【中国十大麺】で楽しく学ぶ!中国語とご当地麺&地域文化を一挙紹介

中国文化・社会・歴史語法・表現・フレーズ

こんにちは!SENです。

今日は中国の麺料理について紹介したいと思います。

🍜中国十大麺🍜

中国全土には2,000種以上の麺料理が存在し、「十大麺料理(十大面条 shí dà miàn tiáo)」はその中でも特に文化的価値や人気を持つ料理です。ちなみに「十大麺」には色々と諸説がありますが、今回は中国商務部と中国飯店協会等が主催した「ヌードルフェスティバル(中国面条文化節)」(2013)にて選出された十大麺をご紹介したいと思います。(百度百科に簡単な紹介動画がありました。)

本記事では、それぞれの麺料理の特徴や地域性に加え、文化的・歴史的背景や現地での食べられ方なども織り交ぜながら紹介します。中には日本にいながら本場の味を味わえることのできるものもありますので、是非参考にしてみてください!

まず麺は面条(miàn tiáo)、スープは汤(tāng)といいます。
ちなみに中国で最も麺を食べる地域は山西省です。“麺の都”や“麺の故郷”と呼ばれるほどでその数は山西省だけで400種類以上に及ぶとか。

続いて十大麺を一つずつ紹介します。

⑴热干面(Rè gàn miàn)|湖北省・武漢市

(画像:百度百科より)
まず湖北省武漢の热干面(熱乾麺)。

  • 特徴:茹でた麺(汁なし)を調味料で和えて食べる武漢のポピュラーな朝ごはん。
  • 地域:湖北省・武汉(Hú běi shěng ・wǔ hàn)
  • 分類:武汉特色小吃(Wǔ hàn tè sè xiǎo chī)…武漢で著名な庶民料理
  • 文化背景:猛暑で知られる武漢では、食料の保存方法はひとつの課題で、清の時代に麺の中に塩を入れて変質を防止した”切面” [qiē miàn]が基になったという説アリ(参考URL:热干面(武汉最具代表性的小吃之一)_百度百科)
  • 味:ごまのコクと唐辛子の香り。

青と赤の唐辛子が見るからに辛そうですね!調べたところ東京・銀座の「珞珈壹号」というレストランで提供しているようです。

関連単語:芝麻酱(zhīmajiàng=ゴマダレ)、香油(xiāngyóu)、早餐(zǎocān=朝食)

⑵ 兰州拉面(Lánzhōu lāmiàn)|甘肃省・蘭州市

(画像:百度百科より)
続いて兰州拉面(蘭州ラーメン)。
トップ画像にも設定しましたが蘭州ラーメンは中国王道麺と呼ばれるほど人気です。
その味は見た目の色から“一清二白三紅四緑五黄”と表現されます。

〇一清(yī qīng)     :スープが澄んだ清湯
〇二白(èr bái)    :大根
〇三紅(sān hóng)   :ラー油
〇四緑(sì lǜ)            :麺に乗せるパクチー
〇五黄(wǔ huáng):麺の黄色

  • 特徴:手延べのコシのある細麺、澄んだテールスープにパクチー(香菜 xiāng cài)・辣油を添える。
  • 地域:甘肃省・蘭州(Gānsù shěng Lánzhōu)。
  • 文化背景:イスラム教徒(回族 huí zú)が多く住む地域で、ハラル料理として世界中のムスリムにも親しまれる。中国国内ではハラルを意味する「清真(qīngzhēn)」の看板が目印。
  • 味:さっぱりとしたスープに香味野菜と唐辛子のアクセント。

最近は上野や池袋、西川口など首都圏でも食べれるお店が増えてきました。
スッキリとしたスープはラー油で味変すると最後まで飽きることなく食べられます。

関連単語:牛肉(niúròu)、香菜(xiāngcài=パクチー)、辣椒油(làjiāoyóu=ラー油)、清真(qīngzhēn=ハラル)

⑶北京炸酱面(Běijīng zhàjiàngmiàn)|北京市

(画像:百度百科より)
北京炸酱面(北京ジャージャー麺)は中国著名民俗学者 王永斌の『雑談老北京』(1999年 中国城市出版社)の記述によれば清朝より食べられていた歴史ある逸品。
ちなみに“老北京(オールド北京)”というのは昔ながらの北京という意味で、両親や祖父母の時代から北京に住んでいた場合は「老北京人」と自称したりする場合があります。北京炸酱面も「老北京炸酱面」と記載される場合もあります。

  • 特徴:甘辛い黄豆味噌で炒めた肉味噌を太麺に絡める家庭料理。
  • 地域:北京市(Běi jīng shì)
  • 分類:北京菜(běi jīng cài)…北京料理
  • 文化背景:北京の庶民の味として根強い人気。「四合院」(北京の伝統家屋)の中庭などで家族そろって食べることが多かったと言われます。
  • 味:味噌のコクと野菜のさっぱり感。

関連単語:炸酱(zhàjiàng=油で炒めたみそ)、黄瓜(huángguā=キュウリ)、面条(miàntiáo)

⑷ 河南烩面(Hénán huìmiàn)|河南省

(画像:百度百科より)

河南省の伝統料理ホイ麺(烩面)。これは筆者は初めて知りました。

  • 特徴:煮込み系麺。厚く柔らかい麺に濃いスープと具材を合わせた、河南省の三大B級グルメの一つ。
  • ラム肉を入れた羊肉烩面(yáng ròu huì miàn)が王道。
  • 地域:中原(zhōng yuán)/河南省(hé nán shěng )
    ※中原(チュウゲン)という表現ですが、一般的には中国で文明の興った黄河中流域の平原地帯を指します。(現在の河南省・山東省・山西省の大部分と、河北省・陝西省の一部。)
  • 分類:豫菜(yù cài)…河南料理の意
  • 文化背景:烩(huì)は複数の食材を合わせて煮込むという意味を持ちます。
  • 味:こってりとした豚骨ベースが多め

    関連単語:烩(huì=煮込む)、高汤(gāotāng=(豚・アヒルなどの)だしスープ)、养生(yǎngshēng=健康を養う)

⑸杭州片儿川(Háng zhōu piàn ér chuān)|浙江省・杭州市

(画像:百度百科より)
続いては浙江省の麺が登場。

  • 特徴 あっさり系。高菜・笋(たけのこ)・豚肉の細切りなどが入った清湯(澄んだスープ)に、滑らかな中細麺を合わせる。家庭的で上品な味わいが特徴。
  • 地域: 浙江省・杭州(Zhè jiāng shěng・ Háng zhōu)
  • 分類: 浙菜(zhè cài)…浙江料理の意
  • 文化背景 民国時代初期、杭州の老舗麺館「奎元館(kuí yuán guǎn)」にて誕生。地元の食材を活かした「簡単で旨い」料理として人気を博し、現在もその名店で提供。
    詩人・蘇東坡も愛したとされる杭州は、雅やかで繊細な食文化の地。片儿川は地元の家庭で広く親しまれる庶民派の逸品。
  • 味: あっさりとした高汤(gāo tāng/澄んだスープ)ベース。素材の旨味を活かした優しい味わい。

関連単語:清汤(qīng tāng)、竹笋(zhú sǔn=筍)、雪菜(xuě cài=高菜)

⑹奥灶面(Ào Zào Miàn)|江蘇省・昆山市

(画像:百度百科より)
江蘇省の麺が再び登場。
奥灶面(アオザオ麺)は、中国江蘇省の昆山市(こんざんし)で生まれた伝統的な麺料理。100年以上の歴史があり、深いコクのあるスープと、しっかりとしたコシのある細麺が特徴。

最大の特徴は「五热一体,小料冲汤(wǔ rè yī tǐ, xiǎoliào chōng tāng)」という調理法。
五热(wǔ rè)とは以下の5つがすべて熱々であることを意味する:

〇碗热(wǎn rè):器(どんぶり)が熱い
〇汤热(tāng rè):スープが熱い
〇油热(yóu rè):ネギ油などの香味油が熱い
〇面热(miàn rè):麺が熱々(茹でたて)
〇浇头热(jiāotóu rè):トッピング(爆魚など)も熱い

この五つの「熱 rè」を一体化させることで、風味がしっかり立ち上がるのです。
また、小料冲汤(xiǎoliào chōng tāng)とは、一杯一杯、注文ごとにスープと調味料を合わせ、できたての状態で提供するという意味です。これにより、風味や香りがしっかり活きてきます。

  • 特徴:コシのある手打ち中細麺、ネギ油香る醤油スープ、爆魚(白身魚の素揚げ)などの魚系トッピング。五熱一体で仕上げることで、香りと味のバランスが際立ちます。
  • 地域:江蘇省・昆山(jiāng sū shěng kūn shān)
  • 分類:苏菜(sū cài)…江蘇料理の意
  • 文化背景:「奥灶」は、かつて軍隊(政府)の炊事場として始まった場所の名で、そこから発展した麺料理が地元の家庭や食堂に広がり、現在では昆山の名物グルメとなっています。
  • 味:香ばしいネギ油と醤油スープの濃厚な味わい。

関連単語:爆魚(bàoyú=魚のフライ)、葱油(cōngyóu=ねぎ油)、浇头(jiāotóu=主食の上に沿える副菜)、冲汤(chōng tāng=スープを注ぐ)

⑺锅盖面(guō gài miàn)|江蘇省・鎮江市

(画像:百度百科より)
鍋蓋面(グオガイメン)は中国江蘇省鎮市発祥のご当地麺で、その名の通り、鍋の蓋(锅盖:guōgài)が関係しています。
伝説では、麺を茹でるときに鍋の蓋が落ちたことでお湯の対流が良くなり、麺のコシが増したとされ、それが名前の由来となっているようです。現在は蓋を入れて麺を茹でたりはしないようですが…

  • 特徴:鍋蓋麺の麺は、竹竿で生地を跳ねて伸ばす「跳面(tiào miàn)」という伝統的な手法で作られます。この方法で作られた麺は「小刀麺(xiǎo dāo miàn)」と呼ばれ、幅によって以下のように分類されます。
    ———
    ■細麺(细面):最も細いタイプ
    ■中幅麺(中宽):最も一般的で、標準的な幅
    ■幅広麺(宽面、大宽):より太いタイプ
    ———
  • 地域:江蘇省・鎮江(jiāngsū shěng zhènjiāng )分類:汁なし麺(またはスープ麺)
  • 文化背景:黒酢(香醋:xiāngcù)の産地である鎮江では、昔から労働者たちに親しまれてきたボリュームたっぷりの庶民派麺。香味油や肉そぼろとの相性も抜群で、家庭でも簡単に作ることができる。
  • 味:甘辛く濃厚なタレに唐辛子やネギの風味が効いていて、一口ごとにパンチのある味わい。好みに応じて黒酢やラー油を加えて味変して食べるのがオススメ。

関連単語:锅盖(guōgài)、香醋(xiāngcù)、跳面(tiào miàn)、辣椒(làjiāo)

⑻ 延吉冷面(Yánjí lěngmiàn)|吉林省・延吉市


(画像:百度百科より)

続いて紹介するのは中国少数民族の一つ「朝鲜族(cháo xiān zú=朝鮮族)」の冷麺。

  • 特徴:冷たいスープに細麺、キムチや牛肉スライスなどを添えて食べる。
  • 地域:吉林省・延吉(Jílín shěng・yán jí)
    ※延吉市は中国朝鮮族自治州に属し、朝鮮族の文化が色濃く残る地域。
  • 分類:东北菜(dōng běi cài)、朝鲜族菜(cháo xiān zú cài)…東北料理、朝鮮族料理の意
  • 文化背景:延吉冷面は中国東北地方に暮らす朝鮮族の伝統料理。
  • 味:酸味とピリ辛があり、食欲がない日にも最適。

朝鮮半島の冷麺文化がルーツでありながら、中国の気候や味覚に合うよう独自に発展したそうです。特に吉林省延辺朝鮮族自治州では、家庭料理やレストランで広く親しまれています。冷たいスープとしっかりとした麺の食感、そして甘酸っぱいキムチとの組み合わせが特徴。かつては旧暦のお正月や夏のごちそうだったが、今では一年中楽しめるようになりました。

関連単語:冷面(lěngmiàn)、辣白菜(làbáicài=キムチ)、民族(mínzú=民族)

⑼ 山西刀削面(Shānxī dāoxiāomiàn)|山西省

(画像:百度百科より)

  • 特徴:生地を刃物で鍋に削り落とす豪快な調理法。独特の厚みと食感。
  • 地域:山西省(Shānxī shěng)
  • 文化背景:山西省は「面食の故郷」とも呼ばれ、粉食文化が非常に発達している。
    元代、モンゴル族の統治者は漢民族の反乱を恐れて金属製の武器を取り上げた際に、各家庭の包丁まで没収した。その際に調理上の不都合から、薄い鉄片を用いて削った麺を作ったことが発祥といわれる(諸説あり)。
  • 味:もちもち食感。醤油系のタレやスープと相性抜群。

関連単語:刀削(dāoxiāo)、筋道(jīndào=コシ)、家常(jiācháng=家庭風)

⑽ 四川担担面(Sìchuān dāndānmiàn)|四川省・重慶市

(画像:百度百科より)

四川省の担々麺はご存じの方も多いのではないでしょうか。
筆者は一度現地で食べたことがありますが、一緒に行った友人にコツは息を止めて麺をすすることと教えてもらった記憶があります(笑)

  • 特徴:細麺にピリ辛の肉味噌と花椒のしびれ。濃厚なタレが特徴。
  • 地域:四川省・重慶(Sìchuān shěng・Zhòngqìng )
  • 分類:川菜(chuān cài)…四川料理の意
  • 文化背景:もともとは肩に担いで売り歩く屋台(担子dān zǐ)が由来で、「担担」という名前がついた。庶民的な味。
  • 味:麻辣(málà)=しびれと辛さのバランス。

関連単語:花椒(huājiāo)、麻辣(málà)、小吃(xiǎochī=軽食)

さて、中国十大麺を紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
刀削麺や蘭州ラーメン、多くを日本で味わえるようになりましたが、鍋盖麺など現地でしか味わえない物もまだまだありますね!
現地に滞在している方は是非探してトライしてみて下さい🐼

 

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SEN

長野県出身。中華系広告会社勤務の懐かしきゆとり世代。中学生の時に姉妹都市交流で浙江省を訪れたことをきっかけに中国に興味を持つように。大学時代に一年間北京師範大学に交換留学するも、習得レベルに満足できず、帰国後大学院進学を決意。大学院では中国人留学生らと交流を持ちながら、中国の歴史社会学を研究。北京の大学に日本語講師として一年間勤務経験あり。好きな俳優は陳柏霖(チェン・ボーリン)

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