【中国語】文成分と品詞とは何か?学習にどう役立つかを解説

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みなさま、こんにちは!PaoChai中国語学習コーチの冨江です。

中国語の文法を学んでいると当たり前のように、主語、述語、補語、名詞、形容詞、動詞、介詞、連体修飾語などなど、説明もなく文法用語が出てきます。

これらは、「文成分」や「品詞」と呼ばれるものです。

なんとなくわかっている人もいるかもしれませんが、

「文成分」と「品詞」という概念の本質と、それが「学習にどのように役立つか」を理解している人は少ないでしょう。

今日はそれらについて解説していきたいと思います。

中国語における「文成分」とは何か?

①文成分とは?

文の中における各単語の役割が「文成分」と呼ばれています。以下6種類あります。

この6つを必ず覚えてください!

  1. 主語(「…は、…が」にあたる、話題の部分)
  2. 述語(「…する …だ」にあたる話題に対する説明の部分)
  3. 目的語(英語の文法などにおける「目的語」と混同しないように「宾语(bin1yu3)」と中国語の文法用語をそのまま使うこともあります。
  4. 定語(連体修飾語)※体言性(名詞など)の中心語(被修飾語)を修飾します
  5. 状語(連用修飾語)※用言性(動詞、形容詞など)の中心語(被修飾語)を修飾します
  6. 補語(後ろから意味を補足します)

※中国語の文法では、修飾される語を「中心語」と呼びます。つまり、被修飾語です。「我的书wo3de shu1(私の本)」なら、「我的」(わたしの)が連体修飾語(定語)で、「书」(本)が被修飾語(中心語)となります。

この内、主語、述語が骨格となり、目的語、定語、状語、補語は二次的な成分です。

主述文

これらの文成分が主に登場する「主述文」は次の4種類です。

  1. 動詞述語文
  2. 形容詞述語文
  3. 名詞述語文
  4. 主述述語文

では、早速「動詞述語文」を例に、文成分を見てみましょう。

②文成分を捉える

文の各単語の文成分を捉えてみましょう。まず、主語と述語を特定します。さらに、必要があれば目的語、定語、状語、補語の関係を理解します。

例1

我来(私は来ます)

我(主語) + 来(述語) 

↑こちらの文の文成分は、「主語」と「述語」のみの簡単な文で簡単に理解できます。

例2

我喜欢看中国电影。[私は中国映画を見るのが好きだ]

我(主語) + 喜欢(述語) + 看中国电影※(目的語)

↑こちらの文の文成分は、「主語」と「述語」と「目的語」があります。「看中国电影」が「目的語」ですが、これは、看(見る)+中国电影(中国映画)という動目関係の「フレーズ」が「目的語」になっています。

例3

↑「定語」や「状語」があるので一見複雑に見えますが、主要成分だけ抜き出せば「妹妹(主語)买(述語)书(目的語)」と簡単な構造であることがわかります。

③文成分の順序「修飾語は前に、補語後ろ」

文成分の順序は、「修飾語は前に、補語後ろ」と覚えましょう。

「李さんの」は「妹」を、新しく出た」は「本」を修飾している連体修飾語、つまり修飾語です。

「昨日」は「買う」を修飾している連用修飾語、つまり状語です。連体修飾語も連用修飾語もどちらも、すべて被修飾語(「中心語」という)の前に置かれます。日本語と同じです。「修飾語は前に」です。

一方補語は、用言(動詞や形容詞)の後ろについて補足説明をする語です。補うという以上必ず後ろから補います。上の例では、「買った」(买)結果、「品物が手に入った」(到)ということです。「補語は後ろ」です。

非主述文

  • 主述関係以外の「フレーズ」や「単語」だけでも、イントネーションを加えることにより、そのままの形で文になります。「主語+述語」の組み立てではないので、非主述文といいます。
  • 例:谁(単語)→谁?[誰?](文)
  • 例:进来(フレーズ)→进来![入りなさい](文)

参考:輿水優『中国語わかる文法』P40〜文の成立と種類

文には、【他来。(彼は来ます)】のような先のパターン1「主語+述語」からなる「主述文」と、「主語+述語」の形になっていないこちらのパターン2「非主述文」があります。後者に相当するものとして、「一語文」や「無主語文」があります。

一語文

谁?(誰?)

好(よし。)

小心!(気をつけて!)

加油!(頑張れ!)

地震!(地震だ)

無主語文

下雪了。(雪だ)

是我。(私です)

什么事?(何の用ですか)

非主述文は、命令文や感嘆文などを含みますが、そこまで複雑な構造ではないので分析の必要はありません。

注意点

文成分を分析する際には以下を知っておきましょう。

主語と述語の意味的な関係は多様

主語と述語の関係は「行為者ー行為」となるだけでなく、「動作の受け手ー行為」など様々な種類があるので、基本的には「話題ー説明」の関係であると理解しておきましょう。「陳述の対象ー陳述」とも言えます。

参考:『Why?にこたえるはじめての中国語の文法書』P155〜

※文の構造を厳密に分析しようとすると様々な矛盾、問題が生じます。会話能力の向上を目的にするなら、文法は文章の文の意味を取るために、構造を理解するための道具です。構造を全てを一つの理論で体系的に説明しようとするような方法論の研究ではありません。後者に興味がある方は、中国語文法学史稿 (関西大学)(第4章12節)にどのような問題があるのか概要がまとめられていますので、参照してみてください。

中国語における「品詞」とは?学習にどう役立つか?

「品詞」という概念と「文成分」を混同してはいけません。

品詞は単語の分類、文成分は文の中での役割です。

以下、その違いを説明しますので、それらが全く異なる概念であることを覚えておきましょう。

①中国語における「品詞」とは?

  • 文の中における各単語の役割が「文成分」です。つまり、文の中で決まります。一方、「品詞」は各単語の分類です。その単語の文法的な性質によって決まります。文中での役割ではなく、その単語の属性です。
  • 中国語における名詞,動詞,形容詞…といった品詞分類は、「動作行為を表す語は動詞」「事物の名前を表すのは名詞」「性質や状態を表すのは形容詞」というように、意味によって分けられているのではありません。
  • そうではなく、品詞という概念は、文法的な性質が共通する語を1つのグループにまとめています。
    • 文法的な性質とは次のようなものです。
      • その単語が文の中でどの文成分になることができるか?
        • 主語になれるか?目的語になれるか?述語になれるか?等々
      • 他のどのような品詞とどのような関係で結びつくことができるか?
  • 形態変化(いわゆる活用)のある言語(英語など)では、単語の外形的な特徴から品詞を分けることができます。しかし、中国語ではその単語の連語(フレーズ)や文の中での用法を調べ、どのような語とどのように結びつくか、そしてその結合においてどんな働きをするかなど、文法的な機能を基準に分類します。

参考:輿水優『中国語わかる文法』P146(品詞)

品詞を決める手順の例

品詞をどのように決めているか?三宅登之 『中級中国語 読みとく文法』において、具体的な例が示されているので紹介させていただきます。

例えば、動詞と形容詞を分ける基準の一例が以下です。

  1. 副詞“”の修飾を受けることができるか?
  2. 目的語を取れるか?

という2つの基準から、①は満たす(○)が、②は満たさない(☓)[D]が形容詞で、その他の[A][B][C]が動詞という判定をします。(下記の表を参照)

三宅登之 『中級中国語 読みとく文法』より

②品詞と文成分の違い

  • 上述のように、「文成分」は、成立している文の構造を理解し、その文の意味を正しくとるために役立ちます。
  • 一方の「品詞」は、主に、各単語がどのような文成分になれるかという性質で分類されたものです。単語の属性といえます。
  • 「文成分」と「品詞」は全く別レベルの概念です。どのような「文成分」になれるかが「品詞」分類の重要な基準です。

③品詞は何のために学ぶのか?

英語でおなじみの名詞,動詞,形容詞…といった品詞ですが、一体なんのために知る必要があるのでしょうか?

品詞は、単語の使い方(どのような文成分になるか)をイメージできるため、新しい単語を覚えるときに使い方の手がかりになります。

例えば、干净gan1jing4(きれい)という単語は、形容詞です。そうであれば、「这件衣服很干净」のように述語(文成分)として、また、「干净的衣服」のように「定語(連体修飾語)」(文成分)として使える、と想像できます。

文成分と品詞は学習を加速させる

以上、中国語文法における文成分と品詞について解説しました。

文成分と品詞についての説明はたまに教科書で見かけますが、それらがそもそも何なのか?何のために学ぶのか?について述べているものは見たことがありません。

それらをしっかりと自分なりに理解しておくと学習に役立ち、成長を加速させます。

文成分がわかれば、文章を構造的に捉えることができます。主語、述語、補語など、各語の役割を見出すことができます。

また、ある新出単語の品詞がわかれば、その使い方がある程度わかります。「副詞」という品詞の単語であれば、動詞や形容詞を修飾する状語(連用修飾)になる、というようなことです。

中国語における文成分と品詞がわかれば、文章の構造分析が非常に明晰にできます。是非、本記事に書いてある内容を押さえて、詳しくは紹介している教科書も読んでみましょう。

また、さらに包括的な文法の勉強法については「中国語【文法】の超体系的な学び方を解説」を参照してみてください。

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冨江コーチ

東京都出身。早稲田大学国際教養学部卒業。中国ビジネス10年(日本のゲーム、アニメ等コンテンツの中国展開に従事)、中国在住5年(上海、南京)の経験を活かし、実践的な中国語学習のサポートをいたします。2016年から語学の道に転身。大学院で第二言語習得、言語、哲学の研究を行いながら、中国語と日本語を教える。趣味は、中国各地の麺類を食べ歩くこと。新HSK6級。復旦大学短期留学(2007年)。The Australian National University修士号、早稲田大学国際コミュニケーション研究科修士課程修了。

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