyán)
客家民族の移動と共に広がった方言で、中国各地や台湾、東南アジアに分布しています。保存状態が良く、独自性が高いです。客家とは「客家(かっか/ハッカ)」とは、中国の漢民族の一支系であり、独自の言語・文化・風習を持つ人々のことを指します。
- 地域:広東省東部、江西省南部、台湾、東南アジア
- 特徴:移動の歴史が深く、語彙や発音に古代中国語の影響が見られる。客家語(Kèjiāhuà)は音が硬く、独特のリズムを持つ。
- 旅行学習ポイント:梅州や台北の客家文化地区では、客家料理と共に言葉や文化を学ぶことができます。
- 学習単語:客家(Kèjiā)=客家、食饭(si̍t pn̄g)=ご飯を食べる、(客家語)有(yū)=ある・いる
総括
このように、中国語の七大方言はそれぞれ独自の歴史や音声体系、語彙を持ち、中国語の奥深さと多様性を物語っています。学習者にとってはまず普通話をしっかり学ぶことが重要ですが、実際に旅行や文化体験を通じて方言に触れることで、中国語の理解が一層深まるでしょう。ぜひ耳を澄ませて現地の人々との交流を楽しみながら、方言の魅力を感じ取ってみてください。
参考文献
●池田巧 2014『中国語のしくみ』白水社
●S.R. ラムゼイ1990『中国の諸言語 : 歴史と現況』大修館書店

SEN
長野県出身。中華系広告会社勤務の懐かしきゆとり世代。中学生の時に姉妹都市交流で浙江省を訪れたことをきっかけに中国に興味を持つように。大学時代に一年間北京師範大学に交換留学するも、習得レベルに満足できず、帰国後大学院進学を決意。大学院では中国人留学生らと交流を持ちながら、中国の歴史社会学を研究。北京の大学に日本語講師として一年間勤務経験あり。好きな俳優は陳柏霖(チェン・ボーリン)
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